2000年問題に学ぶリスクマネジメント
最悪のシナリオとはどういうシナリオなのかというと、ニューヨークやイタリアを見ればすぐわかるので、「あれが最悪のシナリオですよ」という風に明示できているわけなんです。
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それなのに、日本ではそういうことは起こり得ないという妙な神話があって、確かな根拠があるわけでもないのに、日本は違うみたいなことを言うわけです。
もしかしたらそうなのかもしれないですけど、楽観はしないように傾いてくれた方が頼もしいわけですから、要は悲観的なシナリオを組んでおいても、肩透かしを食らうのはどうってことはないんです。
昔、2000年問題というのがありました。当時、僕はニューヨークで研修医をやっていたんですけど、2000年の1月1日にカチッと1999から2000に時計が回ると病院の人工呼吸器が全部止まるという噂がまことしやかに流れて、ICUの患者がみんな死んでしまうと。
大晦日の夜中に病院に待機して人工呼吸器が全部止まっていたらどうするかみたいなことをドキドキしながら待っていたんですよ。
実際は何も起きなかったんですが、そこは最悪のシナリオを想定して準備するのはやはり大事で、それを看過して悲惨な状態になるよりは準備に準備を重ねて何も起きなかった、肩透かしだったと言って笑って済ます方がよっぽどいい間違い方なんですね。
正しく間違えるというのはこういうことで、間違えないというのは人間の世界ではあり得ないことで必ず間違えるんです。正しく間違えるというのも大事で、悲観的に見ておいて肩透かしを食らうのは、許容できる笑い話のような間違いなんです。
けれども、突然正月になったらみんな死んじゃうみたいな、これは絶対許容できない、許しがたい間違いですよね。
2000年問題とはそういうことだったんですけど、やはり最悪の事態を想定して準備するということなんですが、日本では「何でそんなことを言うんだ」となぜか怒られてしまうわけです。
(文:岩田健太郎)
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