モウリーニョを悩ませた相次ぐ離脱者
歴史が動く時には、得てして運も味方するものだ。
3月10日にチャンピオンズリーグ(CL)の決勝ラウンド1回戦の2ndレグを戦うRBライプツィヒに、さらに追い風が吹いた。ハリー・ケインとソン・フンミンという攻撃の要を欠き、ロンドンでの1stレグを落としたトッテナム・ホットスパーは、2ndレグを前にまた1人アタッカーを欠くことになった。
ステフェン・ベルフワインが7日のバーンリー戦で左足首を痛め、離脱することになったのである。
今冬の移籍市場で獲得した目玉のオランダ代表FWもいなくなったことで、ジョゼ・モウリーニョ監督は、前線にルーカス・モウラ、デレ・アリ、エリック・ラメラの3枚を並べた。より正確には、その3人を並べるしかなかった、と言えるだろう。
トッテナムの台所事情はあまりに苦しい。大事な一戦を前にベルフワインがいなくなってしまったのは、気まぐれな勝利の女神が唐突にそっぽを向いたようだった。
しかし、クラブ史上初のCLベスト8進出を狙うライプツィヒにとっては、どこかふてぶてしい褐色のウインガーの離脱は、ベルフワインには申し訳ないが、朗報だったに違いない。ただでさえ手負いの相手攻撃陣が、さらに手薄になるのだ。ベスト8進出の絶好のチャンスが降ってきたようなものである。
だからか、試合が始まるとライプツィヒの選手たちは、トップギアでトッテナムのゴールに向かった。1stレグの勝利で貯金した1点のリードはあったため焦らなくとも良さそうなものだったが、序盤はしばらく様子を見よう…といったところはなかった。強度の高い守備とボール奪取後の速攻という武器を存分に発揮して、とっとと好機をモノにしてしまおうとでもいうように、スパーズに食ってかかった。
畳み掛けるライプツィヒ
そして10分に先制する。コンラート・ライマーが右サイドを鋭く突破。マイナスの折り返しを、ティモ・ヴェルナーがシュート。DFにブロックされたボールを自ら拾ったドイツ代表FWは、マルセル・ザビツァーに渡す。オーストリア代表は、これをダイレクトでゴールに突き刺した。
この1点で2戦合計のスコアは2-0となり、勝負はほとんど決まったようなものだったが、ライプツィヒはプレーの強度を決して落とさない。中盤でハリー・ウィンクスやジオバニ・ロ・チェルソがボールを持てば、徹底的に潰した。イエローカードを貰うことすら嫌っていないようだった。ゴール前でもセンターバックのダヨ・ウパメカノが鉄壁の守備を見せる。
そして10分後には追加点を奪った。アンジェリーノの左サイドからのクロスを、またもザビツァーがニアに飛び込みヘディングで合わせる。2戦合計のスコアは3-0。開始20分で、勝負は決まったようなものだった。
ライプツィヒの選手たちにとっては、ルーカス、デレ・アリ、ラメラの3枚の攻撃陣は、さほど怖くなかっただろう。その3人のみならず、1対1の強さ、攻守の切り替えにおいて、ユリアン・ナーゲルスマン監督が率いる東独のクラブは、トッテナム全体を上回っていた。
そして87分という終盤に、エミル・フォルスベリが3点目を決めたことからも分かるように、ライプツィヒの選手たちは最後までテンションを落とさなかった。CLのベスト8に辿り着こうとする野心はむき出し。誰もがギラギラしていた。
そのまま試合は3-0で終了し、ライプツィヒはクラブ史上初のCL準々決勝進出を果たす。ことトッテナムとの2ndレグに限れば、ベルフワインの離脱という事実がトリガーとなって、歴史が動いたのである。
(文:本田千尋)
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