CLデビュー
柏レイソルが9年ぶりに戦うJ2の開幕を間近に控えた2019年2月2日、ベルギー1部のヘンクはMF伊東純也の獲得を発表した。前日に行われたアジアカップ決勝にも出場した日本代表MFは、1年半の期限付きで海外挑戦を開始した。
3月中旬に閉幕したレギュラーシーズンでは、4試合の出場に終わった。それでもラスト2試合は先発の機会を勝ち取り、最終節で1得点1アシストと結果を残す。プレーオフでも第9節までの全試合に先発して2得点1アシストをマーク。チームは1試合を残して8季ぶりの優勝を決めている。
移籍から間もなくチームに欠かせない存在へと登りつめた伊東純也は今季、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)にグループステージから参戦した。ヘンクが入ったグループEには、南野拓実と奥川雅也が所属するザルツブルクとナポリに加えて、ディフェンディングチャンピオンのリバプールが同居した。
初戦のザルツブルク戦で伊東は4-3-3の右ウイングで先発したが、試合は2-6で大敗を喫する。立ち上がりからオーストリア王者のプレッシングに手を焼いたヘンクは、36分までに3失点を喫してしまった。
その後は1点を返したが、前半だけで5失点と守備陣が崩壊。43分にシュートを放ったのが唯一ともいえるハイライトで、守備に追われた伊東は前半で退いた。ほろ苦いCLデビューとなった。
アシストを量産
9季ぶりにCLを戦うヘンクはリーグ戦との過密日程に苦戦した。一時は10位に転落するなどチームがなかなか波に乗れない中で、伊東はアシストを量産。10節までに5つのアシストを記録している。
CLでは第2節でナポリと対戦。早い時間から失点を重ねたザルツブルク戦とは対照的に、無失点に抑えて勝ち点を奪取している。ピンチを招く場面もあったが、体を張ってそれを凌ぐ。後方からも積極的につなぎ、高い位置からボールを奪って相手ゴールを脅かした。
伊東にもチャンスは訪れた。78分に敵の横パスをカットしてドリブルで運んだシーンは決定機となったが、相手のファールによって止められてしまった。それでもザルツブルク戦の汚名返上とばかりに、攻守に奮闘してフル出場を果たした。
日本代表での活躍も目覚ましかった。格下相手とはいえ、10月10日のモンゴル戦にフル出場した伊東は、右サイドからのクロスで3得点をアシスト。これまで右サイドハーフのポジションを務めてきた堂安律や久保建英にはない、縦へのスピードや右足から放たれるクロスは、チームの新たな武器になった。この半年で、伊東は日本代表に定着したと言えるだろう。
監督交代を機にチームは復調
CLでは1勝もできずにグループステージ敗退が決まった。伊東自身も11節以降はリーグ戦で得点もアシストも決められず。これと比例するようにチームも低迷し、フェリス・マズ監督は0-2で敗れた11月10日のヘント戦後に解任されている。
ドイツ人のハンネス・ヴォルフ監督の下で再出発を切ったヘンクは調子を取り戻すことに成功した。就任3戦目に初勝利を挙げると、そこから4勝2敗と白星が先行し、就任時に9位だった順位は6位まで上昇している。
11節以降は得点とアシストがなかった伊東も、ここ6試合で3得点1アシストと躍動している。植田直通との日本人対決となったセルクル・ブルージュ戦では、今季初ゴールをマークした。
34分、中盤でボールを受けた伊東は素早いターンで前を向く。そのままドリブルで運び、ペナルティーエリアの外から強引に右足を振り抜くと、相手DFの足にあたったシュートはニアサイドのゴールに吸い込まれた。
年内最後の公式戦となった12月26日のオイペン戦でも、1得点1アシストの活躍でチームの全得点に絡んだ。まずは13分、右SBヨアキム・メーレの折り返しをボックス内で受けると、素早く切り返して左足で決めた。
さらに60分にはカウンターで味方とともに敵陣に流れ込むと、右サイドでボールを受ける。ダイレクトで上げたクロスは相手DFに当たってコースが変わり、フリーで長身FWポール・オヌアチュがゴールに流し込んだ。
神奈川大学を経てヴァンフォーレ甲府に加入。柏レイソル時代に初めて日本代表にも選出され、25歳でベルギーへと赴いた。欧州で活躍する他の日本人選手に比べれば遅咲きという言葉で表現されるかもしれない。しかし、今季CLでプレーした日本人選手は伊東を含めて3人しかいない。日本を代表する韋駄天は、ベルギーで貴重な経験を積み重ねている。
(文:編集部)
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