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アーセナル、アルテタの的確すぎる采配。270分間無失点で3連勝、難敵ウルブスを退けた堅守の理由

プレミアリーグ第33節、ウォルバーハンプトン対アーセナルが現地時間4日に行われ、0-2でアーセナルが勝利を収めた。欧州への切符を賭けた直接対決となったこのゲームは、ウルブスが主導権を握る時間が長かったが、先制に成功したアーセナルが逃げ切っている。アーセナルは3試合連続無失点で3連勝。堅守と勝負強さを見せる理由を掘り下げたい。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

難敵ウルブスを撃破

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【写真:Getty Images】

 今からちょうど2週間前、アーセナルが欧州への切符を掴むことは絶望的な状況だった。リーグ戦再開初戦のマンチェスター・シティ戦を0-3で落とし、ブライトンにも競り負けた。

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 しかし、この2週間で状況は一変した。脆かった守備陣を最後方から懸命に支えてきたベルント・レノをブライトン戦の負傷で欠いているにもかかわらず、FAカップを挟んで公式戦4連勝をマーク。順位が上にいる相手からアウェイで勝利を収めたのはおよそ5年ぶりで、欧州への切符を再び視界に捉えている。

 前半に試合のペースを掴んだのはウルブスだった。ボールを保持する時間は相手より短かったが、2トップのラウール・ヒメネスのポストプレー、アマダ・トラオレのキープから2列目の選手が絡んでフィニッシュへとつなげた。

 アーセナルはアタッキングサードにボールを運ぶことに苦労していたが、3本目のシュートが先制点になった。この試合で移籍後初先発を飾ったセドリク・ソアレスからピエール=エメリク・オーバメヤンがバイタルエリアでボールを受けて逆サイドに展開する。左サイドを駆け上がったキーラン・ティアニーがダイレクトで折り返すと、相手に当たってコースが変わったボールをブカヨ・サカがボレーで合わせてゴールネットを揺らした。ウルブスはゴール前の人数が揃っていたが、5-3-2で薄くなったDFラインの前にクロスが入ってしまった。

 後半はビハインドしているウルブスがボールを握る時間が増えたが、なかなかチャンスにつなげられず。ジョー・ウィロックのクロスからからアレクサンドル・ラカゼットにシュートを決められ、点差を広げられた。途中出場の2人にとどめを刺され、9試合ぶりに敗れた。

堅守を誇るアーセナル

 アーセナルはこれで3連勝。3試合ともに複数得点を挙げ、4試合連続無失点中と堅守を誇るウルブスから2得点を挙げている。しかし、注目すべきは攻撃陣よりも、3試合連続でクリーンシート(無失点)を達成しているディフェンスになるだろう。

 リーグ戦再開後に連敗を喫したアーセナルは4バックから3バックに変更している。センターバックを増枠することでダビド・ルイスらのスピード不足が補われ、カウンターを受けたときの対応も改善している。ウイングバックと中盤もより高い位置でプレーできるようになり、この試合の終盤でも高い位置でボールを奪うシーンが多かった。

「守備を改善すればするほど、そしてそれが強固になればなるほど、勝つチャンスは増える。攻撃のパターンや相手の出方を読んだり、スペースを使ったりすることはまだ改善の余地があるが、それはこれから」

 ウルブス戦後のミケル・アルテタ監督が残した言葉からも、チームにおける守備の重要性はうかがえる。確かに、ウルブスのような相手になるとビルドアップでの拙さが見られるが、守備では安定感を見せていた。もともと強力なアタッカー陣を擁しているだけに、ディフェンスの改善はアーセナルの大きな援護になるだろう。

見事だったアルテタの采配

 もうひとつ、この試合でアーセナルの勝利を引き寄せたのは、試合中の指揮官の采配だった。交代策で打開を図ろうとするヌーノ・エスピリト・サント監督に対して、アルテタ監督も素早い対応で乗り切っている。

 ウルブスは55分にディオゴ・ジョッタを入れて、3-1-4-2から3-4-2-1へと布陣を変えている。爆発的なスピードとキープ力を誇るトラオレが2トップからシャドーに回ったのを見るや否や、アルテタは左ウイングバックにエインシュリー・メイトランド=ナイルズを入れてマッチアップさせた。

 71分には右ウイングバックのマット・ドハーティに代えてペドロ・ネトを入れ、トラオレを右ウイングバックに下げている。前掛かりになるウルブスに対して、アーセナルはエクトル・ベジェリンとジョー・ウィロックを投入。さらにはダニ・セバジョスに代えてケガから戻ってきたルーカス・トレイラを入れた。

 アーセナルが放った8本のシュートのうち、5本はベジェリンとウィロックを入れた後の約15分に生まれている。中盤にフレッシュで守備に貢献できる選手を入れたことで、それ以降は相手に1本もシュートを許さなかった。一方でショートカウンターから次々とチャンスを作り、86分に追加点を奪った。相手の出方を見極めて対応する、監督1年目とは思えない見事な采配だった。

「現時点で相手を95分間(試合を通じて)圧倒する力はない。それができないならば、激しく競り合ってチームとして戦わなければいけない。それには、先発した11人と交代でプレーする全員がチームに変化をもたらさなれければいけない」。試合後に指揮官が残したコメントが、この試合のポイントを物語っている。先発した11人と交代で出た5人が与えられた役割を全うしてつかんだ勝利だった。

 アーセナルは中2日でレスター戦を戦い、その後はトッテナムとリバプールとの試合が続く。しかし、これを乗り越えることができれば、上位に食い込む可能性はつながれる。そのカギとなるのはこの試合のように、ディフェンスの安定感と鋭くも的確な指揮官の采配になるだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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