昨季とは状況が一変
プレミアリーグ挑戦2季目となった今シーズン、武藤嘉紀がポジションを争う同僚の顔触れは大きく変わった。チーム得点王のスペイン人FWアジョセ・ペレスがレスター・シティに、スペイン人FWホセルはアラベスに、11得点を挙げたサロモン・ロンドンはローンを終えて中国に渡った。
ラファエル・ベニテスは昨季限りでチームを去り、シェフィールド・ウェンズデイを率いていた指揮官スティーブ・ブルースが新監督に就任。武藤はチームに残留したものの、加入時と昨夏では周囲の状況が大きく変わってしまった。
ニューカッスルはプレミアリーグ開幕を前に、上海で開催されたミニトーナメントに臨んでいる。4チームが参加したプレミアリーグ・アジアトロフィーでは、準決勝でウォルバーハンプトンと対戦。武藤はFWとして先発して63分プレーしたが無得点に終わり、チームは0-4で敗れた。
3位決定戦のウェストハム戦で武藤はチャンスをものにする。武藤はこの試合に先発すると、34分に右サイドからのクロスを左足で合わせて先制ゴールを挙げた。武藤のゴールが決勝点となりに1-0で勝利を収めている。ビザの問題のため新指揮官はこの2試合をスタンドから観戦しているが、アピール成功といえる結果を残した。
昨季の主力FWが抜け、武藤への期待は高まるかに見えたが、その後に状況は一変する。7月23日に22歳のブラジル人FWジョエリントンを、クラブ史上最高額の4000万ポンドもの移籍金で獲得。さらに8月8日には下部組織出身のアンディ・キャロルを単年契約で獲得した。
レスター戦で貴重なゴール
アーセナルとの開幕戦のスターティングメンバーに、武藤の名前はなかった。前線に起用されたのはジョエリントンとFWミゲル・アルミロン。武藤は新加入のFWアラン・サンマクシマンとともにベンチ入りしたものの、出場機会は訪れなかった。
リーグ戦ではその後、途中出場が続いた。初先発のチャンスは、8月28日に行われたカラバオ・カップ2回戦のレスター戦に訪れた。0-1で迎えた53分、ロングボールに反応したDFイェトロ・ウィレムスがボールを受け、相手に倒されてこぼれたボールを武藤がゴールに押し込んだ。PK戦でも武藤は1人目のキッカーとしてPKを成功させたが、チームは2-4で敗れた。
リーグ戦では第2節から4試合続けて途中出場を果たしたものの、得点に絡む活躍はできず。それでも、1勝2分け3敗とチームは波に乗れない中で、好調レスター戦で先発のチャンスは巡ってくる。カラバオ・カップの再現が期待された。
しかし、トップ下で先発した武藤は決定機を活かすことができず。チームは0-1で迎えた43分にMFアイザック・ヘイデンが退場処分となるアクシデントに見舞われた。ボランチを失ったニューカッスルはMFキ・ソンヨンを投入し、武藤は前半アディショナルタイムで退くこととなった。
四面楚歌の武藤嘉紀
レスター戦を境に、状況は一変した。FWにはジョエリントン、アルミロン、サンマクシマンといった選手が起用され、8月上旬に加入したキャロルや夏にレンタルから復帰したドワイト・ゲイルが控えている。レスター戦後の13試合でプレーしたのはバーンリー戦の10分間のみ。ベンチに入れたのはわずかに2試合で、武藤は完全に居場所を失った。
それでも名誉挽回のチャンスは訪れた。相手は三度レスター。年末年始の過密日程が続く中、元日に行われた試合にシャドーの一角として先発したが、武藤はシュートを放てず。完全に相手ペースで進んだ試合は0-3の完敗となった。
続く、ロッチデールとのFAカップにも武藤は先発した。今季初の2試合連続先発となったこの試合では、チャンスに絡んでいる。しかし、1-0のリードで迎えた52分に武藤はドリブルを仕掛けたが、このプレーで腰を痛めてしまった。プレー続行不可能でそのまま交代となり、貴重なアピールのチャンスをふいにした。
チームは12位ながらUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権に手が届く位置にいる。上位に食い込むためには、23試合で22得点に終わっている攻撃陣の整備は喫緊の課題となる。そこでチームは冬の移籍市場で動く可能性が高く、ブライトンのFWグレン・マレーやACミランのFWクシシュトフ・ピョンテクに興味を示しているといわれている。
武藤の復帰はすぐには叶わないだろう。昨年末には移籍の噂も流れていたが、負傷したことでその可能性は低くなったと言えるだろう。チームに残ったとして、復帰しても新戦力が加わることも大いに考えられる。武藤を取り巻く状況はまさに四面楚歌といえるだろう。
(文:編集部)
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