エバートン撃破に成功
今季のエバートンとアーセナルは不思議な巡り合わせにあった。アーセナルは昨年12月20日にミケル・アルテタの監督就任を発表し、翌日にはエバートンがカルロ・アンチェロッティの監督就任を発表している。21日に行われたエバートン対アーセナルを両者はスタンドから観戦していた。
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両者はともに翌節から指揮を執っている。2勝5分1敗と勝ちきれない試合が続いたアーセナルはなかなか順位を上げられなかったのに対し、5勝2分1敗と白星を積み重ねたエバートンは、15位から9位へとジャンプアップした。
アーセナルは3日前にアウェイでオリンピアコスと対戦したばかりだった。20時キックオフだった試合の後はアテネに泊まり、中2日を経て14時キックオフのエバートン戦に臨んでいる。難しい条件の中でアーセナルは合計5ゴールが生まれた打ち合いを制し、公式戦3連勝を果たした。
開始1分も経たないうちにセットプレーから先制されたアーセナルは、セアド・コラシナツが負傷退場するというアクシデントに見舞われた。しかし、コラシナツに代わって投入されたブカヨ・サカのクロスからエディー・ヌケティアがゴールを決めて27分に追いつくと、33分にはダビド・ルイスのスルーパスに反応したピエール=エメリク・オーバメヤンが、DFラインを抜け出してゴールネットを揺らした。
リードを奪ったアーセナルは前半アディショナルタイム、CKからリシャルリソンに押し込まれて同点に追いつかれてしまう。しかし、46分に右サイドからニコラ・ペペが上げたクロスを、オーバメヤンがヘディングでゴールへ押し込んだ。再びリードを奪ったアーセナルはこれを守り切り、エバートン撃破に成功した。
改善された守備
殊勲の2得点を決めたオーバメヤンは、得点ランキングでもジェイミー・ヴァーディーと並んで得点ランキングトップに躍り出た。11月からキャプテンマークを巻くガボン代表FWには移籍の噂が耐えないが、その活躍にはアルテタも高い評価を与えている。
2得点以上に印象的だったのは、オーバメヤンの守備における貢献度の高さ。データサイト『Who Scored』によれば、この日のオーバメヤンはチーム最多に並ぶ3つのタックルに成功している。チームへの貢献は得点だけではなかった。
チーム全体として見ても、ボールを奪われたときのトランジションは日を追うごとに質が高まっている。2列目の人選はウナイ・エメリ時代と変わっていないのだが、守備に対する意識は格段に高まっている。
アルテタははじめ、オーバメヤンに守備ができるのか疑問を持っていたようだ。しかし、フィジカル的にそれが可能とわかると、例外なくエースにも守備のタスクを課した。オーバメヤンだけでなく、エジルもペペも高い守備への意識を持ってプレーしている。守備の改善は間違いなくアルテタの手腕と言えるだろう。
アーセナルは相手の倍近いシュートを浴びている。しかし、枠内に飛ばせなければゴールチャンスは生まれない。リードする時間が長かったアーセナルが4本だったのに対してエバートンは5本とほとんど変わらなかった。
セットプレーとカウンターからは決定機を作られたが、自陣にブロックを引いた状態ではしっかり守れていた。両サイドのスペースをペペとオーバメヤンがサボらずに埋めていたことで、センターバックがつり出されることなく守ることができた。
アルテタに課されるミッション
試合終了を告げるホイッスルが鳴った瞬間、アルテタは拳を握り締めて両腕を上げた。選手時代に6年半の時間を過ごしたエバートンから掴んだ勝利は、感慨深いものがあるはずだ。
27日のオリンピアコス戦でELラウンド16進出を決めれば、3月は代表ウィークまでの22日間で6試合を戦うことになる。この試合で負傷したコラシナツが離脱となれば、サイドバックは再びサカとエクトル・ベジェリンしかいない状況となってしまう。
4位チェルシーとの勝ち点差は7ポイントのままだが、アーセナルは9位に順位を上げた。チームの調子は上向きで、大逆転のトップ4入りの可能性を感じさせ始めている。
しかし、アルテタにのしかかるミッションは限りなく大きく、一筋縄ではいかないだろう。ビルドアップやネガティブトランジション、前線の選手のディフェンスといったあたりは、アルテタが来てから大きく改善している。一方で、不用意なボールロストが減っていなければ、被カウンターの対応もまだ拙い。拮抗した試合ではそういったプレーが致命傷になりかねない。
4月に予定されているウォルバーハンプトン、レスター、トッテナムとの3連戦が勝負を分けることになるだろう。それまでにアルテタはアーセナルのウィークポイントを埋めなければならない。
(文:加藤健一)
【了】