消化試合となった頂上決戦
前節でマンチェスター・シティがチェルシーに敗れ、リバプールの30年ぶりとなるリーグ優勝が決まった。ピッチ入場の際に相手選手たちが花道を作って優勝チームを出迎えるガード・オブ・オナーは、運命のいたずらか、皮肉にもシティの選手がエティハド・スタジアムで行うことになった。
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リバプールは前節から中7日が空いたこともあり、シティ戦にはベストメンバーを送り込んでいる。コンディション的には万全だったが、試合へのモチベーションという意味ではシティと開きがあったと言わざるを得ない。
国内のカップ戦はともに敗退しており、8月に行われる予定のUEFAチャンピオンズリーグもラウンド16でアトレティコ・マドリードに敗れた。最多勝ち点などのプレミアリーグ記録達成や個人タイトルの可能性は残されているものの、消化試合に変わりはない。
勝敗の行方は、決定機のクオリティによって決した。リバプールはサラーがチャンスを決めきれなかったのに対し、シティは決定機を逃さなかった。とりわけ、トップ下に入ったデブルイネのプレーは圧巻で、5つのラストパスを供給してシティの攻撃を司った。
精彩を欠いたリバプール
シティは24分、スローインをボックス内で受けたラヒーム・スターリングがジョー・ゴメスに倒されてPKを獲得。ケビン・デブルイネがこれを決め、シティが先制に成功した。
2点目は相手のパスをバンジャマン・メンディが自陣でカットしたところからカウンターを開始し、最後はスターリングが決めた。45分にはデブルイネとのワンツーで抜け出したフィル・フォデンが右足でゴールを決めて3-0。頂上決戦は前半で勝敗の興味を失う展開となった。
とはいえ、リバプールの攻撃が悪いわけではなかった。立ち上がりからシティのボールホルダーに襲い掛かり、ボールを奪い切れば素早く敵陣に攻め入った。4分にはフィルジル・ファン・ダイクのフィードにモハメド・サラーが反応して胸トラップから左足を振り抜いたが、GKエデルソンがセーブ。19分にはロベルト・フィルミーノのスルーパスを受けたサラーがカットインから左足のシュートを放ったが、ボールはポストに阻まれた。
先制点はスローインでゴメスの対応が後手に回ってPKを与え、2点目と4点目は敵陣でボールを失ったところから失点した。失点にはつながらなかったが、トレント・アレクサンダー=アーノルドのスローインがスターリングに渡ってしまうシーンもあった。ボール保持率もタックルの数もリバプールが上回ったが、精彩を欠いたプレーがことごとく失点につながっている。
この試合が持つ意味
シティに大敗したことが、リバプールの今後になにかしらの影響をもたらすことはない。来季は来季で横一線からのスタートが始まる。ユルゲン・クロップは「次のシーズンのことは次のシーズンに考える」と言っている。クリスタル・パレス戦でジョルジニオ・ワイナルドゥムを左サイドバックで起用したり、この試合でファビーニョを後半からセンターバックで起用したように、いくつかの実験をこなしながら、残りのシーズンを消化していくだろう。
シティはイルカイ・ギュンドアンをロドリの横に置く4-2-3-1の布陣が戦術的にはまった。力が拮抗する相手に対して採用することが多いが、リバプール相手でも効果をあげたことは大きな収穫だったかもしれない。4-2-2-2のコンパクトなブロックでボールを奪い、前線の4人でカウンターを仕掛けた。カウンターから奪った2点は狙い通りの形だっただろう。
ただ、シティも3位との差を11ポイントつけており、2位はほぼ確実となっている。8月にはCLを控えているので、ここまでは選手のコンディションを優先した起用が続いている。復帰したエリック・ガルシアやフィル・フォデンの活躍はチームに厚みをもたらすグッドニュースとなるが、リバプール同様にこの大勝が大きな意味を持つわけではない。
シティがチェルシーに勝っていれば、もう少しエキサイティングな展開になっていたかもしれない……。そう思わずにはいられないほど、もどかしく、またもったいない試合だった。
(文:加藤健一)
【了】