PSGに流れを与えたドルトムント戦略ミス
これは本当にチャンピオンズリーグの決勝ラウンドの試合なのだろうか…。まるで夏や冬の合宿中の練習試合のような雰囲気は、テレビの画面越しにも伝わってきた。3月11日、パリ・サンジェルマン対ボルシア・ドルトムントの一戦は、新型コロナウイルスの影響で無観客試合となった。
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2月に行われた1stレグでアウェイゴールを1点奪っていたとは言え、1-2とビハインドの状況で2ndレグを迎えたパリにとって、パルク・デ・プランスに詰め掛ける大観衆の後押しを欠いて試合に臨むことは、決して望まないことだったろう。
しかし観客のテンションという外部要因が一切なくなったことで、かえって両チームの力の差が純粋に浮き彫りになったのかもしれない。後押しにも重圧にもなるホームの雰囲気から解き放たれたパリの試合巧者ぶりが目立つ試合になった。
試合が始まると、ドルトムントは[5-4-1]の布陣で自陣に構え、パリがボールを保持する展開になった。1点リードしており、かつ無観客とは言えアウェイという状況を考えれば、ルシアン・ファブレ監督率いるチームは、確かに序盤から無理をする必要はない。
しかし、ボールを奪っても無理にカウンターに出ようとしないスタンスは、敵陣で奪われてピンチを招くことを避けたかったのかもしれないが、その中途半端なドルトムントの姿勢は、かえってパリに流れを与えることになってしまったようだ。28分にセットプレーの場面でネイマールにヘディングで先制を許すと、その後、ドルトムントは最後まで流れを掴むことができなかった。
エムレ・ジャンを退場に追いやったネイマールの挑発
失点してスコアは2-2と同点になったが、このままではアウェイゴールの差で敗退となるドルトムントは、少し前がかりになる。今度はパリが構えて、ドルトムントがボールを持つ場面もあったが、それでも持たされていると言った方が適切だっただろう。
そして、46分にはゲーゲンプレッシングでトルガン・アザールからボールを奪い返したフアン・ベルナトが、そのままゴール前に入って行き、右からのボールを点で合わせて追加点。スコアは3-2となった。
後半に入ると、引いて守るパリを、ドルトムントは崩すことができない。また、53分の場面のように、ネイマールからボールを奪って、エムレ・ジャンが前に繋ごうとしてもすぐに奪い返されるなど、やはり主導権を握ることができなかった。
70分台には、ユリアン・ブラントとジャンがミドルシュートを打っていったが、ボールを回している側が打つ遠目からのシュートは、やはり打っているというより打たされていると言った方が相応しいだろう。
89分にはネイマールに何か言われたのか、ジャンがブラジル代表のエースを手で倒してしまう。そしてレッドカードで退場。そのまま試合は終わり、2戦合計3-2でパリのベスト8進出が決まった。
無観客試合によってスタジアムの雰囲気に左右されることはなくなり、かえってチームの総合力が問われることになったようだ。その意味で、行く時と引く時の判断、ゲーゲンプレシングの徹底、そしてジャンを退場に追いやるネイマールの挑発など、パリの“巧さ”が目立ったCLのドルトムント戦だった。
(文:本田千尋)
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