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マンUの超高額新戦力、ブルーノ・フェルナンデスとは何者か? 挫折に暴徒の襲撃…苦難越えた男の略歴

マンチェスター・ユナイテッドは、スポルティングCPからMFブルーノ・フェルナンデスを獲得したことを発表した。主にトップ下でプレーする25歳のポルトガル代表アタッカーは、直近2シーズン連続でポルトガルリーグ最優秀選手に選出されている超人気銘柄だ。移籍金は最大で6770万ポンド(約87億1000万円)に達するとされているブルーノ・フェルナンデスとはどんな選手なのだろうか。(文:プレミアパブ編集部)

シリーズ:○○とは何者か? text by プレミアパブ編集部 photo by Getty Images

苦労を乗り越えたノバーラ時代

ブルーノ・フェルナンデス
【写真:Getty Images】

 ブルーノ・フェルナンデスはポルトガルのポルトで生を受けた。父親は元プロサッカー選手、母親はFCポルトの熱狂的ファンという環境で、彼がサッカーに興味を持つことは、当然だったと言えるだろう。同じくサッカー好きで6歳も差のある兄と小さな頃からボールを蹴っていたブルーノは自然とボールスキルを養っていく。

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 その甲斐あってか、地元のクラブチームに入団した時点で、ブルーノは同学年の中ではずば抜けた存在だったという。結果、米メディア『ジ・アスレティック』によると、ブルーノ少年には9歳の時点でポルトやボアビスタからオファーが届いていたほどの才能だったようだ。周囲は母の応援するポルトに入団すると予想したが、練習場までのバスがあるという理由でボアビスタを選択することになる。

 その後、フェルナンデスはボアビスタのアカデミーに8年間所属する。そこで順調に成長した若き逸材は、17歳で大きな決断をする。セリエB・ノバーラへの移籍を決めるのだ。英メディア『ガーディアン』によると、ブルーノの代理人から推薦を受けたノバーラのスポーツディレクターが、ボアビスタで躍動していた17歳に一目惚れしたという。若い年齢で家族やのちに結婚する恋人と別れる難しい挑戦ではあったが、本人は乗り気だった。サッカーへの理解がある両親も反対しなかったという。

 イタリア北部へと活躍の場を移したブルーノは、慣れない環境での1人暮らしに苦しみホームシックに陥る時期もあった。しかし並々ならぬ努力でこれを乗り越える。

 米メディア『ジ・アスレティック』によると、ブルーノは環境に溶け込むためイタリア語取得に尋常ではない姿勢を見せ、彼のアパートメントの中は様々な付箋で埋め尽くされていたという。彼はイタリア語の単語を覚える為に部屋のいたるアイテムに付箋を張り単語の修得に努めたのだ。このような努力の結果、1ヶ月後には基本的なイタリア語を修得していたそうだ。

 もちろん、サッカー面でも大きな進歩を見せた。1年目の出場時間は22節まで合計32分と非常に限られていたが、23節にフル出場を果たすとその後はスタメンに定着。のちの20試合で12勝5分け3敗と好成績を収めノバーラはリーグ5位に躍進した。

 英メディア『ミラー』によると、好調なチームの中心となった19歳の攻撃的MFにはユベントス、インテルも興味を示したという。しかしブルーノが最終的に選んだのは育成に定評のあるウディネーゼだった。

イタリアを経てスポルティングの英雄へ

ブルーノ・フェルナンデス
スポルティングCPでは英雄的存在であったブルーノ・フェルナンデス【写真:Getty Images】

 ウディネーゼに加入したブルーノは当時のフランチェスコ・グイドリン監督から信頼を得る。18歳でシーズン開幕を迎えた1シーズン目は24試合、次の2シーズンは共に31試合に出場しチームの攻撃に貢献。チームの大エース、アントニオ・ディナターレから「とんでもない才能を持った若者」と絶賛されるなど能力はこの時点で十分以上に周りに認められていた。

 一方で課題も明確になっていた。得点に直結するプレーが少なかったのだ。ウディネーゼでは3シーズンプレーしたものの、合計で10得点12アシストと、アタッカーにしては物足りない数字だった。その課題は、次の活躍の地、サンプドリアでも大きくは改善せず、そこでも33試合5得点2アシストという成績で終わることになる。

