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セリエA 5年前

イブラヒモビッチが感じさせた特大の可能性。希望なきミランに与える、名門復活への道

セリエA第18節、ミラン対サンプドリアが6日に行われ、0-0のスコアレスドローに終わっている。この試合で、ズラタン・イブラヒモビッチが55分からピッチに登場。スタジアムを大いに沸かすと、その直後からさすがの存在感を放った。王様がミランに与えた可能性とは。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

名門復活は厳しい

ミラン
ミランはホームでサンプドリアと対戦し、0-0のドローで試合を終えている【写真:Getty Images】

 名門復活への道のりは厳しい。セリエA 18回の優勝を誇るミランだが、ここ最近の低迷ぶりはミラニスタのプライドをこれでもかというほどズタズタにしている。

 マルコ・ジャンパオロを新監督に迎えた挑んだ今季も、大苦戦中。同指揮官の代名詞である4-3-1-2システムはトップ下に適性を持っている選手がおらず、ほとんど機能せず。結局、ジャンパオロは第7節のジェノア戦終了後に、成績不振によって解任されている。

 後任にはステファノ・ピオーリが迎えられたが、状況はあまり好転していない。ピオーリ監督就任後、ミランはリーグ戦11試合を戦っているが、白星を挙げたのはわずか3回である。2019年最後のリーグ戦となった第17節の対アタランタでは、チャンピオンズリーグ(CL)・ベスト16入りを果たした相手の力を終始見せつけられ、0-5の大敗を喫している。もはや、名門の面影はどこにもない。

 そして、新年一発目のリーグ戦となった第18節のサンプドリア戦でも、ミランは脆さを露呈した。前半にMFガストン・ラミレス、DFファビオ・デパオーリが負傷するなどアクシデントに見舞われたアウェイチームに対し、ミランは試合の主導権を握るもののそれを生かし切れない。反対に、軽率なミスからビッグチャンスを作られるなど、下位に沈む相手に苦戦を強いられた。

 GKジャンルイジ・ドンナルンマの好セーブもあり守備陣はなんとか無失点に抑えたものの、攻撃陣はシュート19本を放ちながら無得点。結局、リーグ戦ではこれで3試合連続ノーゴールとなっており、同じく3試合勝利から見放される結果になった。

 ジャンパオロ監督、そしてピオーリ監督の下でも変わらぬ課題は攻撃陣のアイデア不足だ。今季から背番号9を身に付けるなどエースとして期待されているFWクシシュトフ・ピョンテクは、下がってボールを受けるまではいいが、そこで終わってしまう。身長は183cmとそれほど大柄なタイプではないため、単純なクロスボールに対する強さはあまり高いとは言えない。ペナルティエリア周辺で足元にボールが入ると面白いのだが、周囲との連係が噛み合わないシーンは今季何度か見られている。まるで、昨季のFWゴンサロ・イグアインを見ているようだ。

 FWラファエル・レオンのスピードは魅力だが、同選手は決定力に欠ける。FWスソはサイドに開くことが多く、そもそもゴールとの距離が遠い。中央へ切り込んでも中を固められると何もできなくなることが多い。MFハカン・チャルハノールはキックの精度が持ち味であるが、それを生かせていない。無駄なボールキープから簡単に奪われてしまうことも多く、ミドルシュートが枠に飛ぶのも珍しくなってきた。

 MFジャコモ・ボナヴェントゥーラのドリブルと両足を使った巧みなコントロールはミランの攻撃を加速させる上で重要なものとなっているが、それだけでは点は奪えない。今季のチーム得点王がDFテオ・エルナンデスであるという事実を踏まえても、攻撃陣の迫力不足は明らかなウィークポイントになっている。

 しかし、サンプドリア戦ではわずかな希望がミランに見えた。その可能性を感じさせたのは、あの男である。

背番号21が感じさせた可能性

ズラタン・イブラヒモビッチ
わずかな出場時間ながら可能性を感じさせたイブラヒモビッチ【写真:Getty Images】

 55分、サン・シーロが沸く。ピッチ脇に姿を現したのは、背番号21であった。そう、現地時間12月27日にミランへ正式に復帰することが決まったFWズラタン・イブラヒモビッチである。

 半袖姿でピョンテクに代わりピッチに入ったイブラヒモビッチは、堂々とした姿勢で1トップの位置につく。すると投入からわずか7分後、チャルハノールが蹴ったFKを頭で合わせシュート。これはGKエミル・アウデーロの正面に飛んだが、ボックス内でさすがの強さを見せつけた。

 直後の63分には、右足でボールを少しだけ浮かしてMFラデ・クルニッチのチャンスを演出。シュートだけではなく、パスなどサポートの面でも違いを出した。

 68分にはペナルティエリア手前中央でMFヤクブ・ヤンクトを外しファーサイドのレオンへクロス。シュートはアウデーロに防がれたが、出場からわずか10分ほどしか経っていないにも関わらず、あらゆる攻撃面で持ち味を発揮している。

 その後はチーム全体の勢いも落ち、イブラヒモビッチがボールに触れる回数も少なくなった。しかし、データサイト『Who Scored』によると、イブラヒモビッチはわずか35分間の出場でシュート数1本、決定的なパス1本、両チーム合わせてトップとなる空中戦勝利数4回を記録している。まだチームに合流して日が浅い中、最低限の結果は残せたと言えるだろう。

 イタリア『スカイ』によると、イブラヒモビッチは試合後「今はチームに自信と攻撃性がない状態だ。それを取り戻すために何をすべきかを理解する必要がある。ミランに戻ってきてから4日経つが、ここでまた成功を掴むためにできる限り全てのことを試みる」とコメントしている。やはりいまのミランに名門復活への道を与えられるのは、この男しかいない。

 今後、イブラヒモビッチをスタメンで起用する考えならば、レオンやピョンテクとの2トップという形も十分に考えられるだろう。一つ明らかなのは、これまであまり可能性を感じなかったクロス1本も、イブラヒモビッチがいることによってゴールに結びつけることができる確率が高まったことだ。サンプドリア戦のパフォーマンスは、それを十分に感じさせるものになった。

 次節、ミランは上位にいるカリアリとアウェイで対戦する。イブラヒモビッチの復帰後初ゴールは見られるか。引き続き注目である。

(文:小澤祐作)

【了】

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