2失点完敗で公式戦2連敗
3日前に行われた第28節のワトフォード戦を0-3で落とし、今季プレミアリーグ初黒星を喫したリバプール。結果だけでなく内容面でも圧倒されていただけにこの敗戦は大きなダメージとなったに違いないが、そのショックをこの日に拭うことは叶わなかった。
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現地時間3日に行われたFAカップ5回戦、対チェルシー。敵地スタンフォード・ブリッジに乗り込んだリバプールは、0-2の完敗を喫し、これで公式戦2連敗という結果になった。
この日のリバプールのスタメンにはDFフィルジル・ファン・ダイク、FWサディオ・マネら何名かの主力組が名を連ねたが、その大半はサブ組、そしてDFネコ・ウィリアムズやMFカーティス・ジョーンズといった若手選手であった。その中には日本代表FWの南野拓実の名も。出場機会に決して恵まれているとは言えない選手たちが、どのようなパフォーマンスを見せるのかはこのゲームの大きな注目ポイントになった。
試合は、立ち上がりからリバプール、チェルシーともに攻守の切り替えを素早く行うなどスピーディーな展開に。球際の激しさも両チームともに申し分なく、バチバチとしたボールの奪い合いが繰り広げられた。
ただ、時間が経つにつれ徐々にリバプールが後手に回る。チェルシーの手数をかけないシンプルな縦への攻めを受け、幅、深さともに相手に取られる。チェルシーのプレスに対し最終ラインからのビルドアップも的確に封じられ、セカンドボールを回収するスピードでも相手を下回るなど、苦戦を強いられた。
そして、13分にはFWウィリアンのシュートをGKアドリアンがゴールへ弾いてしまい、早い時間に失点。スペイン人GKのセービングミスであることは確かだが、そもそもの始まりは自陣でMFファビーニョがボールロストしたところから。チェルシーのプレスにハマり、ミスを誘発された結果が生んだ失点であった。
まずは同点に追いつきたいリバプールだったが、その後もなかなか前線に効果的な縦パスが収まらない。また、チェルシーの中盤と最終ラインは非常にコンパクトな距離感を保っており、使えそうなスペース自体少なかったのは確かなのだが、自分たちのミスでチャンスを逸してしまう場面も多々あった。シュートを放ってもGKケパ・アリサバラガのセーブが得点を阻んだ。
後半に入っても攻撃の糸口を掴めないリバプールは、64分にMFロス・バークリーに単独突破を許し2失点目。その後も最終ラインで軽率なミスを犯し、FWペドロ・ロドリゲスに決定機を生み出されるなどなかなかリズムを掴めなかった。
その後ユルゲン・クロップ監督はたまらずFWロベルト・フィルミーノやFWモハメド・サラーといった選手を投入するものの、状況はあまり好転せず。チェルシーの縦に素早い攻撃を受け、全体のラインが下がり、弾き返してもセカンドボールの回収で後手に回り、再び守備に追いやられる。この日はこうした状況を多く作られてしまった。
結局、リバプールは一矢報いることもできず0-2で完敗。内容面でも、明らかにチェルシーの方が上回っていたと言えるだろう。
南野拓実のパフォーマンスは?
さて、この日先発入りした南野拓実だが、リバプール加入後初のフル出場を果たすことになった。後半途中にフィルミーノ、サラーといった選手が登場してもなお背番号18がベンチへ下がらなかったということは、クロップ監督から信頼を受けている、あるいは「もっと見たい」といった期待感のようなものがあったことは確かだ。
しかし、パフォーマンス自体はそんなに良かったとも思えないのが事実。データサイト『Who Scored』によるとこの日の南野はシュート数0本で決定的なパスも0本、パス成功率83%、ドリブル成功数1回という成績だったという。FWディボック・オリギの出来も良くなかったが、最前線の選手としてはやはり物足りない数字だ。
「リバプールの1トップ」と言えばフィルミーノが思い浮かぶ。この日1トップに入った南野も、ブラジル人FWを意識したような動きを見せた。何度か良い形でパスを引き出しマネに正確なスルーパスを供給するなど、魅せた場面もあったのは確かだ。
ただ、フィルミーノを意識するあまりに南野自身の良さは失われているようにも感じる。「周りを使おう」とする姿勢は良いが、その意識が強すぎるのか、前を向ける状態でボールを受けてもワンタッチで味方に捌いてしまうシーンもあった。ドリブルで相手DFを剥がす場面もほとんどなく、味方を使うばかりでなかなかテンポが上がらなかったのである。
南野の良さは味方を活かすことはもちろん、ボックス内に果敢に侵入してパスを引き出しチャンスに絡むということだ。日本代表の中でもそうした動きが冴え、ゴールを量産。前所属のザルツブルクでも、ゴール前での働きは非常に効果的であった。
しかし、今の南野にはそのような怖さは感じられない。フィルミーノを意識するのは良いが、彼と同じようなプレーを続けても彼を上回ることはできない。フィルミーノのプレーはフィルミーノにしかできないのだから。やはり南野は南野の特徴を引き出し、背番号9とは違ったスパイスを加えるしか、リバプールで生きる道はないだろう。
ただ、この日はチーム全体として攻撃に課題を見出したのは事実で、南野が良いポジショニングをしてもパスが入らなかったりと色々難しかったのは間違いない。南野自身も前線からの守備に追われる時間が多かった。
まだチームに合流して2ヶ月ということもあり、この日のパフォーマンスがすべてというわけでは決してない。今後もどこかで起用される機会はあるだろうが、目に見える結果を残す日を楽しみに待ちたい。
(文:小澤祐作)
【了】