アスリートとしての「コロナ対策」
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新型コロナウイルスの感染拡大で神経質になるチームが多い中、「できるだけ通常通りにしたい」と考えるのが湘南ベルマーレだ。2月25日の最初のJリーグ公式戦延期決定以降、メディア対応は制限せず、3月下旬まで継続している。ただ、一般に対する練習は原則非公開。トレーニング拠点の馬入ふれあい公園は休校中の小中学生も頻繁に訪れるため、選手たちは子供たちの様子を横目に見ながら、再開に向けて調整を続けている。
アカデミー出身の齊藤未月はそんな現状に複雑な思いを抱く1人だ。
「子供たちは部活もあまりできていないだろうし、馬入を使ってる学校もほぼない。静かな感じはしますよね。9年前の(東日本大)震災の時もこんな感じの時はありますけど、今回はちょっと雰囲気が違いますね…。僕自身はマスクをするとか、車で移動するとか、基本的には電車を使わないとか、そういったコロナ対策をしています。自分はアスリートだし、それが仕事なんで、しっかりした行動ができればいいと思います」と気を引き締めた。
現時点で再開が予定通りの4月3日に叶うのか、それともさらに後倒しになるのかは分からないが、齊藤は今の時間を最大限、有効活用しようと意識を高めている。
「公式戦がないことで、人それぞれモチベーションの違いはあると思いますけど、今の時間でレベルアップすることはできると思う。個人としては守備の部分で行った後にもっと素早く戻るとか、空いてるポジションに戻って穴を埋めるとか、人に見えない部分をもっとやれるようにしないといけないですよね。それプラス、自分のよさであるボールを奪い切ってチャンスを作るところもレベルアップしなきゃいけない」
「2月21日のJ1開幕の浦和レッズ戦ではその回数が去年より多かったのかなと。ポジションもインサイドハーフに変わってやりやすい部分はあったと思いますけど、あのレベルを練習から出せたらいい。そこを追い求めていきます」とまるでリーグ戦期間中のように目を輝かせていた。
特長が活かせるインサイドハーフ
齊藤が並々ならぬ意欲を感じさせるのは、本人が言うように、ポジションが変わったことがやはり大きい。2ボランチの一角からインサイドハーフに一列上がったことで、より攻撃的なプレーを前面に押し出せるようになったのだ。
「インサイドハーフは走る距離も長くなりますし、奪いに行くスイッチを入れるポジション。僕はそういうのが得意なタイプなんで、間違いなく最適なポジションだと思っています。攻めに出た時にはクロスを上げ切るとか、ドリブルで仕掛けるとかそういう仕事も求められる。これからもっと攻撃的なプレーが出せるようになると思うので、すごく楽しみですね」と語気を強めた。
今後の試合日程がどうなるか分からないが、再開がズレればズレるほど超過密日程になるのは確か。場合によっては夏場に連戦が続くこともあり得る。そういう時こそ、タフでアグレッシブな湘南スタイルがより強みになってくる。齊藤はそこに自信をのぞかせる。
「(浮嶋敏)監督も『今後は緩やかな坂じゃなくて、急な坂になっていく』と言っていました。試合が詰まって、テンポよく公式戦をこなすことになると。きつい時期も来ると思うけど、そこでタフに戦えるのが僕らの強み。個人的にも1週間や2週間空くより、中2日、中3日で試合があった方がもしかしたらいいかも。プロになってからそこまでのハードスケジュールの経験はないけど、総力戦で戦えるチームなのは間違いない。湘南にとってはチャンスですね」
「五輪のために…」という選手は少ない
齊藤は現に、2019年5~6月のU-20ワールドカップでも中3~4日ペースで国際試合を消化している。この時も試合を重ねれば重ねるほどプレーが研ぎ澄まされていき、「野生のトラ」と影山雅永監督(現U-19日本代表監督)が称したような鋭さとガムシャラさが前面に出るようになった。
その驚異的な運動量は湘南にとっても武器だが、U-23日本代表にとっても心強い要素となる。99年生まれの齊藤の場合、東京五輪の開催が来年になっても、年齢制限には引っ掛からない。先行きの動向に関係なく、思い切って自分の力を発揮するだけだ。
「五輪のためにクラブで活躍したいって思ってる選手はたぶん少ないと思います。僕自身もそうで、今季は最初の5試合、10試合が湘南にとってすごく大事だと考えて臨んでいます。チームとして何試合勝てるのか、1試合1試合を大事にできるかというのが最大のテーマ。今、試合がないのはすごく残念ですけど、そこに向かってやれることをやるしかないと思います」
現時点でまだJ1は1試合しか消化していないが、湘南は開幕戦で浦和に2-3で逆転負けを喫した苦い過去がある。今季はJ1・J2ともに降格なしという特別ルールが設けられたため、J2に落ちる心配はないが、そこに甘んじているわけにはいかない。
昨年は曹貴裁前監督の問題が起きて苦境に瀕したが、同じ轍を踏むことは許されない。2018年のYBCルヴァンカップ王者としての意地をプライドを見せるべく、再開後は急浮上していくことが重要になる。それが齊藤の五輪出場にも直結する。そういう意味でも小柄なダイナモの一挙手一投足をしっかりとチェックしていくことが肝要だ。
(取材・文:元川悦子)
【了】