バイエルンで完成させた2大原則
グアルディオラのチームがよく受ける批判の一つに、彼らが単にパスを繋ぐためだけにパスを繋いでいるように思える、というものがある。2人の選手が短く速いパスを交換し合う形もよく見られるが、そういったパスにはボールを小さく移動させる以上の意図は何もないようにも見えてしまう。
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だが、実際にはこのようなパスは、相手をボールに向けて引き出すことを意図したものだ。パスが出るたびに、相手はわずかにボールに向かって引きつけられ、ピッチ上のボールサイドのスペースが狭められる。
このコンセプトの背景にある考えは、ボールから遠いサイドにおいて攻撃的な選手をあえて孤立させ、相手選手と1対1で勝負できるチャンスを作り出そうというものだ。
相手がオーバーロードを恐れてボールに向けて引き寄せられると、シティは相手陣内を横切るダイアゴナルなパスを送ることができる。孤立した状況で1対1になれば、スターリングやサネ、ベルナルド・シウバ、リヤド・マフレズといった選手を相手の守備選手がストップするのはきわめて困難となる。
だからこそグアルディオラのチームでは、攻撃フェーズにおいて少なくとも一人のサイドプレーヤーがボールと反対側のサイドのタッチライン際に居続けることが明確に指示されている。この指示がなければ、ピッチ上のオーバーロード区域からアイソレートを行うサイドへの切り替えは、はるかに効果性を落とすことになってしまう。
このコンセプトはグアルディオラがバルセロナにいた頃からある程度用いられており、ティエリ・アンリなどの選手が左サイドに大きく張って相手の守備構造を引き伸ばしていた。
さらにグアルディオラはバイエルンでこの手法を完成させ、偽SBのアイデアとともに、オーバーロードとアイソレートの概念はバイエルンにおいて用いられたゲームモデルの攻撃面の重要な部分を占めることになった。
アリエン・ロッベンとフランク・リベリという2人がWGにいたことを考えれば、バイエルンがワイドなエリアからの仕掛けを活用するような攻撃コンセプトを用いるのは当然だったとも言えるだろう。
(文:リー・スコット)
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