デビュー戦で輝くも…
東京五輪世代を先頭に立って引っ張ってきたレフティーが、本大会を1年後に控えたタイミングで欧州移籍を決断した。
川崎フロンターレから横浜F・マリノスへ期限付き移籍中だったMF三好康児は、その契約を途中で打ち切って、再度フロンターレから期限付き移籍する形でベルギーのロイヤル・アントワープFCへと旅立った。
しかし、新天地での挑戦は決して順風満帆とは言えない状況だ。すでにリーグ開幕からしばらく経っての合流で、チームはある程度固まっていた。リーグ第6節のアンデルレヒト戦で終了間際に見事な決勝ゴールを挙げる活躍で鮮烈なデビューを飾ったものの、先発出場の機会は限られ、11月には足首を負傷して長期離脱も強いられた。
ポジション争いのライバルも強力だった。三好は主に4-2-3-1のトップ下として考えられているが、競い合うのはチームの絶対的な柱となるアタッカー、MFリオル・レファエロフだ。この33歳のイスラエル代表司令塔は、すでにリーグ戦20試合に出場して10得点2アシストと目覚ましい結果を残している。
負傷離脱してしまったのも痛かった。11月末に足首を痛め、2019年内には復帰できず。結局、年明けのスペインキャンプも不参加となり、ピッチに戻ってきたのは1月26日のリーグ第23節ズルテ・ワレヘム戦の後半からだった。その間、実に9試合もの公式戦を棒に振ってしまった。
それでも三好に対するクラブからの評価は高い。カップ戦の1試合2得点を挙げる活躍で爆発力の大きさを示し、アンデルレヒトやクラブ・ブルージュといった強豪相手にも勝負強さと確かなクオリティを発揮できることは証明済みだ。
すでにフロンターレから完全移籍での買い取りの方向に進んでいると現地メディアは報じており、移籍金の額も120万ユーロ(約1億4500万円)ほどと伝えられている。アントワープにとってはお買い得な選手と言えるだろう。
東京五輪出場へ。勝負の後半戦
負傷も癒え、三好にとってはここからが本当の勝負だ。東京五輪まで半年と迫る中で、クラブで出場機会を失っていれば代表での居場所もなくなってしまう。特に森保一監督率いるU-23日本代表の2列目には、マジョルカでプレーするMF久保建英や、オランダの強豪PSVアイントホーフェンに所属するMF堂安律といったA代表の主力級も含めて優れた選手がひしめきあっている。
これまで東京五輪世代の中心を担ってきた三好でも安泰とはいえず、現状は当落線上にいると言っていい。本大会に出場する18人の最終メンバーに入るためには、クラブでのパフォーマンスレベルをもう1段階も2段階も上げ、定位置を確保することが重要だ。
アントワープにはレファエロフの他にも、実績十分な選手たちが揃っている。プレミアリーグでも活躍したMFケビン・ミララスやDFヴェスレイ・フート、FWディウメルシ・エンボカニ、MFスティーブン・ドフールなどリーグ屈指の陣容だ。
しかも現在リーグ戦で3位につけ、上位6チームによるベルギーリーグ優勝やチャンピオンズリーグ出場権などをかけたプレーオフ1進出も現実的な目標として視野に入る。これほど好調な中で、三好が割って入ってポジションを勝ち取るのは至難の業だろう。
それでも、この高いハードルを乗り越えた先には大きな飛躍が待っているはず。昨夏のコパ・アメリカで、ウルグアイ代表相手に披露した2得点に象徴される一連のパフォーマンスは見る者の度肝を抜いた。あのクオリティをクラブでも代表でも継続して発揮できるようになれば、東京五輪でも森保ジャパンの金メダル獲得という目標達成に向けて大きな力になるはずだ。
(文:編集部)
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