巨額投資だけではない的確かつ効果的な補強
グアルディオラの就任1年目は、彼のチームの高い水準に照らし合わせれば低調なシーズンとなった。メンバーを入れ替えてチームを再構築する必要があるというのがシーズンを終えた時点での彼の認識だった。2年連続リーグ優勝と昨季の国内3冠を成し遂げた現在の視点で振り返った上で、グアルディオラはシティの行う巨額投資の恩恵によって成功を収めてきたと主張したがる者もサッカー界には一定数存在している。
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もちろんこういった指摘も、それ自体は理解できるものではある。だが、見落とされがちなのはグアルディオラ就任後のシティが行ってきた補強が、いかに的確かつ効果的であったかという点だ。
就任2年目を迎えるにあたって、グアルディオラとスタッフは、2016/17シーズンを通してSB陣の貢献度が明らかに不足していたことにはっきりと気がついていた。そこでまず報じられたのは、グアルディオラは彼の率いたバルセロナでプレーしていたSBのダニ・アウヴェスをチームに加えたがっているという話だ。
結局アウヴェスはオファーに応じず、パリ・サンジェルマンへ移籍することを選んだ。だが、シティはこの失敗後にすぐさま果断な対応を取り、トッテナム・ホットスパーで右SBとしてプレーするイングランド代表のカイル・ウォーカーと契約を交わした。
シェフィールド・ユナイテッドの下部組織出身のウォーカーは、クラブでも代表でもファーストチョイスの右SBとして確固たるポジションを手に入れていた。だが、そこに至るまでの彼のキャリアの歩みは、他の多くのSBほどシンプルなものではなかった。
シティでの起用につながるウォーカーの過去
ウォーカーはシェフィールド・ユナイテッドでトップチーム昇格を果たしたあと、わずか2試合に出場しただけで、同じユナイテッド下部組織出身のカイル・ノートンとともにスパーズへ移籍することが合意に達した。
フレキシブルな能力を見せていたウォーカーは、契約を交わした時点ではまだ、右SBと左SBのどちらでプレーしていくことになるのか、はっきりとはわからなかった。このユーティリティ性は後々、グアルディオラのシティでのウォーカーの起用法を考察する上で興味深い要素となる。
スパーズの選手となったウォーカーだが、トップチームで活躍するまでにはしばらく待たなければならなかった。ロンドンのクラブとの契約条件の一部として、翌シーズンの1年間はシェフィールド・ ユナイテッドにレンタルされる形となる。少なくとも、まだ若かったウォーカーがプロの試合にしっかりと慣れるためには意味のある期間だった。
だが、レンタル生活はこれで終わりとはならず、その後の2年間はクイーンズ・パーク・レンジャーズとアストン・ヴィラにレンタルされる。丸々3シーズンのレンタルを経てようやく、スパーズで力を発揮するチャンスがウォーカーに与えられた。
シーズンが進むにつれて、ウォーカーは徐々にレギュラーポジションを確保していった。若かった彼は、もともとトップレベルのスピードは持っていたが、この頃までに筋力も高めたことでプレミアリーグのフィジカル面の厳しさにも耐えられるようになっていた。さらに、彼のプレーのその他の面も徐々に向上し始めているのが見て取れた。
攻撃時にも守備時にもポジショニングをより意識するようになり、試合を読む力、チームにとってプラスとなるポジション取りをする能力がさらに洗練されてきた。
(文:リー・スコット )
【了】