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久保建英の投入で攻撃が停滞した理由。サイドで異なる2つの顔がマジョルカ浮上のカギ

リーガ・エスパニョーラ第23節、エスパニョール対マジョルカが現地時間9日に行われ、0-1でマジョルカが敗れた。4戦連続でベンチスタートとなった久保建英は65分から出場したが、得点を生み出すことはできず。3試合連続で無得点に終わったマジョルカは、降格の危機に瀕している。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

残留争いの直接対決

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【写真:Getty Images】

 不調にあえぐエスパニョールをホームに迎えた第8節の前回対戦は、マジョルカが2-0で勝利を収めている。それから約4カ月が経過したが、両チームの置かれている状況は変わらず。降格圏すれすれの17位・マジョルカと最下位・エスパニョールの直接対決が行われた。

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 1992/93シーズン以来となる降格の危機に瀕するエスパニョールは、この冬に4人の選手を迎え入れた。そのうち、ベンフィカ(ポルトガル)から獲得したFWラウール・デ・トマス、ラージョ・バジェカーノから獲得したMFアドリアン・ベンバルバ、ヘタフェから獲得したDFレアンドロ・カブレラが、この試合のスターティングラインナップに名を連ねている。

 対するマジョルカも、冬にセビージャからレンタルしたMFアレハンドロ・ポソがリーグ戦で初めて先発した。4-1-4-1の右サイドバックに入り、サイドハーフにはMFラーゴ・ジュニオルとMFダニ・ロドリゲスが起用された。

 前半は64%のボール保持率を記録したマジョルカだったが、中盤で何度もボールを奪われてカウンターを受けた。ボール保持を攻撃になかなか繋げられず、シュート本数では相手の9本を大きく下回る3本のみに終わった。

久保建英は4試合連続の途中出場

 後半に入ると、マジョルカは4-2-3-1へと布陣を変更する。MFサルバ・セビージャが一列下がってMFイドリス・ババと中盤の底で並んだ。ビルドアップの局面ではDFラインの脇に降りてボールを捌き、サイドバックに高い位置を取らせた。ボールを失う回数も減り、敵陣への侵入が増えたものの、決定機を掴むまでには至らず。無得点のまま時間が過ぎていった。

 エスパニョールはDFディダク・ビラが左サイドを突破して、グラウンダーのパスを折り返す。これを受けたMFセルジ・ダルデルがダイレクトでゴール前にパスを送ると、デ・トマスが頭で押し込んだ。クラブ史上最高額の2000万ユーロ(約24億円)で加入したスペイン人FWが、58分に貴重な先制点を奪った。

 ビハインドを負ったマジョルカは、65分にセビージャを下げてMF久保建英を投入。これで4試合続けての途中出場となった久保は右サイドハーフに入った。マジョルカは攻撃的なカードを次々と切り、72分にFWクチョ・エルナンデス、80分にFWアブドン・プラツが投入された。

 マジョルカは最後までゴールが遠く、1-0でエスパニョールが3試合ぶりの勝利を収めた。直接対決に勝利したエスパニョールは勝ち点ではマジョルカと並び、残留争いは2ポイント差に4チームがひしめく混戦に。マジョルカは1分10敗と分が悪いアウェイで勝利を収めることはできなかった。

チームの課題は…

 久保は主に右サイドでプレーしたが、試合終盤はクチョとサイドを交換して左サイドでプレーする時間帯もあった。

 左サイドに流れてスローインを受けた71分のシーンでは、そのままドリブルでボックス内に侵入してラストパスを供給したが、惜しくも相手にクリアされた。86分には敵陣左サイドでフリーキックを獲得すると、ダニ・ロドリゲスのパスを受けて左サイドを突破する。マイナスに折り返したグラウンダーのクロスに、DFマルティン・ヴァリエントがフリーで合わせたが、左足から放たれたシュートはゴールを大きく外れた。

 チーム全体の課題で言えば、3試合連続で得点できていない攻撃陣よりも、リーグワースト2位の39失点を喫している守備の方が改善のプライオリティは高いように思える。結果的には1失点に抑えたこの試合でも、GKマノロ・レイナの度重なるビッグセーブや、ゴール前でのヴァリエントの決死のクリアがなければ、大量失点を招きかねない試合だった。

 攻撃面に目を向けると、前半は不用意なボールロストからピンチを招いていたが、システムを変更した後半は改善されていた。足下の技術に優れるセビージャがビルドアップを助け、推進力のあるババが前を向くシーンは増えていた。

 しかし、久保の投入によって攻撃の流れが悪くなった。後半は多くボールに触ってリズムを作っていたセビージャが下がったことで、マジョルカは再びビルドアップにストレスを抱えてしまった。試合を通じて61.5%のボール保持率を記録しながら、久保がプレーした25分間で放ったシュートはわずか2本。得点が必要な状況ではあったが、早い時間帯に攻撃のかじ取り役を下げた指揮官の采配は失敗に終わっている。

サイドによって異なる久保建英のプレー

 データサイト『Who Scored』の集計によると、25分間プレーした久保は22回のボールタッチを記録。キーパスは前述の1回のみだったが、ドリブルはチーム4位タイの3回を記録している。この日に限って言えば、右サイドより左サイドの方が攻撃に絡めていた印象は強かった。

 前節のバジャドリー戦で久保は、途中出場から2本のシュートを放っている。攻撃的な右サイドバックのポソは高い位置を取り、久保は右サイドからのカットインでゴールを狙った。この日も68分付近で、右サイドからワンツーでボックス内への侵入を狙ったり、相手を引き付けてポソにクロスを上げさせた場面などは、左利きの久保を投入したことで可能になった攻撃の形でもある。

 セビージャが下がって攻撃を組み立てることができなくなったので、右サイドで周囲との連係しながら崩すより、左サイドで個人の打開からラストパスを供給する方が可能性があった。クチョも右サイドの方が推進力を発揮できるので、チームにとってもベターな形だったように見える。しかし、相手も人数をかけて守っているので、それもなかなか難しい状況だった。

 左利きのアタッカーは久保しかおらず、両サイドをプレーできるのは現状のライバルたちにはない魅力でもある。久保の活かし方こそが、チームの浮上のカギを握っていると言っても過言ではない。

(文:加藤健一)

【了】

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