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リバプールを倒す方法は存在しないに等しい。マンチェスター・ユナイテッドの対策はなぜ通用しなかったのか?

プレミアリーグ第23節、リバプール対マンチェスター・ユナイテッドが現地19日に行われ、2-0でリバプールが勝利を収めた。首位を独走するリバプールに唯一勝ち点を奪っているユナイテッドだったが、アンフィールドで行われたこの試合は、大歓声を受けるホームチームが内容も結果も上回った。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

唯一勝ち点を奪っているユナイテッド

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先制点を決めたフィルジル・ファン・ダイク(左)と2点目を決めたモハメド・サラー【写真:Getty Images】

「オールド・トラフォードでの試合か、アンフィールドでの試合かは大きな違いになる。我々はその違いを見せたい」。イングリッシュ・ダービーに先駆けて、ユルゲン・クロップが残したコメントを体現するような試合展開となった。

 リバプールにとってマンチェスター・ユナイテッドは最も戦いたくない相手だったかもしれない。今季のリーグ戦で唯一勝ち点を落としたのがユナイテッドだった。

 ホームだった前回対戦でユナイテッドは、3-4-1-2システムを採用している。ボール保持率は32%で相手にボールを持たれる時間が長く、5バックとなるのも辞さない戦いを選んだ。自陣にブロックを敷いてカウンターに活路を見出した。自陣でのボール奪取からダニエル・ジェームズが右サイドを突破し、クロスボールをマーカス・ラッシュフォードがゴールに押し込んだ。試合は85分のアダム・ララーナの同点弾で、リバプールがなんとか引き分けに持ち込んでいる。

 プレミアリーグで首位を独走するリバプールだが、このダービーにおいてはユナイテッドの後塵を拝している。プレミアリーグでの対戦成績はリバプールが14勝でユナイテッドが28勝、引き分けが13回。ここ11試合での対戦成績はユナイテッドの5勝5分けで、リバプールは1度しか勝てていない。

ユナイテッドの対策

 前回と同様に、ユナイテッドは3-4-1-2の布陣で臨んだ。最終ラインには左からルーク・ショー、インテルに移籍したアシュリー・ヤングに代わって主将に就任したハリー・マグワイア、ヴィクトル・リンデロフを並べ、ウイングバックにはアーロン・ワン=ビサカと19歳のブランドン・ウィリアムズを入れた。

 この対策は前節でリバプールが対戦したトッテナムのものと似ている。トッテナムはセルジュ・オーリエを1列前の右サイドハーフで起用して対面のアンドリュー・ロバートソンを抑え、右サイドバックには本職がセンターバックの20歳のDFジャフェット・タンガンガをサプライズ起用している。

 トッテナムはロバートソンを封じることで、アレクサンダー=アーノルドやセンターバックから繰り出されるサイドチェンジを防いだ。さらにヘディングに強いタンガンガをマネとマッチアップさせてロングボールを回収している。トッテナムは敗れたものの、リバプールの武器をいくつか封じることはできた。

 ユナイテッドは前線から相手のビルドアップを制御している。アントニー・マルシアルとダニエル・ジェームズの2トップとトップ下のアンドレアス・ペレイラは、アンカーのジョーダン・ヘンダーソンへのパスコースを切りながら、DFへプレッシャーをかける。

 相手のサイドバックが高い位置を取れば、ウイングバックのワン=ビサカとウィリアムズが塞いだ。インサイドハーフを務めるジョルジニオ・ワイナルドゥムやアレックス・オックスレイド=チェンバレンが時折ボールを受けに下がってくるが、これに対してはセンターハーフのフレッジとネマニャ・マティッチがマンマーク気味に対応している。

 リバプールはトッテナム戦同様に、ビルドアップはシンプルに、出口がなければロングボールを送った。両サイドバックは封じられているのでボールは前線に送られる。サディオ・マネやモハメド・サラーが競り合い、フィフティー・フィフティーのボールを中盤やロベルト・フィルミーノが拾って一気に敵陣へ攻め込んだ。

コーナーキックから生まれた先制点

 序盤はリバプールがやや優勢といった印象の中で先制点は生まれた。14分にCKのチャンスを得ると、アウトスイングで放たれたトレント・アレクサンダー=アーノルドのキックを、中央でフィルジル・ファン・ダイクが頭で合わせてゴールを決めた。

