東京五輪のメンバー入りが難しい理由
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AFC U-23選手権で株を上げた数少ない選手の1人として、相馬勇紀をあげられる。3-4-2-1のウイングバックとしてプレーし、1対1の突破からクロスボールを供給していた。右の橋岡大樹とともに個人でチャンスを作れる能力を示していた。
ただ、相馬が東京五輪のメンバー18人に入るのは橋岡よりも難しい気がする。
どちらもウイングバックとして活躍したわけだが、橋岡はセンターバックができるし、4バックの右もできる。橋岡がDFであるのに対して、相馬はアタッカーなので4バックのSBは本職ではないし、センターバックは無理だ。そのかわり4-2-3-1の2列目には入れるが、欧州組が招集可能なら競争はかなり激しくなる。
欧州組やオーバーエイジが入ってきた場合、主に国内の五輪候補が使っていた3バックではなく、4バックがメインになる可能性がある。そうなると、ウイングバックというポジション自体がなくなり、相馬は久保建英、三好康児、堂安律、安部裕葵、食野亮太郎らとの競争になるわけだ。
早稲田大学在学時に特別指定選手として名古屋グランパスでプレーした。J1デビューとなった鹿島アントラーズ戦でいきなり初アシストを決め、以降は相馬が出れば負けないという、ちょっとした不敗神話を作っている。
明確な武器と勝負強さ
ドリブル突破からのクロスという明確な武器があるからだろうが、相馬は臆せずに勝負を仕掛けて結果を叩き出す勝負強さを持っている。当初は五輪代表の有力候補でもなかったが、チャンスを逃さずに自らの地位を上げてきた。
E-1サッカー選手権やU-23選手権での日本は、個の能力に頼るような攻め方になっていた。それも相馬にはある面でプラスに働いたと思う。左右からクロスを上げ続けても得点にならなかったのは、相馬の責任よりも中央に高さのある選手がいなかったためで、高さがないのにハイクロスが主要な攻め手という戦術面でのちぐはぐさによるものだ。
相馬は機能性がはっきりしているアタッカーなので、得点がほしいときの切り札としての起用が考えられる。その点では食野が直接の競合相手になりそうだが、カットインからの右足のシュートが得意な食野の起用はフィールドの左側限定になる。相馬は左右どちらにも置けてシュートもクロスボールもあるぶん、使い方に余裕があるかもしれない。
ただ、そうしたスーパーサブとしてのスペシャリストを18人の中で用意するかどうかは選考する側の考え方による。ただ、これまで幸運の女神の後ろ髪をつかんでのしあがってきた勝負強さは、短時間で結果を出す役割には向いている。
(文:西部謙司)
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