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久保建英、4得点生んだプレーの変化とは? メッシというよりダビド・シルバ…蘇らせたマジョルカの攻撃

リーガエスパニョーラ第33節、マジョルカ対セルタが現地時間6月30日に行われ、5-1でマジョルカが快勝した。先発出場した久保建英は2アシストを含む4得点に絡む活躍で、リーグ戦再開後初勝利に大きく貢献した。これまでも存在感を示しながら得点につなげることができなかった久保だが、この試合ではこれまでとは違うプレーを見せている。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

久保建英は4得点に絡む活躍

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【写真:Getty Images】

 残留を争う17位と18位の直接対決だったが、試合前の時点で6試合を残して両者の勝ち点差は8ポイント。セルタはリーグ戦再開後3失点と堅守を見せ、2失点を喫したバルセロナ戦では2度のリードを追いついて勝ち点1を掴んでいる。対するマジョルカは1分4敗と未勝利で、セルタが有利という見方が強かった。この試合にセルタが勝てば勝ち点差は11ポイントに広がり、直接対決でも負け越すマジョルカの望みはかなり薄くなるという状況だった。

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 試合開始の18時半でも気温は29度もあり、スペインのマジョルカはまだ日が高かった。両チームともに18日間で6試合目という過密日程の中で、残留を賭けた直接対決は行われた。

 結果は戦前の見立てを大きく覆し、5-1でマジョルカが快勝している。右サイドハーフで先発した久保建英はクチョ・エルナンデスにラストパスを送って2点目をお膳立てすると、40分にはアレハンドロ・ポソのゴールをアシスト。後半にもアンテ・ブディミルのゴールの起点となり、見事なミドルシュートを決めたサルバ・セビージャをアシストした。ゴールこそなかったものの、久保は4得点に絡む大車輪の活躍だった。

効果的だったマジョルカの修正

 セルタからしてみれば、最初の失点シーンは納得がいかなかったかもしれない。フィリップ・ブラダリッチのパスが短くなったところで、インターセプトを狙ったダニ・ロドリゲスをサンティ・ミナが倒してしまい、PKを献上した。リプレイを見る限りはロドリゲスのシミュレーションにも見えたが、オン・フィールド・レビュー(OFR)でも判定は覆らず。ブディミルがGKの逆を突いてPKを成功させ、マジョルカは13分に先制に成功した。

 前半はセルタにもチャンスがあった。中盤が降りてマジョルカの中盤を引きつけ、空いたスペースをアタッカー陣が突いたが、GKマノロ・レイナの再三にわたる好セーブで決定機は阻まれた。27分には左サイドに流れていた久保からパスを受けたクチョにゴールを決められて、セルタはビハインドを2点に広げられている。

 マジョルカはクーリングブレイクでディフェンスの修正を行っている。2トップの一角でプレーしていたクチョを左サイドに回し、ロドリゲスをトップ下に配置。下がってボールを受けるセルタの中盤に対してロドリゲスがアプローチできるようになり、イドリス・ババやセビージャがDFラインの前を空けてしまわないようにした。

 リードしたマジョルカはこれを境に試合のペースを掴んだ。久保のアシストからポソが左足でシュートを決めて前半を3-0で折り返す。後半早々にポソがPKを献上して1点を返されたが、直後に再び3点差とした。60分には久保のパスからセビージャの見事なミドルシュートが決まり、試合を終わらせることに成功している。

変化した久保のプレー

 マジョルカはボール支配率が39.6%、シュート本数も相手を3本下回る9本と、決してチャンスを多く作ったわけではなかったが、効果的に得点を重ねた。

 久保に対する相手のマークは、リーグ戦再開後は特に顕著になっている。右サイドでボールを持てば必ずダブルチームでアプローチしてくる。バルセロナ戦のようにフィニッシュに持ち込めた試合もあったが、ビジャレアル戦やアスレティック・ビルバオ戦のように存在感を消された試合もあった。

 対して、この試合ではここ数試合とは違ったプレーが印象的だった。久保にボールが集まるのはこれまでと変わらなかったが、プレーはよりシンプルで、味方を活かす選択が多かった。81分のFKを除けば、久保が放ったシュートは1本のみ。カウンターで味方が少なかった場面で、カットインからのシュートを選択している。

 リオネル・メッシというよりはダビド・シルバのようなプレーで、マジョルカの攻撃を蘇らせた。もともと強引にシュートに持ち込むよりは、連携でこそ良さが生きる。ここのところは周囲のサポートが薄く、自らドリブルで突破したりシュートに持ち込んだりする場面が多かったが、この日は味方のスペースで受ける意識が強かった。選択肢が与えられれば久保は適切なプレーを選択できる。久保の才能が存分に生かされた試合だった。

 マジョルカではこれまで、セビージャに攻撃の組み立てが一任されており、彼が不在の際は機能不全に陥ることが多かった。この試合のように久保が出し手に回ることができれば、セビージャの負担も減り、さらにチャンスメイクの質も上げることができる。「供給役としての久保建英」が残留を目指すマジョルカの攻撃のカギを握るのではないだろうか。

 5試合を残して17位との勝ち点差は5ポイントと厳しい状況は続く。しかし、攻撃陣が機能すれば残留が不可能なミッションではないことは、この試合で証明されている。

(文:加藤健一)

【了】

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