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Jリーグ 5年前

ガンバ大阪・昌子源は日本とフランスのハイブリッドに。「優勝できなければ何位でも一緒」【この男、Jリーグにあり/後編】

2020年シーズンの明治安田生命J1リーグが開幕は21日に開幕する。1年間の海外挑戦を終えた昌子源は、ジュニアユース時代を過ごしたガンバ大阪の一員としてプレーすることとなった。鹿島アントラーズやトゥールーズでの経験値を糧にしながら、「ガンバの昌子」は不退転の決意を持って新シーズンへと挑む。(取材・文:藤江直人)

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Kenichi Kato

「中学時代は苦い思い出しかない」

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【写真:加藤健一】

(前編はこちら)

 新天地を選ぶ交渉では、いまも恩義を忘れていない古巣アントラーズへの復帰を視野に入れた時期もあった。しかし、移籍会見で「タイミングとかがいろいろとあって」と明かしたように、アントラーズはリオ五輪代表候補のDF奈良竜樹をすでに川崎フロンターレから獲得していた。

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 課題だったセンターバックの補強を終えたばかりか、昌子を含めた歴代のディフェンスリーダーが背負ってきた「3番」が奈良には託されていた。一方で奈良の争奪戦でアントラーズに屈し、センターバックを補強できないジレンマを抱えたまま始動していたのがガンバだった。

 偶然にも「3番」が空き番となっていたガンバは、兵庫県神戸市出身の昌子が中学年代のジュニアユースに、フォワードとして所属した古巣でもある。しかも、同じ1992年生まれの怪童・宇佐美貴史に、ジュニアユースに加入した直後から天賦の才の差を何度も、これでもかと見せつけられた。

「中学時代は苦い思い出しかないというか。何度も挫折したし、一時期サッカーから離れたきっかけも言うたらガンバでの挫折が原因やったので。そういう自分がプロとしてガンバへ帰ってくるところに縁というか、運命を感じずにはいられないですよね」

 成長期を迎える前で身長も低かった昌子は、ひざを怪我したこともあって練習を休みがちになり、中学3年生になるとガンバを退団してしまう。両親を含めた周囲の配慮もあって進んだ米子北高でサッカーを続け、2年生に進級する直前に命じられたセンターバックへの転向がプロへの門戸を開いた。

「顔と名前とオーラで守れ」

「ガンバの昌子源になりましたけど、僕に対するイメージはおそらく鹿島の昌子だと思うし、正直、僕もそれを変えるつもりはありません。鹿島の昌子として見せていたプレーを、そのままガンバのユニフォームを着て出せば自然とガンバの昌子になると思っているので」

 ロシアワールドカップで西野ジャパンの最終ラインを担うなど、一時は日本代表のレギュラーまで射止めさせる源泉となったアントラーズでの日々で伝授されたイズム、秋田豊さんや岩政大樹さんといった歴代のセンターバックから受け継いだ魂はいまも昌子の身体に脈打っている。

「鹿島ではよく『顔と名前とオーラで守れ』と言われてきました。顔と名前、オーラって、言うたら周囲に実力を認めさせている、ということじゃないですか。鹿島時代にできていたかどうかは別にして、それをもう一度ガンバでも、敵やったらやりづらいと、味方にやったら心強いと思わせて初めてできることなので。やるからにはJリーグで一番いいセンターバックと呼ばれたいですし、日本でやったこととフランスでやったことを両立させるというか、ハイブリットにして自分のなかへ取り入れていけば、よりいい選手になれるんじゃないかと思っています」

「優勝できなければ2位でも何位でも一緒」

 ガンバ入りを決断する前に、アントラーズ時代に畏敬の念を抱き続けた小笠原満男さんにも相談している。2018シーズン限りで引退したレジェンドは、アントラーズ残留かトゥールーズ移籍かで迷った昌子へ、意を決して「お前の力で勝ち取ったオファーじゃないか」と檄を飛ばした一人だった。

 小笠原さんと交わした会話の中身は、もちろん明かせない。それでも恩人へしっかりと筋を通し、フランスへ旅立つときと同じく「背中を押していただきました」と笑顔を浮かべる昌子は、不退転の決意を貫きながら、まずはメディカルスタッフとの共同作業で右足首の完治に全力を注ぐ。

「鹿島、鹿島と言ったらガンバにも、逆に鹿島にも失礼だと思うので。これからはガンバのために身体を投げ出すだけですし、プレーはもちろんのこと、優勝する雰囲気みたいなものを僕からも発信していきたい」

「タイトル獲得の手助けになるよりも、自分が引っ張っていく覚悟で来た。ガンバがタイトルから離れて4シーズンが過ぎたので、今年は優勝できなければ2位でも何位でも一緒だと思っている。タイトルを表すユニフォームの胸の星が9つなので、自分が入った年に10にできるように。10と言わず11、12と増やせるようにしていきたい」

ガンバの最終ライン

 ガンバを代表してキックオフカンファレンスに参加した14日の時点で、全体練習にはまだ合流できていない。昨シーズンの王者、横浜F・マリノスのホーム、日産スタジアムへ乗り込む23日の開幕戦には間に合わないかもしれない。それでも、長丁場のJ1戦線を見すえる昌子に焦りはない。

 最前線には昨シーズンの終盤からストライカーに徹し、出場6試合で6ゴールと無双ぶりを見せつけた宇佐美が君臨する。ジュニアユース時代の昌子に「逆立ちしても勝てん」と言わしめた異能ぶりが、さらに研ぎ澄まされていく一方で、3バックの一角が固定されない状況をガンバは抱えている。

 菅沼駿哉や髙尾瑠、ジュビロ磐田から加入した新里亮との争いに割って入る昌子が、そのまま右ストッパーを射止めるのか。あるいはキャプテンの三浦弦太、韓国代表のキム・ヨングォンとの新たな組み合わせのもと、最終ラインにポジティブな化学反応を起こす役割をも担うのか。新天地をパワーアップさせる光景を思い描きながら昌子はトレーニングの負荷をあげ、復活への手応えを深めていく。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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