ビジャとポドルスキの穴を埋めるのは
2度の監督交代に揺れたシーズンは下位をさまよったが、6月8日に就任したトルステン・フィンク監督がチームを立て直した。終盤戦を8勝4敗でフィニッシュし、順位を8位まで上げた。元日にはクラブ初のタイトルとなる天皇杯優勝を成し遂げている。
チームトップの13得点を挙げたダビド・ビジャは引退、ルーカス・ポドルスキ、ウェリントンも退団した。初出場となるAFCチャンピオンズリーグも含め、多くの試合を戦うことになるシーズンを前に、4人の選手を獲得して期限付きで移籍させていた2人を復帰させている。
ジョアン・オマリがFC東京に移籍し、那須大亮が引退した最終ラインには若い2人を加えた。高さとスピードを兼ね備える菊池流帆は昨季、レノファ山口で35試合に出場。1年でJ2を卒業してJ1へとステップアップしている。筑波大学から加入した山川哲史は神戸の育成組織出身で、昨年はユニバーシアード日本代表を優勝に導いた即戦力ルーキーである。
最終ラインはトーマス・フェルマーレン、大崎玲央、ダンクレーが不動の存在だが、チャンピオンズリーグも戦う今季は、選手層の厚みが必要とされる。20代前半の2人にも即戦力としての働きが求められる。
酒井高徳と西大伍がプレーするウイングバックのポジションには、アビスパ福岡に半年間、期限付き移籍していた初瀬亮を復帰させた。同じ東京五輪世代の藤谷壮も控える形は、昨季のスタート時と変わらない陣容となっている。
中盤の構成も大きくは変わらず、今季も主将を務めるアンドレス・イニエスタ、セルジ・サンペール、山口蛍が主力を務めるだろう。安井拓也、郷家友太といった若手が控えているものの、新たな戦力は加わらなかった。イニエスタやサンペールは古傷を抱えているだけに、有事の備えは万全とは言えない。
前線は、世界レベルの得点能力を持つビジャと、アタッキングサードで違いを作れるポドルスキ、空中戦での圧倒的な強さで周囲を活かせるウェリントンの3人が抜けた。在籍中はフル稼働とはいかなかったビジャとポドルスキだが、前線で違いを作れる存在を失った影響は小さくない。
代役として、清水エスパルスから3季連続2ケタ得点をマークしたドウグラスを獲得した。10得点8アシストとブレイクした古橋亨梧、昨夏加入して1得点に終わった藤本憲明、ベテランの田中順也を含めて総力戦でビジャらの穴を埋めていくことになりそうだ。
代役は早速結果を残した。今季の幕開けとなった8日のFUJI XEROX SUPER CUP 2020ではイニエスタのアシストを受けて先制ゴールを奪い、その力を見せつけた。横浜F・マリノスを相手に3-3と決着がつかなかったが、PK戦の末にJ1王者に勝利を収めている。2年連続のタイトル獲得を狙うクラブは幸先の良いスタートを切った。
主力の大半がベテランの域に差し掛かっていた神戸は、那須、ビジャ、ポドルスキらと別れを告げ、若い菊池や山川らをチームに迎え入れた。さらには郷家や安井といった東京五輪世代の選手たちも控えている。彼らが主力の脇を埋める活躍を見せられるかどうかが、過密日程を戦い抜くカギになるだろう。