プレー面だけではなかったウォーカー獲得のプラス要素
ウォーカーの成長に関してもう一つ重要だったと言えるのは、ファイナルサードでの決断力や、そういったエリアで技術を発揮する力も見せ始めたことだ。もともとスピードとパワーのあった彼は相手DFラインの裏のスペースに飛び込むことはできていたが、いつどのようにラストパスを出すべきかを理解し、その動きを最大限に活用する能力も兼ね備えるようになった。
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シティがウォーカーに着目し、推定5300万ポンドという巨額を投じて彼と契約を交わしたのもまったく驚くべきことではないだろう。グアルディオラが自身のチームのSBに求めるダイナミックな能力を持った選手であり、チーム内で新たな役割を学ぶことができる柔軟性と意欲もすでに示していた。
イングランド代表であるウォーカーをチームに加えることは、プレミアリーグのメンバー登録規定に従う上で、シティにプラスになるというのも悪くない一面だった。ホームグロウンプレーヤーに関する現行規定では、25人のメンバーのうち少なくとも8人は、21歳になるまでに3年間以上イングランドのクラブに登録されていた選手でなければならないと定められている。
シティでのウォーカーのこれまでのキャリアは、文句なしの成功だった。グアルディオラにとっては完璧なSBだ。高い運動能力と技術力を持ち、シティがボールを持っている際にはWGの外側からオーバーラップ、あるいは内側からインナーラップの形を作り出すことができる。
ウォーカーが演じる多様な役割とは?
また、シティでのキャリアを通してウォーカーは少々異なる2つの役割で起用されてきた。シティはボールを保持している時、事実上CBを3人並べる形を取る場合がある。左SBは高いラインへ前進し、ウォーカーは深いラインを保つことで、他の2人のCBとともに3人が連なる形を形成する。
もう一つは、ウォーカーを偽SBの役割に起用する形だ。これはグアルディオラがバイエルンを率いていた際に特に盛んに用いていた手法だった。両SBのアラバとラームが中央寄りに移動し、ほぼCMであるかのようにプレーしていた。
相手が深く引いて受け身の守備ブロックを形成するような試合では、グアルディオラはシティでも同様の戦い方を選んでいる。ウォーカーが中央に寄り、シティのシステム内で「4番」と同じラインに位置してプレーする形となる。
ウォーカーがシティのチーム内でこういった多様な役割を演じられる技術的、戦術的能力を有しているとグアルディオラが考えていることは、それだけこの右SBを高く評価している証拠に他ならない。また、グアルディオラが自らのチームの選手に継続的な成長を促す力を持った監督であることも改めて示されている。
ウォーカーは、現代サッカーに必要なフィジカル適性を持ったトップクラスのSBとしてシティにやってきたが、ボールを持った局面で彼がCMとしてプレーできるようになることを予想していた者はほとんどいなかった。だが、そこを見通していたグアルディオラはウォーカーを成長へと導き、その役割を務めるために必要な戦術的情報を余すことなく植え付けていった。
(文:リー・スコット )
【了】