サウサンプトンの自滅行為
マンチェスター・シティ戦では力の差を見せつけられ0-3で完敗。続くブライトン戦では守護神ベルント・レノが負傷し、さらに後半ATに得点を許して1-2で敗れるなど、リーグ再開後のアーセナルは散々だ。けが人も多く、常に逆風が吹き続けているような状態である。
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しかし、少しだけ暗いトンネルから抜け出せるかもしれない。現地時間25日、サウサンプトンのホームに乗り込んだアーセナルは、2-0で勝利。連敗をストップし、勝ち点を「43」に伸ばした。
ブライトン戦からスタメン3人を入れ替えたアーセナルは、立ち上がりからサウサンプトンを押し込んだ。8分にはFWブカヨ・サカが左サイドを破り、最後はFWエドワード・エンケティアがゴールネットを揺らす。最終的にサカにパスが出た場面がオフサイド判定となり得点は認められなかったものの、ゲームへの入り方は良かった。
そして20分、エンケティアが積極的なプレスを仕掛けると、GKアレックス・マッカーシーのミスを誘発。パスをカットし、最後は無人のゴールへ流し込んだ。
と、幸先よく先制に成功したアーセナルであったが、その後はペースダウン。サウサンプトンのハイプレスに苦戦し、シュートまで持ち込むことすら難しくなっていた。前半は支配率でこそ上回ったが、シュート数ではサウサンプトンを下回るという結果に終わっている。
後半はさらにホームチームにボールを握られた。GKエミリアーノ・マルティネスのファインセーブもあり何とか失点は防いでいたものの、アーセナルにとって我慢の時間が続いていたのは確かだった。
しかし、思わぬ形で追加点が生まれる。84分、MFピエール=エミル・ホイビェアのミスを見逃さなかったFWピエール=エメリク・オーバメヤンがゴール前でDFジャック・スティーブンスのファウルを誘発。これで得たFKの流れから、最後はFWジョセフ・ウィロックがシュートを叩き込んだ。
リーグ再開後3戦目にして初勝利。ネガティブな結果が続いていたアーセナルにとってこの1勝は間違いなく大きく、ここから調子を上げていく可能性も十分にある。しかし、内容面に目を向ければ素直に喜べないのが事実。サウサンプトンの自滅行為により、白星を掴んだのだから。
終着点のないビルドアップ
アーセナルがこの日、最も苦しんだのはビルドアップだと言えるだろう。ボールを良く動かしていた印象はあったが、効果的な縦パスは数えられるほどしかなかった。
前半の立ち上がりはMFグラニト・ジャカからサカ、DFキーラン・ティアニーからオーバメヤンへと鋭い縦パスが通っていたものの、よりサウサンプトンがプレスの勢いを加速させてからはほぼ何もさせてもらえなくなった。パスコースは遮断され、前線にボールが収まってもサンドされるという始末だ。
前から果敢にプレッシャーを与えてくるサウサンプトンに対してアーセナルは逃げ腰となり、簡単にボールを下げる場面が散見。最終的にGKマルティネスにまでパスが渡り、そこからシンプルにクリア→セカンドボールを回収されるという繰り返しとなっていた。
ボールを持てていても、縦へのコースがないため横パスが増える。それを繰り返すうちにサウサンプトンの選手に捕まり、カウンターを受ける。アーセナルのビルドアップにはまるで終着点が見えなかった。オーバメヤン、FW二コラ・ペペらは前線で孤立。相手のミスにより得点は奪えたのが幸運だったが、全体的に見てアーセナルの攻撃は恐くなかった。
ビルドアップに苦戦した理由として挙げられるのは、相手のハイプレスにより選手間の距離を広げられたこと。アーセナルは短いパスがほとんどなく、長いボールがメインだった。
ビルドアップの中心はジャカになるが、彼と得点源となる3トップの選手を繋ぐような存在はいない。そのため、スイス人MFは中盤底でプレーしているが、そこから直線的に3トップへボールを届けるしかないのだ。ウイングバックは当然いるが、サイドにパスを流すのではプレー選択の幅が狭まる。あまり効果的とは言えない。
もちろんボールホルダーがドリブルで前進して距離を近づける方法もある。しかし、サウサンプトンのハイプレスがこれを許さない。実際、ジャカがカウンター時に早い段階でパスを選択し、相手に捕まる場面があった。
ハイプレスを回避するにはワンタッチパス等が有効となるが、選手間の距離が長いアーセナルではそれもなかなか難しい。だからこそ、攻撃のテンポは上がらず、横パスだけが増えて停滞を余儀なくされてしまう。このような状況では、前でボールを引き取ることができるMFメスト・エジルのような存在が好ましいと言えるのだが…。
プレスも曖昧に
一方、守備面ではプレスの部分でやや曖昧さが浮き彫りとなっていた。
前線からのプレッシャーは割と良かった。実際、20分にはエンケティアの懸命なランニングが功を奏し、GKマッカーシーのミスを誘発してゴールが生まれている。若さゆえの勢いもあるかもしれないが、こうした姿勢は大きく評価されるべきだ。
一方でその後ろの選手はどうか。前の選手がボールホルダーに圧をかけているのに対し、連動してラインアップできている印象はなかった。ラインコントロールも整備されているとは言い難く、ロングボールを簡単に通されて、そこからピンチを招くシーンもあった。サウサンプトンの仕上げのクオリティに助けられたと言えるだろう。
とくに後半はサウサンプトンにボールを長く保持されるなど、刈り所を定められていない印象も強い。全体のラインはズルズルと下がり、まるでサウサンプトン相手に引いて守りを固めているかのような時間帯もあった。プレスを仕掛ける姿勢は良いが、今後は前線の選手だけでなくチーム全体として連動性をいかにして伸ばしていくかが重要となるだろう。
アーセナルは現在9位で、CL出場圏内の4位チェルシーとは11ポイントの差がある。残りは8試合だが、今後はウォルバーハンプトン、レスター、トッテナム、リバプールの4連戦が控えているなど、かなりタフなゲームが続く。目標達成に向けては厳しい現状と言わざるを得ないが、サウサンプトン戦の勝利を糧に、白星を掴み続けることができるか。
(文:小澤祐作)
【了】