急速な進化を遂げるサイドバック
サッカーにおいて、SBほど過去10年間に劇的な変化を経てきたポジションは他にないと言っていいだろう。伝統的には、SBとは主に守備面の機能を担いつつ、時折相手陣内にまで侵入する選手だと見なされていた。だが、現代のSBには攻撃の局面において、もともとはウイング(以下、WG)の役割だとされていたようなプレーを実行することが求められている。
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SBはアタッキングサードにおいて横幅を広く使ったプレーを提供するとともに、ボールを前へ運ぶために攻撃陣のチームメートにコンビネーションの選択肢を与えるポジションとなった。
この変化は、トレーニング方法やスポーツ科学の発展により選手のコンディションや肉体的強度が向上し、中央エリアのスペースが狭まった結果として生じたものだ。中央のスペースがタイトになったことで、ピッチ上で唯一SBだけが、前方に進めるスペースがある状況でボールを受けることが可能なポジションとなっていった。
このようにポジションの性質が変化し、攻撃面で脅威を生み出す必要性が高まったことを反映して、SBを務めるために必要とされる技術要件も明らかに変化してきた。
バイエルンで作り上げた“偽SB”とは?
SBは依然としてディフェンシブサードやミドルサードのスペースでもボールを受けるが、同時にファイナルサードの狭いスペースの中でもボールを受けられる能力を持つ必要がある。
チームの攻撃フェーズにおいて自然と高いポジションでプレーする傾向を持ったWGの選手が、ポジションを下げてSBを務めるというトレンドも実際に生まれている。攻撃の選手に守り方を教えることはできるが、守備の選手に攻撃的なプレーを適切に教えることはより難しいと考えられていたためだ。
グアルディオラのチームにおいては、SBのポジションは常に重要な存在だった。彼が率いたバルセロナでは、ブラジル代表のダニ・アウヴェスがおそらく世界最高のSBになった。ただし、極度のポゼッション志向のバルセロナで彼は事実上、右WGとしてプレーしていたが、バイエルン・ミュンヘンでは、フィリップ・ラームとダヴィド・アラバを“彼のやり方”でSBに起用していた。
それ以前のSBは、ライン際のエリアで主にプレーしていたという意味で、かなり直線的なポジションだった。だが、この時になって初めて、我々は“偽SB”を目にすることになった。
チームがボールを持っている時 -この場合、試合時間のほとんどがそうだったが- には、Wの選手が高いエリアのアウトサイドに張ることで横幅を作り出す。その時、SBは中央のエリアへと移動し、ボールポゼッションの安全性を高めようとする。ボールに近い側(ボールと同サイド)のSBは、通常よりは絞りながらも伝統的な外側のポジションをキープし、一方でボールと遠い側のSBは中盤の中央へと移動してくる。
これによりバイエルンは常にピッチの中央エリアを支配下に置くことが可能となり、ボールを持つ選手に対してはサポートに入る選手がパスの出しどころの選択肢を提供していた。このポジション移動は、チアゴ・アルカンタラなどの選手を中盤のポジションから前方へと押し出し、相手の中盤とDFのライン間でプレーするチャンスを作り出すことも意図している(と同時にボールを失った際はカウンターの防波堤としても機能する)。
(文:リー・スコット)
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