 さらに24分、アレクサンダー=アーノルドが入れた左CKは相手に弾かれたが、こぼれ球をサラーがボレーシュートを狙う。これはミートしなかったが、ゴール前でGKダビド・デヘアとファン・ダイクが競り合ってボールがこぼれる。リンデロフがボールを拾うが、これにマネが寄せてボールを奪う。最後はフィルミーノが左足を振り抜いてゴールネットを揺らしたが、ファン・ダイクのプレーがファールとなり、追加点は認められなかった。

 一方のユナイテッドはファーストシュートまで40分を要した。41分にはフレッジのクロスにファーでフリーになったワン=ビサカが折り返したが、中央でペレイラが伸ばした足はわずかに届かず。カウンターから攻撃の活路を見出そうとしていたが、前半はシュート3本に終わった。

 リバプールはその後も27分のフィルミーノ、35分のワイナルドゥムと決定機を迎えた追加点は奪えず。45分にはマネが抜け出してフィニッシュに持ち込んだが、デヘアが右足でこれを防いだ。決定機の数とスコアは比例せず、最少得点差で試合を折り返した。

ユナイテッドは水際で猛攻を防いだが…

 後半のキックオフと同時に、リバプールはフルスロットルでゴールへと襲い掛かる。47分、ロバートソンが出したグラウンダーのクロスに、サラーのシュートはミートせずに枠外へと外れた。

 49分にはヘンダーソンが左足を振り抜いたが、デヘアが反応してポストに直撃。その3分後にはオックスレイド=チェンバレンがミドルを放つが、デヘアの腕に収まった。リバプールは後半最初の10分間で6本のシュートを放ったが、ユナイテッドは水際で猛攻を防いだ。

 リバプールの猛攻が落ち着くと、ユナイテッドにもチャンスが転がってきた。57分、スローインをカットしたフレッジがそのままフィニッシュに持ち込む。さらに2分後にはペレイラとのワンツーに抜け出したマルシアルが右足を振り抜いたが、どちらもシュートを枠内に飛ばすことはできなかった。

 両チームともに交代カードを切るが、スコアは動かずに後半アディショナルタイムに突入した。ユナイテッドはCKに望みを託したが、フレッジのCKはファン・ダイクに弾かれ、ワン=ビサカのシュートは力なくゴール前に。これをキャッチしたアリソンが素早く前線にフィードすると、前線に残っていたサラーがドリブルで運ぶ。ジェームズは追走するが間に合わず、サラーはGKの位置を見ながら冷静にゴールへと押し込んだ。

別の武器で戦える強さ

「すべてはピーター・クラビエツと分析担当のおかげだよ」と指揮官は試合後にコメントしている。アシスタントコーチに賞賛を送った通り、この試合ではセットプレーから多くの決定機が生まれた。

 得点シーンはリバプールの狙い通りだった。ユナイテッドはCKに対してゾーンで守り、相手のストロングヘッダーにはマンマークで対応したが、フレッジのマークは簡単に外れ、ウィリアムズもファン・ダイクのジャンプを抑えることはできなかった。さらにファーサイドではヘンダーソンがフリーだった。ユナイテッドの対応が悪かったとは言えないが、リバプールの攻略が上回った。

 リバプールはリーグ戦の連勝を13に伸ばし、1試合消化が少ないながら2位・マンチェスター・シティとの勝ち点差は16ポイントとなっている。このままいけば5試合を残して優勝が決まり、第32節のシティとの直接対決で決まる可能性すら残している。

 ユナイテッドの対策を前に、サイドバックへのサイドチェンジが入るシーンは少なかったものの、セットプレーやカウンターといった「それ以外の武器」で勝ち切った。1つや2つ、武器を封じられたとしても、別の武器で戦える。事実上、リバプールを倒す方法は存在しないに等しい。

 11月から離脱していたファビーニョが途中出場で復帰を果たし、10月から戦列を離れていたジョエル・マティプや12月に負傷したデヤン・ロブレンも起用可能となった。過密日程だった12月は選手のやりくりに悩まされたが、徐々にメンバーが揃いつつある。プレミアリーグではエバートン戦以来7試合、クリーンシートを続けている。30シーズンぶりの優勝に向けて、条件は揃った。

(文:加藤健一)

【了】

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