Jリーグ再開を前にして
最初の延期発表から3ヶ月あまりを経て、ついにJリーグが戻ってくる。
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日本のサッカーに関わる全ての者にとって厳しい時期だった。今後の数週間、数ヶ月間もさらなる困難が待ち構えていることだろう。各クラブが活動再開に向けてどのような状態にあるかを探るため、私は先日FC町田ゼルビアの唐井直ゼネラルマネージャーとランコ・ポポヴィッチ監督に話を聞いてみた。
大分トリニータ、FC東京、セレッソ大阪の元監督であるポポヴィッチは、2011年にも率いたこのクラブに今季開始前に復帰したばかり。クラブについての話を始める前に、彼はまずプレーの再開を可能とするために尽力したすべての人々への感謝を述べた。
「最前線にいる人たちのことを忘れてはならない。現場で戦ってくれている医療関係者、感染した方々、関わっている全ての人々が本当に苦しんできた」とポポヴィッチ監督は語る。「こういう状況で我々のことは二の次だ。まずはすべての人々に強い敬意を伝えたい。この酷い状況に我々全員が打ち勝つ助けとなってくれた者たちに」
セルビア人指揮官はサッカー界が正常化への最初の一歩を踏み出そうとしていることに感謝しつつ、チームが完全に調子を取り戻すためには、6月27日のJ2再開から数試合を必要とする可能性も示唆した。
「再び仕事に戻って、サッカーやその他すべてを再開できるのは幸運なことだ。だが今が最高の時期かどうかと問われればノーと答えざるを得ない。決して最高の時期ではない。だが今後そうなる可能性があるかということならもちろんイエスだ」
コロナ禍で果たした地域への貢献
「チームを最高の調子に戻すため、リーグ戦再開後の最初の2週間か3週間を使うことにもなるだろう。なぜそうなるかって? 日本では欧州のように(再開後に)5試合や6試合、10試合を戦うわけではない。41試合を戦わなければならないからだ」
4月7日に東京で発令された緊急事態宣言の結果として、町田は4月8日から5月17日までチームで集まってトレーニングを行うことができなかった。ポポヴィッチ監督は選手たちがそれぞれの個人フィットネスプログラムに従い努力を続けてきたことに満足しながらも、6週間にわたってピッチから離れていた影響は当然あると強調した。
「一人でもトレーニングはできるが、グループでやっていることとは全く違う。足をスパイクに馴染ませるだけでも(練習再開から)最初の1週間は過ぎてしまうと思う。タイトなスパイクでの練習は全く違う。ランニングシューズのように楽なものではない」
もちろん、意識しなければならない健康問題は、試合ができるコンディションを取り戻すことだけではない。クラブドクターの五十子桂祐氏は、地域のPCR検査センター設置に大きな役割を果たしてきた。
「日本政府はあまり多くのPCR検査をできなかったので、医師団体や都市協会がゴールデンウィーク前に独自のPCR検査センターを実現しようと取り組みました」と唐井氏は語る。「五十子ドクターは町田市のPCRセンター設置担当の中でも特に重要な医師の一人でした」
ゼルビアの選手たちやスタッフも全員が5月14日にPCR検査と抗体検査を実施。全員から陰性反応が検出されたことで、5月18日から7~8人ずつ4つのグループに分かれてのトレーニングを再開することができた。5月25日には緊急事態宣言が解除され、チームは6月1日から通常練習の再開が可能となった。
チケット売上は少なくとも半減…
それでもJリーグの各クラブは、依然として移動の面や財政面で乗り越えるべき数多くの障害を抱えている。
「市は可能な限り日程面で協力することを約束してくれています」。予定される全ての試合で町田GIONスタジアムが使用可能となるのかどうかについて、唐井氏はそう語った。駒沢陸上競技場や西が丘サッカー場もホームとして使用できるかもしれないが、他のチームも会場を必要とする可能性が高く、その場合は「東京の他クラブと交渉する必要があると思います」とのことだ。
収益面でも大きな打撃が見込まれる。ゼルビアは2020年を乗り越えられると唐井氏は信じているが、その後も困難は続くと予想している。
「もちろんチケット売上げは減少し、今季の予算は縮小しつつあります。最初は無観客試合になりますので、チケット売上は少なくとも半減すると予想しています。我々としては非常に厳しい状況です」
「村井さん(村井満Jリーグチェアマン)は今季すべてのクラブを存続させると約束してくれています。しかし来季も同じ予算規模を維持するのはさらに難しくなると予想しています」
「日本人にとっては非常に良い」
だがポポヴィッチ監督は現在のことだけに集中しており、25週で41試合という過酷な日程を戦い抜くために1試合ごとにチームをマネジメントしていく姿勢を明確にしている。そして今まで以上に柔軟な対応を強いられることが、日本のサッカー全体にとってプラスになる可能性もあると感じているようだ。
「何よりもその時その時の感覚に基づいてやっていくことだと思う。全く新しいことであり、この状況は日本人にとって非常に良いものかもしれない。いつもなら何でも2週間前には予定を決めて動くが、これからはすぐに反応していかなければならない」
試合と試合の間に十分な準備時間がないことで、相手を止めようとするよりも自分たちのプレーを積極的にやっていこうとするチームが増えるのではないかとも考えている。
「日本人は非常に勉強熱心で、細かい部分まで徹底的にやるが、相手のことを考えすぎてしまう部分もあると言える。私はいつも選手たちに、『他人のやっていることを見て自分の生き方を失う必要があるのか?』と伝えている。他のチームに多少は目を向けるのもいいだろう。だが自分たちはどうなんだ? 自分たちは何をすべきなんだ?」
選手たちの負担を軽減するため、Jリーグでも1試合に5人までの選手交代が認められる。ポポヴィッチ監督は、必要であれば新たなルールも利用するが、ルール変更が必ずしも全てのチームに等しく恩恵をもたらすわけでもないと指摘している。
「マンチェスター・シティやボルシア・ドルトムント、バイエルン・ミュンヘンなどに5人の交代枠を与えたとすれば、そういうチームには同じような選手が25人はいるだろう。だが(J2では)各クラブに12人や13人、14人、15人。(その中で)17人いるチームは王様になれる」
「どんな時も負けたいとは思わない」
今年は降格が行われないというルール変更もある。だが選手たちが1試合1試合に強いモチベーションを持ち続けることに変わりはなく、むしろ大会方式の変更がより積極的で攻撃的なサッカーを促す可能性もあるとポポヴィッチ監督は考えている。
「スポーツ選手はどんな時でも負けたいとは思わないものだ。自分自身にプレッシャーをかけられないようならスポーツマンだと言えるだろうか?」
「降格を心配しなくていいのは事実だ。だがそれはポジティブなことでもあるかもしれない。少し別のことを試して、試合に勝つためにもっとリスクを冒してみよう、と考えられる。試合に負けないようにすることと勝とうとすることの間にはあまりにも大きな違いがある。今後に向けて非常にポジティブな影響があるかもしれない」
まだ状況は動き始めたばかりであり、今後乗り越えるべき障害はまだまだ多い。だがポポヴィッチ監督は前向きに捉えている。
「選手たちにも伝えたことだが、全ては頭の中にある。しっかりと準備をして、頭の中が晴れ渡っていれば、外側が嵐だろうが何だろうが頭の中は晴れている。そういうふうに考えるべきなんだ」
(取材・文:ショーン・キャロル)
【了】