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グアルディオラの操る攻撃戦術の2大原則。その2「アイソレート」とは?【ポジショナルフットボール教典(6)】

噛み砕いて考えれば考えるほど、グアルディオラのゲームモデルはシンプルそのものである。彼らがあれほど効果的に戦えるのは、同コンセプトを寸分の狂いもなく実行に移しているからこそだ。マンチェスター・シティの選手がどのように動き、どのようにパスを出しているのか、そしてその理由について明確に説明することを試みた4/22発売の『ポジショナルフットボール教典』から、「オーバーロードとアイソレート」の章より一部抜粋で公開する。(文:リー・スコット)

text by リー・スコット photo by Getty Images

バイエルンで完成させた2大原則

ジョゼップ・グアルディオラ
【写真:Getty Images】

 グアルディオラのチームがよく受ける批判の一つに、彼らが単にパスを繋ぐためだけにパスを繋いでいるように思える、というものがある。2人の選手が短く速いパスを交換し合う形もよく見られるが、そういったパスにはボールを小さく移動させる以上の意図は何もないようにも見えてしまう。

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 だが、実際にはこのようなパスは、相手をボールに向けて引き出すことを意図したものだ。パスが出るたびに、相手はわずかにボールに向かって引きつけられ、ピッチ上のボールサイドのスペースが狭められる。

 このコンセプトの背景にある考えは、ボールから遠いサイドにおいて攻撃的な選手をあえて孤立させ、相手選手と1対1で勝負できるチャンスを作り出そうというものだ。

 相手がオーバーロードを恐れてボールに向けて引き寄せられると、シティは相手陣内を横切るダイアゴナルなパスを送ることができる。孤立した状況で1対1になれば、スターリングやサネ、ベルナルド・シウバ、リヤド・マフレズといった選手を相手の守備選手がストップするのはきわめて困難となる。

 だからこそグアルディオラのチームでは、攻撃フェーズにおいて少なくとも一人のサイドプレーヤーがボールと反対側のサイドのタッチライン際に居続けることが明確に指示されている。この指示がなければ、ピッチ上のオーバーロード区域からアイソレートを行うサイドへの切り替えは、はるかに効果性を落とすことになってしまう。

 このコンセプトはグアルディオラがバルセロナにいた頃からある程度用いられており、ティエリ・アンリなどの選手が左サイドに大きく張って相手の守備構造を引き伸ばしていた。

 さらにグアルディオラはバイエルンでこの手法を完成させ、偽SBのアイデアとともに、オーバーロードとアイソレートの概念はバイエルンにおいて用いられたゲームモデルの攻撃面の重要な部分を占めることになった。

 アリエン・ロッベンとフランク・リベリという2人がWGにいたことを考えれば、バイエルンがワイドなエリアからの仕掛けを活用するような攻撃コンセプトを用いるのは当然だったとも言えるだろう。

(文:リー・スコット)

9784862555526

『ポジショナルフットボール教典』


定価:本体¥2000+税

<書籍概要>
噛み砕いて考えれば考えるほど、グアルディオラのゲームモデルはシンプルそのものである。 彼らがあれほど効果的に戦えるのは、同コンセプトを寸分の狂いもなく実行に移しているからこそだ。 本書を通して、シティの選手がどのように動き、どのようにパスを出しているのか、そしてその理由について明確に説明することを試みたい。 最後まで読み終えたあと、グアルディオラが用いる戦術コンセプトを今までより少しでも楽しんでもらえるようになったとすれば、この試みは成功だったと見なすことができるはずだ。

詳細はこちらから

【了】

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