マンチェスター・シティに存在する重要なルール
グアルディオラの率いるシティは、近年において最も強力な攻撃力を持ったチームの一つだと評されており、実際にその評価に見合う結果を残してきた。2017シーズンにはプレミアリーグ新記録となる勝ち点100を達成しただけでなく、106得点も記録している。2018シーズンにも勝ち点98 、95得点という数字を残した。
【今シーズンのシティの試合はDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
過去2シーズンのシティは、勢いに乗っている時には止めようがないと思えることもあった。攻撃陣にはボールを持っていれば、ほとんどいつでもゴールを決められる力があるかのようだ。
グアルディオラは、守備フェーズにおいて自らのチームに非常に具体化されたアクションを要求する監督として知られている。シティのプレスと守備のやり方はコーチングスタッフによって明確に規定され教え込まれる。
一方でアタッキングサードにおいては、シティの選手には自分たちのプレーを表現する自由が十分に与えられている。ただし、一つだけ重要なルールが存在する。ボールがどこに位置していようとも、少なくとも一人の選手がピッチ上のボールと反対側にワイドなポジション取りをしなければならない。
これは、現在のシティが用いている攻撃コンセプトの中でも最も重要な「オーバーロードとアイソレーション」に欠かせない部分だ。
「オーバーロード」とは?
オーバーロードというコンセプトは比較的シンプルなものだ。シティはボールを保持している際、ピッチ上の一定のエリア内で相手より数的優位となる状況を作り出そうとしている。ポジショナルフットボールの視点から考えれば、これは本書の導入部分において示した基準の一つに一致している。シティは常に相手に対して数的優位を生み出そうとしているということだ。
そのためにグアルディオラが好んで用いる基本的な方法論はそれほど複雑なものではない。パスのネットワークを生み出し、相手のプレッシャーラインをくぐり抜けるため、シティはボールを素早く、そしてしばしば小さなエリア内で動かそうとしている。
よくあるパターンの一つは、通常はダビド・シルバが務める左側のCMが左のハーフスペースへとポジションを移動し、左WGおよび左SBとトライアングルを形成することで、左サイドでのオーバーロードを作り出すという形だ。
この3人を「4番」と左側のCBがサポートし、こちらのサイドで強力な攻撃構造を生み出すことができる。この構造によりシティは選手間で素早く、かつ安全にボールを移動させ、相手のラインを突破して攻撃チャンスを作り出すことが可能となる。
だが、相手が守備面でアクティブなチームであり、オーバーロードを用いて突破することが不可能な場合には、本章で説明するもう一つのコンセプトが採用される。それがアイソレーションである。
(文:リー・スコット)
【了】