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アタランタ、衝撃な得点力の理由は? バレンシアを凌駕、その存在こそが武器となる男【欧州CL】

チャンピオンズリーグ(CL)・ラウンド16の1stレグ、アタランタ対バレンシアが現地時間19日に行われ、4-1でホームチームが勝利している。イタリア・セリエAでも屈指の攻撃力を誇るアタランタだが、それはこの欧州最高峰の舞台でも発揮された。その得点力を加速させたのはやはりあの男であった。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

前半から怖さを発揮したアタランタ

アタランタ
【写真:Getty Images】

 チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ3連敗を喫した時には、誰も決勝トーナメント進出を果たせるとは思っていなかっただろう。しかし、「プロビンチャの雄」であるアタランタはその予想を見事に裏切り、ベスト16入りを果たした。この快挙とも呼べる結末は、「奇跡」として世界中に衝撃を与えた。

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 しかし、それは「奇跡」ではなく「必然」だったのではないか。そう思わされたのが、現地時間19日に行われたCL・ラウンド16の1stレグ、バレンシア戦。アタランタはホームに乗り込んできたスペインの古豪に対し、4-1と大勝を収めたのである。

 普段とホームスタジアムは違えど、そのスタイルは普段とまったく変わらなかった。3-4-1-2のシステムで挑んだアタランタは、前線のFWヨシップ・イリチッチとFWアレハンドロ・ゴメスを中心とした攻めで立ち上がりからバレンシアを押し込む。一度縦にボールが入ると、その後ろから次々と選手が飛び出し、厚みのあるオフェンスで崩しにかかった。

 この日スタメン入りを果たす予定だったDFベラト・ジムシティがウォーミングアップ中に負傷するといったアクシデントがあったものの、代わりに先発したDFマッティア・カルダーラも集中して試合に挑んだ。守備陣はバレンシアにマンマークで対応し、高い位置から動きを制御。4-4-2を採用した相手に左右へ揺さぶられることはあったが、運動量豊富なアタランタは素早い対応を見せ、隙を与えなかった。

 そして、立ち上がりから攻守両面でバレンシアを上回ったアタランタは、16分にMFハンス・ハテブールが先制ゴールを奪取。攻めて攻めて攻め切るスタイルの怖さが、さっそく結果として表れた。

 バレンシアはアタランタの3バックに対し2トップ+もう一枚でビルドアップの阻止にかかったが、それより後ろのスペースでホームチームの選手をほとんど捕まえられなかった。前にどんどん飛び出してくるアタランタに対し最終ラインはたまらず後ろへズルズルと下がり、それに伴いカウンターの開始位置も深くなる。アタランタの持ち味にまんまと飲み込まれた形だ。もちろん何度かチャンスもあったのだが、それをゴールに結びつけることはできず、なかなかリズムを掴めなかった。

 そうこうしているうちに、アタランタに追加点が生まれる。42分、MFマリオ・パシャリッチのパスをペナルティエリア手前中央で受けたイリチッチが相手を身体でブロックしながら右足でシュート。これがゴールネットに突き刺さった。

終盤は苦戦も耐えきって勝利

 前半終了して2-0。クラブ史上初のCLベスト8入りを目指すアタランタからすれば、申し分ない45分間だった。前半のスタッツは支配率49%で、シュート数は7本。そのうちの3本を枠内に飛ばしており、うち2本をゴールに結びつけた。決定力の高さも、特筆すべき強みと言えよう。

 そして迎えた後半も、アタランタの勢いはまったく落ちなかった。57分にはMFレモ・フロイラーが右足を振り抜き、3点目。さらにその5分後には右サイドを駆け抜けたハテブールが4点目を挙げ、バレンシアを一気に突き放したのだ。敵将のアルベルト・セラーデス監督もさすがにダメージが大きかったのか、ただ茫然とピッチを眺めるしかなかった。

 しかし64分、なかなか調子の上がらなかったFWゴンサロ・ゲデスを下げMFデニス・チェリシェフを投入してから流れは変わる。バレンシアの攻撃が加速し、アタランタを崩せるようになって来たのだ。

 66分には、相手のパスミスを突いて途中出場のチェリシェフがゴールネットを揺らし1点を返した。こうなると勢いはバレンシアに傾く。アタランタは耐えることを余儀なくされたのだ。

 疲労も溜まってくる中で、バレンシアにピッチを幅広く使った攻めを繰り出されるとさすがにキツかった。ウィングバックの裏、つまりセンターバックの脇のエリアを使われる回数も増え、そこから低いクロスを上げられるなど、危険な場面をいくつか作られたのだ。疲労+3点のリードを得ている状態で少し集中力が失われたのか、軽率なミスも散見される。GKピエルルイジ・ゴッリーニのファインセーブがなければ、複数失点をしていてもおかしくはなかった。

 それでも、アタランタは最後まで粘り強さを見せ、バレンシアを撃破。アウェイゴール一つを奪われたが、それでも結果は4-1と申し分ない試合を見せた。ベスト8入りへ王手をかけたと言えるだろう。

“何でも屋”A・ゴメスの存在

アレハンドロ・ゴメス
【写真:Getty Images】

 自慢の攻撃力を欧州最高峰の舞台でも発揮したアタランタ。2ゴールを挙げたハテブール、強さと巧さを見せたイリチッチ、随所で気を利かせたフロイラー…。11人全員がおおむね高パフォーマンスを見せたと言えるだろう。

 だが、その中でこの男の存在感は別格だったのではないか。キャプテンマークを巻いて出場したFWアレハンドロ・ゴメスだ。

 組み立てから崩し、フィニッシュと攻撃面で多くのタスクをこなすことができる同選手はこの日、2トップの一角で先発入りを果たしたが、試合の中では主に左サイドに流れてプレーした。こうすることでDFロビン・ゴゼンス、パシャリッチらと3人で攻撃を組み立て、サイドで数的優位な状況を生み出すことができたのである。A・ゴメスを的確に使えたのは、アタランタにとって大きかったはずだ。

 そしてボールを受ければドリブルやパスで魅せる。細かなタッチを駆使したドリブルは止めるのが非常に困難で、足を出した瞬間にボールをグッと前に押し出すことで簡単に奪われることはなかった。また、侵入するコースも絶妙で、いつも「パスも出せるしそのまま行くこともできるし…」といった幅広い選択肢を持つことができる。一人で攻撃のバリエーションを多数持つことができれば、その分相手も対応が難しくなる。派手なプレーではないが、よく見ると相手にダメージを与えている。それがパブ・ゴメスだ。

 そして、この日は得点シーンにもよく絡んだ。先制の場面では細かなタッチで相手にタイミングを掴めさせず、クロスからハテブールの得点を演出。3点目のシーンではオフ・ザ・ボールの動きでDFムクタール・ディアカビの重心を下げさせ、味方にシュートコースを供給。フロイラーのミドルシュートに繋がった。パス成功率88%、ドリブル成功数2回、アシスト1つとデータでも良い数字を残せている。

 縦にボールが入った際のスプリント、ボールを持った際の絶妙なセンス、そして前線からの守備も怠らない…。A・ゴメスはまさに前線の何でも屋だ。バレンシアはこの男を最後まで捕まえきれなかったが、それも敗因の一つと言えるかもしれない。

 メスタージャで行われる2ndレグでも、この男の働きは重要となるだろう。キャプテンとともにクラブが新たな歴史の1ページを刻む日も近いのかもしれない。

(文:小澤祐作)

【了】

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