 しかし心機一転、ポルトガルで再起を図ったブルーノは、スポルティングで得点感覚を開花させた。トップ下のポジションを与えられた22歳のアタッカーは、1年目の全大会で16得点20アシストを記録。リーグMVPを受賞し2018年ワールドカップのポルトガル代表に選出されるなど華々しいシーズンを送ったのだ。

 しかし、シーズン終盤の2018年5月に事件が起こる。なんとクラブの不調に激怒したスポルティングファンが練習場に乱入したのだ。暴徒化したファンは選手とスタッフを襲撃し、一部の選手が大怪我を負うなど前代未聞の事件に巻き込まれた。

 その事件が尾を引き、シーズン後のW杯中にはウィリアム・カルバーリョやルイ・パトリシオを含む9人の選手が契約解除を申告。スポルティングは混沌とした状況に突き落とされた。そんな中、ブルーノも契約解除を申し出た1人だった。既に人気銘柄となっていたポルトガル代表には多くのクラブからオファーが届いており、退団は既定路線だった。

 しかし、W杯から戻ったブルーノは突如、新契約を結ぶことを発表する。エースを失うことは避けられないと考えていたファンにとっては青天の霹靂だった。

 その後、主力が多く退団しさらに混迷を極めるクラブだったが、ワールドカップも経験したブルーノは更なる活躍を披露する。スポルティング2年目では、53試合で32得点18アシストを記録。クラブのリーグ総得点に対して約50%に関与する大活躍を披露したのだ。

 深い位置からゲームを組み立てながら自らゴール前にも迫るプレースタイルは圧倒的で、2シーズン連続のリーグMVPにも輝いた。ブルーノは既にクラブの英雄になっていた。

ユナイテッドの攻撃を変える?

 ポルトガルでの鮮烈な活躍は多くのビッグクラブの関心を引いた。多くのメディアは特にマンチェスター・シティとユナイテッドの興味を連日報道したが、優位だったのは赤い悪魔だった。スポルティングからの補強と言えばクリスティアーノ・ロナウドやナニなどの成功からか、ポジティブな印象が強いユナイテッドが一歩リードしていたのだ。

 米メディア『ジ・アスレティック』によると、ポルトガルリーグでのブルーノのパス成功率が70%台であったことに懸念を持ったユナイテッドは2019年夏での獲得を躊躇ったと言われている。

 しかし引いてブロックを作る相手を崩せない今季のユナイテッドには、卓越したキック技術と視野の広さを備えるポルトガル人が必要だった。ゲームメイクに貢献できるだけでなく低い位置からドリブルで攻撃の起点となることや遠い位置からのミドルシュートも可能で、今のユナイテッドにはいないタイプだ。セットプレーのキッカーも務められる点も特筆するべきである。

 中盤での創造性の欠如が叫ばれていたユナイテッドにとっては最適な人材だった。現在はやや受け身なカウンターサッカーを続けている赤い悪魔だが、ブルーノ・フェルナンデスの加入によって自ら主導権を握る攻撃的なフットボールが甦るかもしれない。

 実際、練習が1日しかない状態で迎えたプレミアリーグ第25節ウォルバーハンプトン戦では、いきなりデビューを果たすと、アイディアを感じるパスや、威力のあるシュートを披露して、チーム内で最も脅威を与える存在になっていた。

 一方でボールロストも多く、選手間の意思疎通がない状況ではやや危なさを感じる部分が多かっただけでなく、後半からは慣れないボランチでのプレーになると、やや存在感は希薄になっていた。

 ただそれらの課題も、いずれ解決されるだろう。

 まずウルブズ戦のあと、2週間ものウィンターブレークがユナイテッドには待っている。この間に、ブルーノはチームメイトとの連係を深めることが可能だ。

 また次節からは出場停止のネマニャ・マティッチが戻ってくる。あるいは負傷中のスコット・マクトミネイや、ポール・ポグバもほぼ同時期に戻ってくると言われている。これで中盤の枚数は揃うので、フェルナンデスも本職のトップ下でプレー可能になるのだ。

 なにより若いうちに、違う環境に適応する難しさを経験した選手だ。プレミアリーグは適応が難しいリーグとは言われているものの、通常よりも早い適応が期待できる。

「クリスティアーノ・ロナウドがいたころからユナイテッドが好きだった」と語るポルトガル代表MFは、偉大な先人たちのようにユナイテッドの攻撃を牽引することができるのか。期待しながら見守っていきたい。

(文:プレミアパブ編集部)

【了】

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