攻守両面でマンUが優位に
「今は最強のメンバーが揃っている」。
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プレミアリーグ第31節、シェフィールド・ユナイテッド戦の前日に、マンチェスター・ユナイテッドを率いるオーレ・グンナー・スールシャール監督はインタビューでこう話している。その確かな自信は、見事に結果へ結びついたと言えるだろう。
現地時間24日、ホームにシェフィールドを迎えたユナイテッドは3-0で完封勝利。来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得を目指すライバルを相手に、素晴らしい90分間を送った。
前節のトッテナム戦から先発メンバー3人を入れ替えたユナイテッドはこの日、立ち上がりこそシェフィールドに押し込まれたものの、すぐにペースを掌握。ボール支配率を高めながら相手のプレスを的確に回避し、敵陣へ果敢に侵入していた。そして、7分という早い時間にFWアントニー・マルシャルが先制点を奪取。完璧なゲームへの入り方を見せた。
その後も、ホームチームはブレイズを押し込む。サイドに入ったFWマーカス・ラッシュフォードとFWメイソン・グリーンウッドはやや内側でのプレーを意識。トップ下に入ったMFブルーノ・フェルナンデスとコンパクトな距離感を保ちながらテンポ良くパスを回し、相手守備陣の綻びを狙った。そして、DFアーロン・ワン=ビサカやDFルーク・ショーも果敢に攻撃参加。厚みのある攻めを展開した。
対するシェフィールドもしっかりと狙いを持ったオフェンスを披露。ウイングバックに入ったDFジョージ・ボルドックとDFエンダ・スティーブンスが高い位置を取り、サイドチェンジを効果的に繰り出す。ユナイテッドの最終ラインは当然スライドしている状態のため、反対サイドにボールが渡った瞬間、インサイドハーフの選手も絡むことで必然的に数的優位な状況を作り出した。
しかし、そこからの展開にブレイズは苦労。クロスはDFハリー・マグワイアやDFヴィクトル・リンデロフにことごとく弾かれ、セカンドボールも簡単には拾えない。反対に、アウェイチームは全体のラインがかなり高いため、カウンターからピンチを招くことも。12分のマルシャルの決定機は、まさにそこを突かれたものだった。
その後もシェフィールドは何度か敵陣深い位置に入り、サイドチェンジや細かいパスを繋ぎながらチャンスを探った。しかし、それはいずれも横パスばかりで、なかなかキーとなるボールは縦に入らない。ユナイテッドの最終ラインが非常に我慢強く、簡単に飛び込んでは来なかったのも、ブレイズにとっては悩みの種であった。
と、前半から攻守両面で後手に回ってしまったシェフィールドは、44分に右サイドを破られ再びマルシャルに得点を許した。これにはクリス・ワイルダー監督も厳しい表情。2点ビハインドで後半へ向かう、苦しい展開となった。
データからもわかる圧勝ぶり
後半も試合内容に大きな変化はなかった。ユナイテッドは前半同様、ボールを保持しながら着実に前進し、敵陣へ侵入。MFポール・ポグバとB・フェルナンデスを中心とした攻めは特大の可能性とクオリティの高さを示し続けていた。
シェフィールドもなんとか1点をという気持ちは見えていたものの、なかなかプレスがハマらない。ポグバ、B・フェルナンデス、MFネマニャ・マティッチとボールを持てる選手が中盤に揃うユナイテッドを前にボールの刈り所を定められず、ズルズルとラインが下がってしまった。
さらに、時間が進むにつれ疲労も蓄積。ボールに対してプレッシャーを与えるのが難しくなっており、それがユナイテッドに余裕をもたらす原因にもなった。シェフィールドは後半頭に2枚の交代カードを切ったが、それも効果が大きいとは言えず。反撃のキッカケは見当たらなかった。
ユナイテッドのボール回しも巧みで、ほとんど軽率なミスを犯していない。相手のプレスを回避するのはもちろん、カウンターの芽を生ませないという意味でも「確実なプレー」による効果は絶大だった。シェフィールドイレブンの体力を削ぎ落とすにも、十分すぎる内容であったと言えるだろう。
そして、74分には試合を決定づける一撃。マルシャルとラッシュフォードが見事なワンツーで相手守備陣を崩し、GKサイモン・ムーアと1対1に。最後はフランス人FWが冷静にボールを浮かせてゴールゲット。リードを3点に広げた。
終盤には5人を一気に替えるなど余裕ぶりを見せたユナイテッドは、そのまま3-0で勝利。勝ち点を49にまで伸ばし、暫定ながらCL出場圏内の4位チェルシーとの差を2ポイントに縮めている。
データサイト『Sofa Score』によると、この日のユナイテッドは支配率68%、シュート数15本、被シュート数4本、パス748本、パス成功率91%を記録。後半に関しては支配率75%、シュート数7本、被シュート数1本というデータが出ている。まさに圧勝と言っても過言ではない。
効果抜群だった脇役の存在
難敵シェフィールドを退けたユナイテッドはチーム全体としてのパフォーマンスはもちろん、個人の出来も非常に良かった。
1トップに入ったマルシャルは、ユナイテッドの選手としては2013年以来のプレミアリーグでのハットトリック達成者に。前節のトッテナム戦は存在感が薄かったが、その鬱憤を見事に晴らした。
そして、B・フェルナンデスとポグバの輝きはやはり別格。相手を攻略する上で欠かせないピースとなっており、今後もチームのカギを握る存在となることは明らかだ。また、ラッシュフォードやグリーンウッドも随所で持ち味を発揮。無失点に抑えた守備陣の奮闘ぶりも見逃せないポイントである。
ただ、この日のマン・オブ・ザ・マッチにはこの男を挙げたい。ネマニャ・マティッチだ。
セルビア代表MFは決して主役ではなかったものの、主役の存在感を引き立てるための脇役としては申し分ないパフォーマンスを見せた。守備面では中盤をしっかりとパトロールし、ボールを的確に回収。ダブルボランチの相方であるポグバがより攻撃面で存在感を放つためにも、彼のバランスの取れたポジショニング等は大きな効果を発揮していたと言える。
そして、攻撃面でももちろん持ち味を誇示。最終ラインに落ちてビルドアップを助けたかと思えば、ピッチ内の幅広いエリアに顔を出してボールを引き取るなど味方をサポート。そこからパスを的確に配給し、攻撃をオーガナイズしている。ボールを少しずつ動かしながら綻びを狙い、縦パスも積極的に入れるなど、大きな役割を果たした。
データサイト『Who Scored』によると、マティッチはこの日パス99本を繰り出し、パス成功率は96%、キーパス1本を記録。タッチ数104回は両チーム合わせて2番目に多い数字で、ポゼッション率8.9%は同トップの数字である。彼がいかにボールに絡み続け、効果的なプレーを発揮していたかはこうしたデータを見ても一目瞭然であると言えるだろう。
マティッチも開幕前はパフォーマンスレベルの低下を指摘されていたが、コンディションの良さは明らかで、ポグバ同様その雑音をかき消す勢いを見せている。まだまだ必要な戦力と言えそうで、よりボールを支配できる格下相手にはマティッチ、ポグバ、B・フェルナンデスの組み合わせは非常に魅力的かもしれない。
さらに控えにはMFスコット・マクトミネイにMFフレッジもいる。様々な組み合わせで色々な戦い方をチョイスできるため、レギュラー争いは白熱しそうだ。スールシャール監督にとってはなんとも嬉しい悩みと言えるだろう。
(文:小澤祐作)
【了】