視聴者は倍増
中国湖北省の武漢市から広まった新型コロナウイルスは世界各地に蔓延し、多くの感染者や死者が出ている。それが原因で世界のプロスポーツのほとんどはストップを余儀なくされた。プロサッカーの世界も同じように、延期やシーズン終了などといった措置が取られている。
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その中で、いくつかの国では現在もまだプロスポーツが行われている。中でも話題になったのは、アジアの台湾であった。プロ野球は4月12日に無観客試合として開幕しただけでなく、アマチュアのサッカー1部リーグでも同じ日に、4試合を無観客試合として同時に開催している。無事に開催するためにどのような努力したのか、台湾サッカー協会の副秘書長に聞いてみた。
「去年の決勝戦はインターネットでの視聴者が1000人ほどだったが、今年の開幕戦は倍くらいの視聴者がいた」。台湾サッカー協会副秘書長の焦佳弘氏は、現在の台湾リーグの注目度について話した。世界のサッカーがほぼ休止して、各国の視聴者が殺到した。ネット中継ではスペイン語、フランス語のユーザーもおり、中国、香港から視聴する人もいたという。
急に注目度が上がったため、週に1試合だけだったネット中継は、視聴者の要望により第2ラウンド全4試合が中継されることになった。しかし、それでも問題はあった。台湾サッカーリーグの生中継をするための設備や人手が不足していた。焦氏は現在、台湾の体育署(日本のスポーツ庁に相当)に設備の拡充を求めているという。
「自分の国のサッカーが世界のファンに見られることはもちろん光栄ですが、もっと良いクオリティーの試合を見せないといけない」。世界に向けたネット生中継を通して、焦氏はこれを「台湾サッカー国際化のきっかけ」だと考え、台湾アマチュア選手たちの姿を視聴者に見せたいと考えている。
開催するための対策
だが、FIFAランキング138位の台湾サッカーは、実力が劣ることも事実だった。ネットで生中継された際、「弱くない?」という海外のコメントも少なくない。通常の台湾サッカーリーグの入場者は1試合200人程度であり、「元々無観客だろう」という声も聞こえた。
しかし、今回の無観客試合に対し、サッカー協会も様々な感染防止対策を採った。試合会場に入ったらすぐ検温や健康問診票に記入し、試合前に選手たちは握手をせずに敬礼をする。取材のときも記者と選手は距離を取った。
それでも、最初の無観客試合ではちょっとした問題が発生した。「会場が広くて入り口も多いので、人が入ってしまうことがあった」と焦氏は話す。台湾サッカーの試合は普通の運動場で開かれることもあり、周りをジョギングしている人が知らず知らずのうちに球場に入ることもあったようだ。
台湾国内の情勢は…
無観客試合としてリーグが開幕してまもなく1ヶ月、台湾では4月12日から2週間以上連続してコロナウイルスの新規感染者がいない状況である。現在、台湾では429人の感染者がいて、そのうち6人が死亡している(4月29日の時点)。「幸い国内の感染者が少ない。もちろん国内感染者が再び出るようなことがあれば、我々は試合を開催するかどうかまたもう一度検討する」と焦氏は言った。
協会も毎日、各チームの検温と健康の状況を把握し、試合が終われば「すぐ家に帰ってください」と伝えている。焦氏は「日本プロ野球の阪神タイガースに所属する藤浪(晋太郎)のように、プライベートのパーティーで感染したケースもあり、我々はチームに対して、選手の行動について要求している」。
日本のプロ野球と同じように、もし台湾サッカーリーグから感染者が出るか、あるいは台湾政府が「クラスターが発生した」と判断すれば、公式戦を中止する予定だという。焦氏も「これまで試合ができていることについて、政府にはもちろん感謝している。コロナは世界のスポーツに衝撃を与えているが、いまは試合ができることだけで幸せだと実感する」と話した。
しかし、台湾サッカーの実力が上がるのはまだ先のこと。「世界は台湾サッカーを見ているので、もっと頑張るところを見せたい。台湾サッカーはまだ世界との差が大きい。みなさまにもっと良い台湾サッカーを見せたい。コロナによって世界のサッカーがストップする中で、台湾サッカーが国際的な責任を果たせればいい」。焦氏は最後、改めて自分の思いをはっきりと述べた。
(取材・文:鄭仲嵐)
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