ベンチで迎えた8季目の開幕
オーバーエイジとして、キャプテンマークを巻いて出場したロンドン五輪を終えた2012年夏に、吉田麻也はサウサンプトンに加入した。昨シーズンは、18年12月に就任したラルフ・ハーゼンヒュットル監督の信頼を掴み、主に3バックの中央を務めている。しかし、迎えたプレミアリーグ8季目は苦しい状況に追い込まれた。
吉田は下部組織出身の24歳MFのジェームズ・ウォード=プラウズと並び、チームの最古参の一人となった。年齢で見ても、32歳のFWシェイン・ロングに次いで、2番目の年長者である。
しかし、在籍年数も年齢も、ピッチの中では何の価値も持たない。0-3で敗れたバーンリーとの開幕戦で、3バックの中央を務めたのはジャック・スティーブンス。吉田はベンチで90分間を過ごした。
チームが大敗したこともあり、次戦のリバプール戦で吉田にチャンスが回ってきた。ボールを終始支配された試合は1-2で敗れたが、5バックの中央でプレーした吉田にメディアからおおむね高い評価が与えられている。
その後は徐々に先発の機会を掴み、第7節以降は4試合連続でスターティングラインナップに名を連ねた。しかしその4試合目、10月25日に行われたレスター戦で、吉田とチームは悪夢に襲われることになる。
悪夢だったレスター戦
開幕から好調を維持して上位に食い込むレスターに対して、下位をさまようサウサンプトン。対照的な両チームの対戦は、開始10分に決定的なプレーが起きた。
レスターは10分、ボール奪取から素早く敵陣に攻め入ると、ベン・チルウェルが先制点を挙げる。この際、ボールを奪われたシーンでライアン・バートランドのファウルは流されていたが、VARによって危険なプレーと判断されてレッドカードが与えられた。
10人で残り80分を戦わなければいけなくなったサウサンプトンは、その後も失点を重ねた。吉田もユーリ・ティーレマンスとアジョゼ・ペレスのワンツーで翻ろうされて3失点目を喫する。DFラインはゴールエリアの手前まで下がり、その前のスペースを面白いように使われた。
サウサンプトンは前半だけで5失点を喫したが、レスターの猛攻が収まることはなかった。ペレスとジェイミー・ヴァーディーにはハットトリックを許し、最終的には0-9というスコアでの歴史的敗北を喫した。
0-9はもちろん吉田だけの責任ではない。しかし、この試合をきっかけに立場が大きく変わったのもまた事実である。結果的にこのレスター戦後、吉田がリーグ戦でプレーしたのは1点リードで迎えたノリッジ戦の終盤5分間のみ。ベンチが定位置という苦しい状況に置かれている。
チームは好調。吉田にチャンスは訪れるか
センターバックはスティーブンスとヤン・ベドナレクが不動の地位を築いている。1月21日のクリスタル・パレス戦ではケガのベドナレクに代わってヤニク・ヴェステルゴーが出場している。吉田は現状でセンターバックの4番手という序列になるだろう。
サウサンプトンは降格圏をさまよい続けたが、3バックから4バックへの変更が奏功した。チェルシーやトッテナムから勝ち点3を奪い、1月11日にはレスターとの“リベンジマッチ”にも勝利するなど、チームの調子は上向いている。
第14節以降は7勝3敗1分けで順位を9位まで上げた。5位マンチェスター・ユナイテッドとの勝ち点差はわずか3で、9ポイント差の4位チェルシーすら視界に捉えている。好調を維持するチームが最終ラインに手を入れることは考えにくい。出場機会があるとすれば、試合終盤にDFラインの枚数を増やす必要に迫られたときくらいだろう。
吉田はプレミアリーグで154試合という実績を7年半で積み重ねてきた。その間、ジョゼ・フォンテ、デヤン・ロブレン、トビー・アルデルワイレルド、フィルジル・ファン・ダイクといった欧州を代表するDFたちと競争し続け、生き延びてきた。その経験を活かせるか、吉田は後半戦も戦い続ける。
(文:編集部)
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