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レアル・マドリード、バルセロナ制圧に意外な男達。クラシコという筋書きのないドラマの顛末

リーガエスパニョーラ第26節、レアル・マドリード対バルセロナが現地時間1日に行われ、2-0でレアルが勝利を収めた。サンティアゴ・ベルナベウで行われた伝統の一戦は、バルセロナが勝ち点差で2ポイント上回る中で迎えた。エル・クラシコで躍動したのは、カリム・ベンゼマやリオネル・メッシといった主力ではなく意外な伏兵たちだった。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ヴィニシウスの躍動とマルセロの意地

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【写真:Getty Images】

 今季リーグ戦1得点の悩める19歳・ヴィニシウス・ジュニオールが先制点を決め、居場所を失いかけていたマルセロが相手のエースを止める。さらに戦力外同然だったマリアーノ・ディアスがリーグ戦初出場で追加点を奪った。筋書きのないドラマとはよく言うが、この試合に関しては勝負の神様が筋書きを練りすぎたんじゃないかと思う。

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 スコアレスで迎えた71分、ヴィニシウスは左サイドを縦に抜けてトニ・クロースのスルーパスを引き出した。ドリブルでペナルティーエリアに侵入すると、角度のない位置から右足を振り抜く。カバーに入ったジェラール・ピケの足に当たったボールはゴールネットを揺らした。

 クロースがボールを持った時、周囲には3対3の状況ができていた。ヴィニシウスを見るべきは途中交代で入ったばかりのマーティン・ブライトワイトだったが、あまりにも簡単に置き去りにされてしまった。23日にバルサデビューを飾ったばかりのブライスワイトが失点に絡んでしまった。

 スコアが動いたこともあり、その後はオープンな展開となった。フレンキー・デヨングのスルーパスにリオネル・メッシが反応してDFラインの裏を取る。セルヒオ・ラモスが高い位置を取っていたことで空いたスペースを埋めて身体を寄せたのは、攻撃的サイドバックのマルセロだった。

 メッシがコントロールを乱して、ボールがGKティボー・クルトワの手中に収まった瞬間、31歳のブラジル人DFはベルナベウのゴール裏に向かって握りしめた右手を突き上げた。ケガもあって今季は出場機会が激減し、フェルラン・メンディにポジションを奪われたマルセロの意地が垣間見えたプレーだった。

“構想外”ディアスの逆襲

 レアルは疲労の色が見えていたイスコとフェデリコ・バルベルデを下げて、ルカ・モドリッチとルーカス・バスケスを投入して試合を締めくくる。後半アディショナルタイムに入ると、カリム・ベンゼマを下げてマリアーノ・ディアスをピッチに送り出した。

 ディアスが今季プレーしたのは、スーペルコパの2試合のみ。リーグ戦では昨年10月のマジョルカ戦のベンチに入っただけで、ほぼ構想外という存在だった。1-0というスコアと時間帯を考えれば、ディアスに与えられた役割は時計の針を進めることなのだが、失うものがない構想外のアタッカーは、セオリーとは反対のプレーを見せた。

 スローインに身体を反転してDFラインを突破する。そのままドリブルで侵入して角度のない位置から右足を振り抜くと、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの届かないコースへと飛んだボールはゴールへ吸い込まれた。

 投入からわずか1分、ディアスのファーストプレーだった。もしも嫌な形で奪われてしまえば、バルセロナに攻撃のチャンスを与えることになる。しかし、シンプルに“仕事”をこなしただけではチーム内の立場は変えられない。サッカーはチームスポーツだが、サッカー選手は個人事業主でもある。大舞台で逆襲に成功したディアスは、目頭を押さえてゴールの喜びをかみしめた。

立ちはだかったGKクルトワ

 一方のバルセロナは、引き分けたナポリ戦からの嫌な流れを止めることができなかった。リーグ戦では11シーズンで8度タイトルを獲得してきたが、今季はスコアレスに終わったカンプノウでの試合に続いて、2戦続けてエル・クラシコで得点を奪うことができなかった。

 キケ・セティエン監督は、ケガから復帰したジョルディ・アルバを先発で起用し、それ以外はナポリ戦と同じ10人をピッチに送り出している。中盤には右からアルトゥーロ・ビダル、アルトゥール、セルヒオ・ブスケッツ、デヨングが並んだ。

 前半のバルセロナは、相手のプレスをかわしながらボールを保持した。アルバはバルベルデ、デヨングはカルバハルがマンマークで対応されたが、フリーのウンティティやGKのテア・シュテーゲンをうまく使いながらアタッキングサードへと侵入した。

 チャンスは作るがゴールは遠かった。アントワーヌ・グリーズマンのシュートは枠を捉えることができず、メッシのシュートはクルトワの腕に収まった。左サイドのグリーズマンからのスルーパスに反応して中央を突破したアルトゥールと、ブスケッツのロブパスに抜けたメッシのシュートはクルトワに阻まれた。

 勝ち点3を取りにいった指揮官の交代策は不発に終わった。ビダルに代わって69分に入ったブライスワイトは、ファーストプレーでスルーパスを引き出して右サイドを突破。追いすがるマルセロを振り切ってGKと1対1になったが、シュートはクルトワのビッグセーブに阻まれた。直後の失点シーンに絡んでしまった後は存在感を失ってしまった。

伝統の一戦の重み

 2-0で勝利したレアルは、バルセロナを1ポイント上回って再び首位に躍り出た。エル・クラシコに戦術も内容も関係ない。重要なのは結果だけで、レアルには勝ち点3が残った。レバンテ戦、マンチェスター・シティ戦と続いた連敗を払拭する会心の勝利となった。

 レアルがハーフタイムに陣形を修正した形跡は見られなかったが、バルベルデを筆頭に中盤のプレッシャーは確実に高まっている。メッシにはダブルチームに留まらず、3人、4人と群がってゴールから遠い位置へと追いやった。結果として試合の主導権は後半、レアルへと移っていた。

 ヴィニシウスは今季ここまで公式戦でわずか3得点と苦しんでいた。チームもマルコ・アセンシオの長期離脱に加えて、ケガから復帰したばかりのエデン・アザールが再び離脱を強いられるなど、FWは厳しいやり繰りを強いられている。そんな状況で生まれた19歳233日のクラシコ初ゴールは、メッシの記録(19歳259日)を上回り、今世紀では最年少記録となった。

 振り返れば、メッシのクラシコ初得点は自身初のハットトリックだった。このシーズンで14得点を挙げたメッシがその後、スター街道へ突き進んだことは言うまでもない。その最年少記録を塗り替えたヴィニシウスも、そのポテンシャルが一気に開花する気がする。記録よりも記憶に残る選手というのはいるが、クラシコの記録は記憶にも残る。伝統の一戦には、ただの1試合にはない特別な作用があるのかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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