フットボールチャンネル

自滅したレアル・マドリードに勝負強さは見る影もない。マンCを逆転勝利に導いたジェズスの1人2役とは?【欧州CL】

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16、レアル・マドリード対マンチェスター・シティが現地時間26日に行われ、1-2でシティが勝利を収めた。60分に先制に成功するまではゲームを有利に進めていたレアルが逆転負けを喫した。ラウンド16屈指の好ゲームとなった試合の様相の変化を追いながら、レアルが自滅した原因に迫っていく。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

機能していたレアル・マドリード

0227RealMadrid
【写真:Getty Images】

 キックオフからゲームを有利に進めていたのは、レアル・マドリードだったと思う。前線から高い守備強度でマンチェスター・シティのビルドアップを封じ、前半はボール保持率でも上回っている。

【今シーズンのレアル・マドリーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 レアルはショートカウンターからチャンスをいくつか作っている。結果的に先制点の場面も、ロドリとニコラ・オタメンディのパス交換をルカ・モドリッチが奪ったところから生まれた。ヴィニシウス・ジュニオールから右サイドを駆け上がるイスコにボールが渡り、ゴールへと流し込んでいる。

 この試合ではインサイドハーフに、トニ・クロースではなくモドリッチとフェデリコ・バルベルデが起用されている。データサイト『Who Scored』によれば、モドリッチがチーム最多の3つのインターセプトを記録すれば、バルベルデは2つのタックルでボールを奪っている。両者の高い守備強度がレアルを支えた。

 しかし、48分にバルベルデが、54分にはモドリッチがイエローカードをもらってしまった。どちらも相手のカウンターにつながる局面で致し方ない部分はあったが、レアルは機能していた矛を自らしまう選択をした。

 先制したレアルは自陣にブロックを敷きスペースを消したが、ちぐはぐさが垣間見えた。71分にはボールを奪ったところからセルヒオ・ラモスが攻め上がっている。結果的にシュートにつながったが、カウンターのリスクを考えるのであれば攻め上がる必要はなかっただろう。

 ジネディーヌ・ジダン監督はガレス・ベイルを失点する前に投入している。左サイドで献身的に守り、個の打開力でカウンターにつなげていたヴィニシウスを下げた。結果論だが、カウンターから点を取りたいのならベイルだが、守り切りたいならルーカス・バスケスではないだろうか。

2役を担ったジェズス

 ジョゼップ・グアルディオラは73分にベルナルド・シウバを下げてラヒーム・スターリングを投入。シティは、ここから反撃に成功した。

 同点ゴールの場面、レアルは完全に自陣に引いている。イルカイ・ギュンドアンの浮き球のパスがスターリングに渡って、センターバックのラファエル・ヴァランが釣りだされる。スターリングからハーフスペースでパスを受けたデブルイネが縦に突破。持ち直して右足で浮き球のパスをゴール前に送ると、セルヒオ・ラモスと競り合ったジェズスがヘディングでゴールに押し込んだ。

 同点に追いつかれたレアルは成す術なく逆転を許した。敵陣でロドリ、デブルイネがフリーで持てるほどオープンな状態。ボールが左サイドのスターリングに渡ると、ドリブルでPAに侵入したところをダニエル・カルバハルに倒される。デブルイネのPKはGKティボー・クルトワの逆をとり、ゴールネットを揺らした。

 サイドチェンジのロングボールを使って左右に大きく揺さぶりながらチャンスを窺うレアルに対して、シティは4-4-2で中央のスペースをしっかり埋めた。この4-4-2の形は少し特殊で、左サイドハーフにガブリエウ・ジェズスが入り、2トップにはケビン・デブルイネとベルナルド・シウバが入っている。攻撃時はジェズスが真ん中に侵入する変則的な布陣をシティは用いていた。

 左サイドハーフの守備と最前線の攻撃と、2つのタスクを与えられたジェズスの負担はかなり大きかっただろう。しかし、同点弾を決めるだけでなく、逆転後には相手のバックパスをインターセプトしてセルヒオ・ラモスのファールを誘発。セルヒオ・ラモスは一発退場となり、交代枠を使い切ったレアルの息の根を止めている。決勝ゴールを挙げたレスター戦に続いて、殊勲の活躍を見せた。

不相応な連続失点

 ボールは1つしかないので、両チームのボール保持率が100%を超えることはないし、時間が90分を超えることはない。レアルがボールを持てば、シティはボールを追うことになる。

 ジダンが初めてCLを獲った2015/16シーズンの決勝で、レアルはアトレティコ・マドリードのカウンターを封じるために敢えてボールを持たせる戦いを選択している。この試合でジダンはその反対の戦略を採用した。ボール保持を基調とするシティに対してできるだけボールを持たせない戦いを選んだ。

 レアルはボール保持もカウンターもトランジションも最強ではないが、2、3番目にはなれる。相手のストロングポイントを消す戦いに持ち込むことができれば、総合力で上回る。長丁場のリーグ戦では難しい戦略だが、一発勝負のCLでは威力を発揮する。ジダンはそうして3度のCLを獲ってきた。

 先制するまでのレアルはよかった。圧倒していたわけではないが、相手に優っていた。しかし、先制してからの戦い方を間違った。より正確に表現すればやろうとしていたこととピッチ内で起きていたことにギャップが生まれていた。ギャップは集中力の欠如を招き、常勝軍団に不相応な連続失点につながった。勝負強さは見る影もなかった。

 直近のレバンテ戦では、残り15分を切ったところで前掛かりになったDFラインの裏を突かれて0-1で敗れた。リーガでは首位の座をバルセロナに明け渡し、CLではホームで痛恨の逆転負け。チームは連敗のショックを引きずりながらバルセロナとのエル・クラシコに臨むことになった。

 シティのホーム、エティハド・スタジアムで行われる2ndレグを、レアルはセルヒオ・ラモス抜きで戦わなければいけない。神がかり的な勝負強さを見せる主将を欠いて戦うレアルにとっては厳しい戦いになるだろう。

(文:加藤健一)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!