無力化されたデブルイネ
2位と3位の上位対決はその順位に違わず拮抗した試合が繰り広げられた。投入直後のガブリエウ・ジェズスが80分にゴールを決めるまでは、どちらが勝ち点3を得てもおかしくない展開だった。
【今シーズンのシティの試合はDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
リーグ最多の得点数を誇るマンチェスター・シティに対して、ホームのレスターは3-5-2のフォーメーションを採用した。相手のビルドアップに対しては2トップがパスコースを切りながらアプローチし、ウイングバックが高い位置まで寄せる。相手が出しどころに困ったところでボールを奪えば、素早く2トップに当ててカウンターへとつなげた。
シティもチャンスがないわけではなかったが、そのほとんどがショートカウンターからだった。オープンな展開になった後半はチャンスが増えたが、相手に引かれた状態を崩すことはほとんどできなかった。
レスターは敵陣では中盤3人とウイングバックが高い位置までプレッシャーをかけるが、自陣に侵入されると素早く帰陣して5-3-2のブロックを敷いた。3人のMFはスライドせずに中央のゾーンを埋める。ワイドに張る選手に対してはウイングバックが対応し、DFラインは4枚が並んだ。
レスターが敷いたゾーンディフェンスの最大の被害者はデブルイネだった。データサイト『Who Scored』によればパス成功率はチームワーストの73.7%、クロスは6本中1本しか通らず、チーム最多となる6つのボールロストを記録している。
中盤の「3」の1人が常にデブルイネを監視し、クロスを上げた先には3人の屈強なセンターバックが待ち構えている。今季もアシストを量産してきたデブルイネは、まさに八方塞がりの状態に陥っていた。
「PKじゃないなんて…」
拮抗した前半は0-0で終えた。ボール保持率こそシティが大きく上回ったが、チャンスの数はほぼ変わらない。7本のシュートを放ったシティは2本を枠に飛ばしたのに対し、レスターは6本中3本を枠内へ飛ばした。
レスターは後半開始と同時にハービー・バーンズを投入。下がったケレチ・イヘアナチョは39分、クロスを競り合った際にGKエデルソンと衝突していた。「PKじゃないなんて信じられない」とブレンダン・ロジャースが試合後にコメントしたが、この危険なプレーにPKは与えられなかった。
レスターはバーンズを中心に右サイドを崩してチャンスを作るが、フィニッシュまで持ち込むことはできない。対するシティはイルカイ・ギュンドアンをロドリの横に並べて4-2-3-1へと配置を変更した。
布陣を変えたシティはここから立て続けにチャンスを作っていく。まずは60分、CKのこぼれ球を拾ったギュンドアンがミドルシュートを放つと、ブロックに入ったデニス・プラートの腕に当たった。
ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の助言によりハンドの反則が認められ、シティにPKが与えられた。アグエロは左側へ低いボールを蹴ったがコースが甘く、GKキャスパー・シュマイケルが横っ飛びでこれを防いだ。
続く63分にもマフレズのスルーパスに抜け出したアグエロがシュートを打つが、これもシュマイケルに防がれた。攻勢を強めるシティに対して、レスターの守護神が最後の砦として立ちふさがった。
判定に泣いたレスター
レスターからしてみれば、判定に泣いた試合となった。ジェームズ・マディソンが蹴った30分のFKは、壁に入ったデブルイネの上げた腕に当たったが、ハンドは認められず。反対に60分のシーンではレスター側にハンドの反則が取られているだけに、試合後の指揮官も納得できないというコメントを残している。
イヘアナチョとエデルソンが衝突した39分のシーンでも、映像を見る限りはエデルソンがボールに触れていないようにも見えた。PKかどうかはVARのチェック対象となるはずだが、エデルソンが触れたとしてCKの判定となっている。
「いつもより長い時間ボールを追い続けたので、ゲームの終盤に向かって疲れが出てきた」とレスターの指揮官は話す。80分の失点はその疲れが影響したか、ここまでそつなくこなしていた対応がルーズになってしまった。
シティの自陣深くのスローインからプレーは始まった。自陣右サイドでボールを受けたリヤド・マフレズは相手の間をするすると抜けてゴール前まで侵入した。左センターバックのクリスティアン・フクスは対応が中途半端になり、フクスが空けたスペースにジェズスが潜り込む。マフレズからパスを受けたジェズスは右足でゴールを揺らした。
試合終盤に失点したレスターに、反撃の体力は残っていなかった。マッティ・ジェームズがおよそ2年ぶりにプレミアリーグのピッチに立ち、アジョゼ・ペレスを投入して攻撃の枚数を増やす。しかし、前半はカウンターにつながっていたトランジションが精度を欠き、フィニッシュになかなか持ち込むことができなかった。
(文:加藤健一)
【了】