ファン・ダイクのロングボール
「リバプールと対戦するときは、ボールを奪われてはいけない。ボールを奪われたら一気にカウンターを仕掛けてくるからだ。ボールを奪われないためにはボールを持たなければいい。だから、リバプールにボールを持たせて、オレたちは自陣に撤退して守備を固めてカウンターを狙うんだ」
近年のリバプール対策の標語である。よって、ボールを持たされることが増えたリバプールは、ボールを保持しているときの局面を徹底的に磨く必要があった。
相手はリバプールにボールを持たせることを意図したプレッシングになるので、攻撃のスイッチを入れさせるようなプレッシングはしてこない。よって、GKアリソンまでプレッシングをかけ、ボールを持っているCBに襲いかかったりする必要はない。ただ、その影響でまったりとボールを持ててしまうCBのなかで非常に目立っているのがファン・ダイクのロングボールだ。
リバプールはフリーのファン・ダイクから一気に相手の裏にピンポイントのロングボールを蹴る速攻を行う。味方に通ればビッグチャンス。通らなければ相手のボールになってしまうことが多い裏狙いの速攻だが、リバプールはボールを失うことをあまり気にしてはいない。
なぜなら、相手がボールを持たせたいと願っている状況で、「ボールを持たないよ」という駆け引きは非常に理に適っているからだ。よって、ボールを持たずに速攻を連発するという策は論理的なのである。
さらに、ロングボールへの飛び出し方も多種多様となっている。サラーが単独で裏を狙う形もあれば、フィルミーノが下りる動きでできたスペースに他の選手が飛び出す形もある。WGの位置からゴール前に斜めに侵入してくる動きはゴールに直結する。相手の選手はマークの受け渡しをしている場合ではないが、ついていけば持ち場を離れすぎてしまうという、相反する判断を何度も強いられる状況となってしまう。
(文:らいかーると)
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