主力大量放出で戦力アップならず
現役時代にバルセロナなどでプレーしたルイス・カレーラス・フェレールを新監督に迎え、新たなスタートを切った昨季のサガン鳥栖。しかし、結果的に同指揮官の招聘は失敗に終わった。開幕から10試合でわずか1勝しか挙げられず、得点数も同10試合でたったの「1」。結果的にカレーラス監督は、シーズン開幕から約3ヶ月での退任を余儀なくされている。
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その後、金明輝新監督の下で再出発を図った鳥栖だったが、下位から抜け出せない状況は続いていた。最終的に15位フィニッシュで残留は果たせたものの、最終節で他会場の湘南ベルマーレが松本山雅FCに勝っていれば、入れ替え戦の出場圏となる16位転落が確定していた。まさにギリギリでのJ1残留であったと言えるだろう。
と、2019シーズンは鳥栖にとって厳しいものとなったが、苦難はオフシーズンにも訪れる。同クラブのユニフォームスポンサーを8年間務めていた「DHC」が撤退。今月3日には「佐賀新聞社」が“当面の間”、胸スポンサーを務めることがクラブ公式サイトより発表されているが、サポーターに大きな不安が募ったのは間違いないだろう。
そして、今冬には何名かの主力選手がクラブを去った。中でも大きな痛手となりそうなのは、やはりFW小野裕二とMFイサック・クエンカの退団だろう。両者ともに、鳥栖の攻撃面において欠かせない存在であったことは紛れもない事実だ。とくにクエンカは昨季、FW金崎夢生に次いでチーム内2位の得点を挙げていた存在。このような選手の退団は、今季に向けて影響がないとは言い切れないだろう。
さらにはDF高橋祐治やMF福田晃斗といった選手も新天地を求めた。彼らも鳥栖には必要不可欠な存在であり、移籍決定時にショックを受けたサポーターも多かったのではないだろうか。
一方で他クラブから9名の新加入選手を加えるなど、補強には積極的であった。しかし、戦力アップに繋がるかと言えば、微妙なところだ。
攻撃面で即戦力となりそうなのは、京都サンガF.C.からやって来たMF小屋松知哉、ベガルタ仙台からやって来たMF梁勇基だろうか。ただ、小屋松はスピードこそ魅力的だが、得点力という意味では少し物足りない。梁も昨季リーグ戦13試合出場に留まっており、38歳という年齢を考えてもシーズン通して活躍できるか微妙なところだ。
プラサ・コロニアからやってきたFWレンゾ・ロペスは、2018年に京都で11得点を叩き出した選手だが、J1で通用するかどうかは疑問。完全移籍での“再加入”となったFWチアゴ・アウベスも、怪我が多くシーズンフル稼働できるかどうか。MF湯澤洋介はドリブラーだが、J1での実績がなく、トップカテゴリーでどこまで通用するかは未知数。即戦力として数えるのは難しそうだ。
今季は4-3-3がベースとなることが濃厚で、昨季よりもスタイルは攻撃的にはなるだろう。しかし、昨季のチーム内得点王が金崎の7点。それを上回りそうな人材がいないのは事実だ。今季も得点力不足といった課題は残されるかもしれない。
守備陣にはDFエドゥアルド、DF内田裕斗、DF宮大樹、DF王嘉楠などが加わったが、“絶対的”と呼べる存在がいないのが事実。GK守田達弥もGK高丘陽平の牙城を崩せるかどうか微妙なところだ。守備力も昨季よりアップしたとは言い難い。
ただ、MF松岡大起をはじめ、若手選手が多く在籍しており、試合を重ねていく上での成長は楽しみなところだ。若武者が力を発揮できれば、ストロングポイントは増えるだろう。しかし、世代交代を進め不振に陥るチームも決して少なくない。昨季以上の苦戦も、覚悟しておかなければならないだろう。