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南野拓実が最低スタッツでも評価された理由。デビュー戦で遂行したリバプールの特殊なタスクとは?

リバプールは現地5日、FAカップ3回戦でエバートンと対戦し、1-0で勝利を収めた。今月加入したばかりの南野拓実は先発メンバーに名を連ね、70分プレーした。デビュー戦で得点に絡むことはできなかったものの、可能性を感じさせるプレーを見せた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

南野拓実に与えられた役割

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リバプールでデビューを果たした南野拓実【写真:Getty Images】

 南野拓実がリバプールの本拠地アンフィールドのピッチに再び立った。1度目はアウェイチームの選手として、そして今回はホームチームの選手として。プレーした70分間で得点に絡むことはできなかったが、与えられた役割をこなす姿勢と献身性を本拠地アンフィールドで見せつけた。

 初めてプレーした試合で、リバプールに南野の名前が知れ渡ることになった。日本代表MFは豪快なボレーシュートを決め、ザルツブルクは3点差を追いついて欧州王者を苦しめた。それからわずか3か月、今度はリバプールの選手としてアンフィールドでプレーすることになった。

 シェフィールド・ユナイテッド戦から中2日となったこの試合で、リバプールは大幅なターンオーバーを敢行した。レギュラークラスといえるのはDFジョー・ゴメスとMFジェームズ・ミルナーくらいで、背番号の大きな選手たちが多く起用されている。

 基本的な布陣でもある4-3-3の布陣を用いたリバプールは、南野拓実を最前線の中央でプレーさせた。マンチェスター・シティ戦から中3日のエバートンは、主力メンバーを起用して3-4-2-1でこの試合に臨んだ。

 3トップの中央はロベルト・フィルミーノが不動の存在で、南野にはフィルミーノと同じ役割が与えられた。守備では相手のセンターハーフ(モルガン・シュネデルランとギルフィ・シグルドソン)のポジションを気にしながら、3バックとの間合いを詰める。攻撃では中盤に降りてボールを引き出しながら、機を見て相手DFの裏を取る動きを繰り返す。9番(センターフォワード)でありながら、10番(トップ下)的な動きが課された。

残したスタッツはチーム最低

 前半早々に、リバプールはアクシデントに見舞われる。左サイドバックでプレーしていたミルナーがプレー続行不可能になり、7分にDFヤセル・ラロウチがピッチに入った。

 ボール保持率は試合を通じてリバプールが上回っていたが、アタッキングサードでの崩しに苦戦した。それでも若い選手たちはひるむことなく球際の勝負に挑み、主力選手が並ぶライバルクラブを相手に立ち向かっていく。ミドルレンジからでも隙があれば果敢にシュートを狙っていった。

 試合を決めたのは、前半から幾度となく打ってきたミドルシュートだった。

 71分にオリギとのパス交換で、ボールを受けたカーティス・ジョーンズは相手の寄せが遅れた瞬間を見逃さなかった。振り抜いた右足のシュートは、曲線を描いてファーサイドのゴールポストの角に当たり、ゴールへ吸い込まれた。かつてリバプールでプレーしたフィリッペ・コウチーニョを彷彿とさせるゴールだった。

 南野が退いた直後に挙げた先制点を守り抜いたリバプールが勝利を収めた。

 データサイト『Whoscored』による南野のスタッツは、シュートが1本のみでタックルやインターセプトはゼロ。33回のボールタッチ数は、前半早々に退いたミルナーを除くフィールドプレーヤーの中で最も少ない数字だった。デビュー戦で目に見える結果を残すことはできなかった。

70分間で見せた課題と可能性

「タクミがここに来てからチームの練習参加したのは3回だ。あまり多くはない」。ユルゲン・クロップ監督が試合2日前にこう話した通り、連係面はまだまだ向上の余地はある。

 右ウイングでプレーしたハービー・エリオットがボールを持った22分のシーンでは、レフティーがカットインするスペースを塞いでしまった。フィルミーノに比べると、中盤に降りたりサイドに流れたりする頻度は少ない。フィルミーノのように、もっと自由にピッチ内を動き回っても良かったかもしれない。

 少ないながらも可能性を感じさせるプレーもあった。ファーストタッチが乱れてボールを収めることはできなかったものの、51分のシーンではライン間でナサニエル・フィリップスからの縦パスを引き出している。パスが回ってくることは少なくても、こういった動きを繰り返している。味方との呼吸が合ってくれば、ボールが入るシーンは増えていくだろう。

 指揮官は試合後に、「この試合に対する理解と、並外れたフットボール技術、際立った姿勢を示してくれた」と評価している。実際、フィルミーノは得点数ではサディオ・マネやモハメド・サラーを下回っているものの、前線からの守備での貢献やオフザボールの動きで高く評価されている。南野にも同じような役割が求められていると言えるだろう。

ライバルとチャンスの行方

 過密日程を戦うチームではレギュラーだけで戦い抜くのは不可能だ。目下のライバルは、この試合で左ウイングを務めたディボック・オリギになる。さらに、中盤が本職のアレックス・オックスレイド=チェンバレンが3トップの一角を務めることもあり、4-2-3-1の2列目を務めることが多いジェイダン・シャキリとも出場機会を争うことになりそうだ。

 オリギは劇的なゴールによる印象が強いが、守備には難がある。オックスレイド=チェンバレンは強烈なミドルシュートを備えているが、周りとの連係に秀でたタイプではない。シャキリはスペシャルな左足を持っているが、ケガを繰り返して結果を残すことはできていない。

 南野は今後も3トップの中央を務める機会が多くなるだろう。このポジションは消耗が大きく、フィルミーノは今季18試合に先発したうち、フル出場は7試合しかない。ウイングや2列目のポジションでもプレーできることを示せれば、出場機会はさらに増えるだろう。

 南野にとって大きいのは、この試合の勝利によってFAカップ4回戦に進んだことだ。クロップはこの試合のように、国内カップ戦では大幅なターンオーバーを敷いてくる。1月下旬に予定されている4回戦でも南野にチャンスが回ってくる可能性は高いだろう。

 フランスからやってきたファビーニョやドイツから来たナビ・ケイタがそうだったように、異国の地からやってきた南野がチームメイトの特徴を理解し、また仲間たちが日本代表MFのプレーを知るには、少しの時間と辛抱が必要になるだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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