ホームで屈辱的完敗
73,198人もの観客が詰めかけたオールド・トラフォードで、マンチェスター・ユナイテッドのイレブンは無残な姿を晒した。現地時間22日に行われたプレミアリーグ第24節、ユナイテッド対バーンリー。2-0で勝利を収めたのは、下位に沈むアウェイチームであった。
試合中には、グレーザー家(オーナー)とエド・ウッドワードCEOに対する厳しいチャントが、オールド・トラフォードに鳴り響いた。英紙『ガーディアン』によると、そのことについて問われたオーレ・グンナー・スールシャール監督は試合後の会見で「ピッチで起きていることについては私に責任がある」とコメントしていたという。サポーターは怒りの矛先を一体どこへ向ければいいのか…。
さて、結果的に完敗を喫したバーンリー戦だが、この日は立ち上がりから苦戦を強いられていた。FWマーカス・ラッシュフォード、MFポール・ポグバと絶対的主力選手を怪我で欠くユナイテッドは、攻撃時にゴール前でのアイデアと積極性を欠いており、なかなか相手を崩し切れない。セカンドボールの回収でも後れを取っており、押し込んでは押し返され、の繰り返しであった。
バーンリーの戦い方は非常に分かりやすかった。守備時は4-4-2のブロックを築きユナイテッドに対応し、ボールを奪ったら最前線のFWクリス・ウッドを起点とした攻撃を展開する。最終ラインをしっかりと押し上げ、全体の距離感をコンパクトに保つことで、相手のカウンターの芽も的確に潰せていた。
中央を固めるバーンリーに対し、ユナイテッドはたまらずサイドへ逃げる。DFアーロン・ワン=ビサカ、DFブランドン・ウィリアムズの両サイドバックも高い位置を取りながら、相手を深い位置まで押し込んでそこから果敢にクロスを放った。が、バーンリーのDFジェームズ・タルコウスキとDFベン・ミーの両CBはやはり固い。単純なクロスボールはことごとくはじかれるなど、ユナイテッドは決定機を生み出すことができなかった。
攻撃時に気になったのは、MFアンドレアス・ペレイラの判断力の遅さ。ボールを持ってからシュートに行くのかパスを出すのかを決断するまでが長いため、バーンリーの守備陣はその間に陣形を整える。そうなるとチーム全体の攻撃がストップ。このあたりのアクションをもう少し早めたかったところだった。
その後もバーンリーに対し攻めあぐねる状況が続いたユナイテッドは、39分にセットプレーからウッドにゴールネットを揺らされ先制点を献上。良い部分が何もなかった前半を、0-1で折り返すことになった。
崩しのアイデアなく2戦連続無得点
後半、スールシャール監督はこの状況を変えるべく選手交代を行った。攻撃時に存在感を失っていたA・ペレイラを下げ、FWメイソン・グリーンウッドを投入したのである。
しかし、56分のことだった。バーンリーが敵陣左サイドでボールをキープ。MFアシュリー・ウェストウッドの縦パスを受けたFWジェイ・ロドリゲスがウッドとのワンツーでペナルティエリア内に侵入すると、最後は左足を振り抜きニアサイド高い位置を射抜く。2-0とリードを広げた。
グリーンウッド投入も虚しく2点のビハインドを背負ったユナイテッドは、69分にMFジェシー・リンガードとDFルーク・ショーをピッチに送り出す。全体の運動量を上げ、昨季と同じく2点差を追いつこうと試みた。
しかし、バーンリーの守備陣が高い集中力を保ち、ユナイテッドの攻撃を幾度となく阻んだ。ホームチームは相変わらず攻撃時のアイデアを欠いており、前半と同じく攻め手はサイドからのクロスのみ。それをバーンリーの両CBに弾き返され、セカンドボールを拾って苦し紛れのシュート。これの繰り返しだった。シュートが枠に飛んでも、イングランド代表GKニック・ポープが抜群の安定感を発揮しセーブ。ゴールは遠かった。
クロス一辺倒の攻撃では、バーンリーは攻略できない。そもそもユナイテッドには高さで勝負できるオフェンスが不在のため、サイド攻撃を基本とするならばもう少し工夫を施したかったところだ。しかし、ユナイテッドにはそれがなかった。これでは、点が入らないのは当たり前。バーンリーは結局交代を行わなかったが、それでも勝ち切る自信があったのだろう。ユナイテッドは相手に怖さを与えられなかったのだ。
試合は0-2のまま終了。前節のリバプール戦に続き、無得点での敗戦となった。引いた相手に対する攻め方、守備時のセットプレーの対応。あらゆる面で課題が浮き彫りとなった。順位こそ5位だが、現時点で14位・ニューカッスルとの勝ち点差は「4」しかない。このままの調子が続くならば、一気に順位を落とす可能性も否めないだろう。
CFの補強は急務?
いまに始まったことではないが、やはりユナイテッドには典型的なCFタイプの選手が一人必要である。昨年の夏、インテルへ移籍したFWロメル・ルカクの代役を確保しなかった影響が懸念されていた同チームであったが、ここにきてそのあたりの脆さが浮き彫りとなっている。
チーム1の点取り屋であったラッシュフォードが不在の今、1トップとして得点を期待されているのはFWアントニー・マルシャルだ。ただ、同選手はご存知の通り典型的なCFタイプではなく、どちらかと言えばアタッカータイプである。そんなフランス人FWに1トップの役割を課すのは酷ともいえる。
マルシャルの身長は181cmとそれほど小柄なわけではないが、やはり屈強なDFと比べると空中戦での勝利はあまり見込めない。実際、このバーンリー戦でもマルシャルは空中戦で1回しか勝つことができていない。そんな選手をボックス内に置き、クロスを上げ続ける攻めは、果たして効果的だったのか。答えはノーだ。マルシャルを1トップに置くならば、彼の特徴を生かす戦い方が重要となってくるが、それがなくサイドからのクロス一辺倒攻撃を続けるのであれば、マルシャルを最前線に置く意味はないと判断した方が良さそうだ。
しかし、4-2-3-1、あるいは4-3-3システムはスールシャール監督が好んで用いる。1トップは今後も置くことになるだろう。
そうなるとやはり、今冬のCF補強は急務と言えよう。FWマリオ・マンジュキッチを逃したのは間違いなく過ちだが、まだFWエディンソン・カバーニという選手が残っている。ウルグアイ人FWはアトレティコ・マドリー移籍が濃厚という報道も出ているが、金を積んでも獲りにいくべきだ。それほど、いまのユナイテッドには必要な人材と言える。
すでにマンジュキッチ、そしてFWアーリング・ハーランドを逃した。もう、これ以上CFの取りこぼしは許されない。それほど、危機的状況である。
(文:小澤祐作)
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