マンチェスター・シティのDNAにも符合するもの
ビルドアップの工夫はグアルディオラの率いた3つのクラブでほぼ共通している。ポゼッションとハイプレスの組み合わせも同じ。オランダ由来のトータルフットボールをプレミアリーグで最も高い次元で消化しているのは間違いなくシティである。グアルディオラを招聘した以上、それは必然でもあるわけだが、シティというクラブがもともと持っていたDNAとも符号するところはあったのではないか。
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1950年代に「レヴィー・プラン」を試みた先進性、冷静で理詰めのアプローチはイングランドの他のクラブとは一線を画していた。長年、ユナイテッドの陰に置かれたシニカルな心情は、独裁政権に冷遇されたバルセロナに重なる部分もあるかもしれない。トータルフットボールの聖火を受け取る土壌はあったように思う。
リヴァプールの歌として「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」は、あまりにも有名だが、シティの場合は「ブルー・ムーン」がそれにあたる。実は作曲者が同じだ。コンポーザーはリチャード・ロジャース。ブルー・ムーンは1934年、”ユルネヴァ”は1945年の作品である。どちらも寂しくて優しく、孤独だけれども一筋の光は見えている、そんな曲調だ。
これからも歌い継がれていくだろう。寂しくて優しい歌を歌うたびに、忘れてはいけない大事なことを思いだすかもしれない。
2019/20シーズン、シティはファイナンシャル・フェアプレー違反により、UEFAの大会から締め出される可能性が出てきている。もしそうなれば、何人かの大物選手はチームから出ていくだろうともいわれている。シティはスポーツ仲裁裁判所に訴えているが、最悪の場合はプレミアリーグでも4部への降格がありうるという。オイルマネーという打ち出の小槌を得たことで、経営面での詰めが甘くなってしまったのかもしれない。
中東資本はいまやヨーロッパフットボールにとってなくてはならないものになった。一方で、カタールワールドカップ招致を巡ってFIFA、UEFAの幹部が相次いで逮捕される事件も起こっていた。それなりの副作用といえる。シティは清らかな水色を取り戻せるのだろうか。
(文:西部謙司)
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