スロースタートも徐々にエース格へ
満を持して海を渡ってベルギー1部のシント=トロイデンVVに加入したFW鈴木優磨だが、2019年上半期は負傷の影響もあって鹿島アントラーズでの公式戦出場が1試合もない状態だった。
ベルギーでもしばらくはベンチ外が続き、8月末の第6節オイペン戦で途中出場を果たしようやくリーグ戦デビューを飾る。そこから主力へ定着するのに時間はかからなかった。
リーグ戦初先発となった第8節のシャルルロワ戦で初ゴールを挙げると、味方選手の負傷によって前半途中に急きょ出番が回ってきた第9節のゲンクとのダービーマッチでも存在感を発揮し3-3のドローに貢献する。
「もうちょい絡んでいけて、もうちょいゴール前で力を発揮できるようになれば、点を取っていけるんじゃないか」
荒れに荒れたダービーマッチの後、明るい展望を語った鈴木はそこから徐々に2トップの一角へ定着していく。出遅れはしたものの、チームメイトたちとの相互理解が進んでいき、味方との連係がスムーズになっていくとともに、決定的なチャンスに絡む回数も増えていった。
ベルギーリーグはシーズン終盤にプレーオフがあるため、2019年のうちにレギュラーシーズンの3分の2が終わる。シント=トロイデンVVは11月待つにマーク・ブライス監督を解任するなど下位で苦しんでいたが、鈴木は相方のコートジボワール代表FWヨアン・ボリとともにチームを引っ張った。
ブライス監督解任直後の王者ゲンク戦では、鈴木が決勝ゴールを奪った。背番号9の日本人ストライカーは左サイドに流れてシンプルなボールキープで攻撃の起点となり、そのままゴール前まで侵入。最後は右サイドからのクロスに、相手GKと交錯しながら頭で合わせてゴールネットを揺らした。
監督交代でもスタメンの座は譲らず
昨季、シント=トロイデンVVの前線をけん引していたFW鎌田大地は、新年を迎えるまでにリーグ戦二桁得点を達成していた。12月はややトーンダウンした感があったものの、10月や11月はほとんど毎試合のようにゴールを決めて、チャンピオンズリーグ出場権を争えるプレーオフ1進出目前までチームを押し上げた。
鈴木は「(鎌田と)同じ時間を与えられれば、俺は絶対に超えられると思っているので。スタメンで出れば絶対に(ゴールを)取れる」と豪語したが、まだ先代エースの領域には達していない。それでも後半戦のパフォーマンス次第では渡欧1年目でのリーグ戦二桁得点は十分に視野に入ってくるだろう。
そして、シント=トロイデンVVの浮沈は鈴木が握っていると言っても過言ではない。冬の移籍市場でリーグ戦10得点を挙げていた相方のボリがカタールのアル・ラーヤンに引き抜かれ、大きな得点源を失った。だからこそ鈴木が背負うべき責任は一層大きくなっていく。
昨年末に就任したミロス・コスティッチ新監督は、これまで試合ごとに3バックや4バックなど変わり続けていたシステムを4バックに固定。初陣となった第22節のコルトライク戦と第23節のムスクロン戦で今季2度目の連勝を飾っている。
その中で、新指揮官は鈴木を4-3-3の左ウィングと4-3-1-2の2トップの一角で起用した。もともとボリと組んでいた頃も、左右に流れてチャンスメイクに絡む動きは度々見せていた。裏への飛び出しのみならず、柔軟なポストプレーやドリブル突破など前線で幅広い役割をこなせる背番号9は、間違いなく新体制のエースとして期待を寄せられている。
新相方コリディオとの連係が後半戦の鍵に
また、コスティッチ監督は半年間ほとんど出番を与えられてこなかったアタッカーを起用し、結果につなげている。インテルから期限付き移籍中のアルゼンチン人FWファクンド・コリディオが、ブレイクの兆しを見せているのだ。
20歳のコリディオは直近のリーグ第25節ムスクロン戦で鈴木のゴールをアシストし、2人の相性は非常に良い。しかもその試合では3アシストを記録し、3-1の勝利に大きく貢献した。利他的なメンタリティを備え、ゴールを決めるだけでなくチャンスメイクにもクオリティを発揮できる、鈴木の新しい相方候補筆頭だ。
現時点で10位のシント=トロイデンVVには、まだ上位6チームによるプレーオフ1進出の可能性が十分に残されている。ボーダーラインの6位ゲンクまでの勝ち点差はわずかに5ポイントだ。23試合で39失点と守備に難のある状態で、残り5試合で上位をごぼう抜きするには勝ち続けるしかないが、そこで鈴木に期待されるのはやはりゴール量産に他ならない。
コスティッチ監督が構築するチームにおいて、中盤ではU-23アルゼンチン代表MFサンティアゴ・コロンバットが中心となり、ベルギー人MFアレクサンダー・デ・ブラインはチャンスメイカーとして急成長を遂げている。キャプテンのMFジョーダン・ボタカも右ウィングバックが定位置だった前体制とは違い、より攻撃的な位置で起用されるようになって輝きを増している。
「コリディオと組むようになって、彼も若いですけど本当にポテンシャルはあるし、これからもっともっと2人で得点に絡んでいける回数が増えるんじゃないかと思います」
鈴木はムスクロン戦終了後、コリディオとのコンビネーションへの確かな手応えをクラブ公式のインタビューで語った。2人のゴールやアシストが増えていけば、自ずと攻撃の破壊力は増していくだろう。レギュラーシーズン12得点だった鎌田は昨季後半戦、対策が進んで徐々にトーンダウンしてしまったが、鈴木には新たな相方のサポートとともに上昇気流に乗ってのさらなるゴール量産と、「鎌田超え」が期待される。
(文:編集部)
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