アジアで1分2敗、未勝利敗退という現実
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日本にとって半年後に迫った2020年東京五輪の重要なシミュレーションと位置付けられたAFC U-23選手権(東京五輪アジア最終予選)。ところが、9日のグループリーグ初戦、U-23サウジアラビア代表戦を1-2で落としたのを皮切りに、12日のU-23シリア代表戦も終盤のカウンターで失点して1-2で連敗。早くもグループリーグ敗退が決まってしまった。
「何としても意地を見せる」と背水の陣で挑んだ15日の最終戦、U-23カタール代表戦で日本は小川航基が今大会初の先制点をゲット。ようやく白星が見えてきた。だが、直後に齊藤未月がPKを献上し、結果的にはは1-1のドロー。
VARの介入によって不可解な判定が生まれるなど不運も重なったが、3試合を終えて勝ち点1のグループ最下位という結果は妥当というしかない。森保一監督が掲げる東京五輪での「金メダル」という目標には到底、届きそうにもない厳しい現実を突きつけられた。
こうなると、森保監督の去就問題に発展するのは必至。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は13日の全国高校サッカー選手権決勝の試合後、取材陣に対し「最終的なところについては(自分が)結論を出さなければいけない時は来ると思いますけど、(ハリルホジッチ監督を解任した)前回も技術委員長である西野(朗=タイ代表監督)さんの考えを尊重したのが一番。やはり技術委員会でどういう議論が行われるのかが大事。森保監督とも直接話す必要があると思っています」と発言した。
自分自身が最終決定権者であることを認めながらも、まずは技術委員会や指揮官本人と会談して方向性を模索する考えを示している。
となれば、帰国後に具体的な話し合いに入ることになるはずだが、東京五輪本番までの強化に使える時間は限られている。最善策をいち早く打ち出さなければ、命取りになると言っていい状況なのは確かだ。
笛吹けども踊らず。求心力を失う森保監
第一に考えるべきなのは、やはり森保監督のA代表とU-23代表の兼任体制見直しだ。ご存じの通り、2018年夏の就任後から指揮官はA代表優先の体制を採ってきた。腰を据えて東京五輪世代を指導できたのは、2018年8月のアジア大会と昨年12月のU-22ジャマイカ代表戦くらい。昨年夏のコパ・アメリカも12月のEAFF E-1サッカー選手権もA代表とのミックスという中途半端な編成で、五輪代表強化という観点では不十分だった。
兼任のマイナス面が出た顕著な例が昨年の11月シリーズ。森保監督は同月14日の2022年カタールワールドカップアジア2次予選、アウェイでのキルギス代表戦に赴いた直後に広島へ飛び、同17日のU-22コロンビア代表戦を指揮した。
さらに19日には大阪でA代表のベネズエラ代表戦を率いるという超強行日程に挑み、1勝2敗で勝てたのはキルギス代表のみという散々な結果に終わった。指揮官と同世代の筆者もほぼ同じ行程で動いたが、肉体的負担や疲労は凄まじかった。彼はそのうえで練習や試合の準備、対戦相手の分析、実際のトレーニングや試合のマネジメントをしなければならず、さすがに手に余る状況だったに違いない。
A代表も東京五輪代表もサポートスタッフはいるものの、やはり監督不在はチーム全体の士気に関わる。U-22コロンビア代表戦で不甲斐ない敗戦を喫した後、「金メダルというのは私だけの目標なのか。チームで共有しているのか」とロッカールームで声を荒らげたというが、練習から一緒に過ごしていない彼の言葉がどこまで若い世代に響いたか分からない。
宙ぶらりんな状況を踏まえ、最近は「東京五輪代表を長く見てきた横内昭展コーチを監督に据えるべき」という声も高まりつつある。確かにそれも現実的解決策の1つだろう。ただ、東京五輪という自国開催の重要な大会でJリーグでの監督経験や実績のない指導者をトップに据えることを協会や関係者が良しとするかどうか。そこは疑問が残る点だ。
かつて日の丸を背負った日本代表戦士であり、サンフレッチェ広島でJリーグを3度制覇している森保監督だからこそ、協会も兼任監督に抜てきしたのだ。そんな背景を踏まえると横内監督誕生へのハードルは高いのではないか。とはいえ、他に東京五輪代表を任せられる人がいるわけでもない。森保監督が引き続き指導するしかないのが実情だろう。
東京五輪までに残された道は…
その場合、森保監督には東京五輪に専念してもらう必要がある。3月と6月もA代表とU-23代表の活動日程が重なっているが、本気で東京五輪でのメダル獲得を目指すなら、協会は指揮官が100%の力を注げる環境を整備すべきだ。
A代表に軸足を置いてきた久保建英や堂安律、冨安健洋、板倉滉らの招集はもちろんのこと、オーバーエイジ候補も呼んでチーム作りに本腰を入れなければ、今の惨状からの立て直しは不可能に近い。
ご存じの通り、海外組を呼べるのは国際Aマッチウィークのみ。そのため、今回のAFC U-23選手権も国内組とスコットランドでプレーする食野亮太郎という構成になったわけだが、やはりベストに近い陣容を揃えて完成度を高める努力をしなければメダルは遠い。その現実がハッキリしたのは、今大会の数少ない収穫と言っていいかもしれない。
森保監督が東京五輪専念となれば、その間のA代表をどうするかという問題も浮上するが、カタールワールドカップのアジア2次予選は突破がほぼ見えてきているため、暫定監督でも何とかなりそうだ。ハリルホジッチ監督解任時に西野技術委員長が後任となったように、今回も関塚隆技術委員長に託すプランも考えられる。
その先のアジア最終予選の監督をどうするかはその間にじっくり決めればいい。森保監督のA代表続投可否は東京五輪本番の結果にもよる。田嶋会長が打ち出した「ジャパンズウェイ」を推し進められるなら、別に日本人監督でなくてもいいはず。欧州シーズンが終われば新たな監督候補も出てくる。「森保ありき」ではない異なる選択肢も模索しなければ、日本代表の停滞感は打破できない。
いずれにしても、森保体制で臨んだグループリーグ未勝利敗退という今大会の結果は重く受け止めなければならない。選手選考から準備、試合運びや戦い方、強化プランに至るまでしっかりと検証し、先につなげていかなければ未来はない。もはや東京五輪まで時間はない。一刻の猶予もない苦境に追い込まれていることを、我々もチームを関係者も再認識する必要がある。
(取材・文:元川悦子)
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