最下位を相手に試合は拮抗
プレミアリーグ優勝をほぼ手中に収めたチームと、最下位に沈むチームの対戦とは思えないような拮抗した戦いが、キャロウ・ロードで繰り広げられた。
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前回対戦はアンフィールドで行われた開幕節だった。相手のオウンゴールで先制したリバプールは前半だけで4得点をあげて、試合の大勢を決めた。最終的に4-1のスコアで勝利したリバプールは、その後も勝ち続けて首位を独走している。
この試合で大敗したノーリッジはマンチェスター・シティから白星を挙げるなど、良いパフォーマンスを見せる試合もあった。しかし、勝ちきれない試合も多く、残留圏の17位との勝ち点差は7ポイントという状況に置かれている。
リバプールは2戦連続ゴール中のアレックス・オックスレイド=チェンバレンを左ウイングで起用した。中盤には右からナビ・ケイタ、ジョーダン・ヘンダーソン、ジョルジニオ・ワイナルドゥムを並べ、ケガから復帰したジェームズ・ミルナーとサディオ・マネはベンチから出場機会を窺った。
試合は両チームとも無得点のまま前半を終えた。61.4%のボール保持率を記録したリバプールは敵陣でプレーし続けたが、シュート9本のうち枠内に飛んだのは1本のみ。オックスレイド=チェンバレンが放ったその1本も、力なくGKティム・クルルの腕の中に収まった。
マネの投入で流れが一変
前半に9本のシュートを放ちながらも、アタッキングサードでの迫力は欠いていた。中13日という間隔が空き、選手たちには約1週間のオフが与えられた。休養十分の選手たちの動きは決して悪くなかったが、決定機をなかなか作ることができなかった。16連勝中のリバプールだったが、連勝ストップ最大のピンチを迎えた。
しかし、60分を境に状況は変化する。ユルゲン・クロップ監督はワイナルドゥムとオックスレイド=チェンバレンを下げ、ファビーニョとマネを投入した。
左ウイングに入ったマネは、頻繁にタッチライン際に開いた。すると、左サイドバックのアンドリュー・ロバートソンは果敢にインナーラップでマネを追い越していく。ノーリッジはサイドバックとサイドハーフがマークの受け渡しに苦労し、混乱が生まれていた。
そういったプレーとは対照的に、ゴールシーンではマネが中央で仕事をした。78分、センターサークル付近からヘンダーソンがゴール前にロブパスを送る。DFと競り合ったマネはこれをトラップし、素早く左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。まさに変幻自在の働きぶりだった。
ロールチェンジ
リバプールの攻撃はめまぐるしくロールチェンジしていく。攻撃時における役割の交換が、相手のディフェンスを崩すカギになっている。たとえばサイドの局面では、タッチライン際に開く、ニアゾーンにポジションをとる、少し下がったハーフスペースでボールを捌くという3つのポジションがある。
ヘンダーソンは1つ目と3つ目、モハメド・サラーは1つ目と2つ目、ロベルト・フィルミーノは2つ目と3つ目、トレント・アレクサンダー=アーノルドは1つ目と3つ目でプレーすることが多い。このように、複数の役割を流動的に交換することで、相手のギャップを生み出している。
しかし、この試合では両サイドバックが常にタッチライン際に張り付き、内のポジションをとる場面は少なかった。指揮官も試合後に「ポジショニングは本来あるべきものとまったく異なっていた」とコメントしている。ノーリッジからしてみれば、サイドバックとサイドハーフが帰陣してスペースを消してしまえば、マンマークで守りやすい状況だった。
もちろん、ピッチの縦方向に吹いていた強い風の影響はあっただろう。いつもは相手を翻弄していたサイドチェンジのロングパスは、自然の力によって封じられていた。
左サイドはマネがタッチラン際に張ることでロバートソンがうちのポジションをとるシーンが増えている。右サイドも、ヘンダーソンがインサイドハーフのポジションへ移動したことでサイドへ張るシーンが増え、アレクサンダー=アーノルドが内にもポジションをとれるようになった。
マネが南野拓実のロールモデルに
65分付近では左サイドをカウンターで攻め入ると、波状攻撃となりロバートソンが立て続けにクロスボールを入れている。ここではマネが内のポジションをとって相手のサイドバックを中に絞らせることで、ロバートソンが外のポジションを自由に使うことができた。1つの攻撃の形がうまくいくことで、逆パターンも機能している。
南野拓実はリーグ戦で初めてベンチ外となった。奇しくもウォルバーハンプトン戦でマネが負傷した際に交代したのは、プレミアリーグデビューとなった南野。ウルブズ戦の試合後にユルゲン・クロップ監督は南野をこう評している。
「本質的に彼はウインガーではない。ライン間でプレーする選手であり、フォーメーションの幅を拡げてくれる存在だ」
クロップが評価するライン間でのプレーは、これまでの試合でも片鱗を見せている。ただ、ノーリッジのように引かれてしまえば、ひとつのポジションに居座ると攻撃は停滞する。実際、フィルミーノもライン間で動いてボールをもらうだけでなく、サイドに開いたり、味方のDFラインの前までポジションを落とすポジショニングを見せている。
マネは中央でもサイドでも仕事ができる。今後の南野がプレータイムを獲得していくうえで、この試合で見せたマネのプレーは南野のロールモデルになるのではないだろうか。
(文:加藤健一)
【了】