上位対決はドロー
アーセナルは4試合連続クリーンシート(無失点)まであと1歩のところまでいきながら、数的不利の状況を凌ぎ切れずに失点を喫した。連勝は3でストップし、上位との差は再び広がっている。
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UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を確実にしたい3位のレスターと、CLへの望みをつなげるためにも上位陣を撃破したいアーセナルの一戦は、ほぼ互角と言っていい始まりだった。アーセナルはレスターのプレッシングに苦労した部分もあったが、カウンターからチャンスもいくつか作っている。
先制点は21分に生まれた。ダニ・セバジョスが自陣中央から出したスルーパスを、DFラインの裏を取ったブカヨ・サカが受ける。マッチアップしたジョニー・エバンスがスリッピーな芝に足を取られる隙に出したラストパスを、ピエール=エメリク・オーバメヤンがゴールに流し込んだ。
試合終盤までは内容でもスコアでも、アーセナルはレスターをわずかに上回っていた。しかし、一つのプレーが試合の流れを大きく変えてしまう。
アレクサンドル・ラカゼットに代わって投入されたエディー・ヌケティアは、ファーストプレーでジェームズ・ジャスティンの膝を蹴ってしまった。OFR(オン・フィールド・レビュー)の結果、ヌケティアは退場に。アディショナルタイムを含めた残り20分以上をアーセナルは10人で戦わなければいけなくなった。
5-3-1の形で守り切ろうとしたアーセナルを、1人多くなったレスターは敵陣に押し込んだ。途中出場のデマレイ・グレイがゴール前に入れたボールを、ジェームズ・ヴァーディーが決めて同点。上位対決は1-1の痛み分けとなった。
セバジョスの輝き
ヌケティアの退場さえなければ、アーセナルは勝利に値する戦いを見せている。その中でもセバジョスは輝きを見せていた。ここ4試合負けていないチームの中で、攻守に渡る存在感は際立っている。
今季、レアル・マドリードから期限付きでアーセナルに加入したセバジョスは、開幕から中盤のポジションで起用されていた。シーズン中盤は怪我もあり、リーグ再開初戦はベンチスタートとなったが、以降はすべてのリーグ戦で先発起用されている。
直近の4試合で採用されている3-4-2-1の布陣で、セバジョスはグラニト・ジャカと中盤のセンターに並んでいる。豊富な運動量と攻守両面での貢献を必要とされるポジションだが、レスター戦ではチームトップの68回のボールタッチと44本のパス成功数をマークし、11回のボール回収を記録。先制点につながるスルーパスは針の穴を通す精度の高さだった。
狭いエリアでもボールを失わないキープ力と、相手のプレッシャーを剥がす能力に優れている。チーム随一の運動量を誇り、類い稀なるパスセンスでチャンスメイクを担うことができる。6月末で切れる予定だった契約期間を今季終了まで伸ばしているが、「またしても素晴らしかった」と称賛した指揮官は来季の残留を熱望している。
ラカゼットとの連係
アーセナルの攻撃は1トップの動きがスイッチになっている。併用されているラカゼットとヌケティアに与えられている役割はほぼ同じ。相手の最終ラインから落ちてきてボールを呼び込む。DFがついてくれば空いたスペースをシャドーが突き、DFがついてこなければボールを受けた1トップが前を向いてチャンスへとつなげる。
この日のラカゼットもこの動きを繰り返していた。2本のシュートは相手GKのセーブに阻まれ、68分のシュートはオフサイドの判定に泣いたが、たとえゴールを決めていなくとも、ラカゼットの貢献度は高い。降りてくる1トップといい距離感でプレーできているのも、セバジョスの活躍につながっている。
負傷したベルント・レノに代わってゴールマウスを守るエミリアーノ・マルティネスはこの日も好セーブを連発した。3バックの一角でプレーするセアド・コラシナツやスコドラン・ムスタフィも不器用ながら身体を張って相手のチャンスの芽を封じている。
キーラン・ティアニーは鋭い出足でインターセプトを決め、エクトル・ベジェリンはDFラインの裏を取ってチャンスを生み出す。ゴールを決めたオーバメヤンやアシストしたサカはもちろんだが、起用された選手たちがハードワークし、アルテタ監督が求めるタスクを遂行していることが、最近の好調の要因となっている。
アーセナルは次節にトッテナムとのノースロンドンダービーを控え、王者リバプールとの対戦も残している。ただ、攻守の連動を見せている今のアーセナルであれば、残り4試合に全勝することも不可能ではないのではないだろうか。勝ち点を取りこぼしたレスター戦だったが、望みを感じさせる試合内容だった。
(文:加藤健一)
【了】