マンC就任後、サイドバックを刷新した意図
グアルディオラが2016年にシティの指揮を引き継ぐことになると、イングランドのサッカー界においても偽SBを見ることができるという期待が大きく高まった。だが、実際に目にしたものは、グアルディオラは我々が思い込んでいた以上に繊細で柔軟な指導者だという事実だった。
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就任1年目には、SBの選手、具体的にはパブロ・サバレタ、ガエル・クリシ、バカリ・サニャ、アレクサンダル・コラロフ、ヘスス・ナヴァスなどが、伝統的な外側のポジションでプレーする試合もあった。一方で試合によっては、相手に応じてこれらの選手が偽SBの役割を任されることもあった。
だが、このSB起用法の結果として無視できない一つの大問題が生じた。根本的なクオリティ不足という問題だ。このシーズンのシティでSBに主に起用された5人の選手はいずれもキャリア後半の時期を迎えていた。新たな血が必要とされた結果として、2017シーズン開幕前には補強に巨額の資金が投じられ、バンジャマン・メンディ、ウォーカー、ダニーロを迎え入れ、SBのメンバーが刷新された。
その結果はすぐに表れた。グアルディオラ就任2年目の開幕直後から、シティはよりグアルディオラらしいチームに見えるようになった。1年目は慣れないサッカー文化への適応を図る時期となったが、2年目と3年目にはグアルディオラはその文化を自身のイメージに合わせて作り変えていった。
その上で大きな役割を果たしたのが、新加入のSBのパフォーマンスである。最後のピースである彼らを加えたことで戦術のパズルは完成し、シティの攻撃ポテンシャルは存分に解き放たれた。
ハイブリッドな役割を演じるサイドバック
バルセロナにおいては、グアルディオラのSBは伝統的な役割を課されていた。バイエルンにおいては偽SBとして起用された。現在のシティにおいては、さらなる進化の結果として、SBはハイブリッドな役割を演じるまでになった。
ワイドなポジションから、ハーフスペースや中央のエリアのポジションへの切り替えは、一つの試合中に行われている。SBの一人がワイドなエリアで攻撃をサポートする役割に起用され、もう一方が深いラインを保ってほとんど3バックに近い形を構成するような試合もある。
この柔軟性を実現するため、SBのポジションでプレーする選手には、戦術に関する膨大な情報量を保持することが求められる。グアルディオラとコーチングスタッフは常に改善に取り組み続けており、当該の選手はゲームモデルの要請に応じて特定のエリアへの出入りを、いつどのような形で行うべきであるかを理解しなければならない。
それゆえに、グアルディオラのシステム内で力を発揮できるSBは非常に具体的なタイプの選手に限られてくる。ウォーカーやメンディといった選手はかなり典型的なタイプのSBだと言えるが、左 SBのポジションにはファビアン・デルフやオレクサンドル・ジンチェンコも起用されている。
本来 MFであるこの2人の能力は、SBの役割に新たな解釈を与えることを可能としている。実際のところ、グアルディオラのゲームモデル全体の中でも、SBは習得と実践が最も困難なポジションの一つだと考えて間違いはないだろう。
グアルディオラがシティ監督就任当初に苦戦を強いられたことも、SB陣が高齢化しており、監督の要求する役割を演じることができなかったという理由で、ある程度説明することができる。
(文:リー・スコット)
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