「プロとしての経験があればわかるはずのことを…」
日本はグループリーグを突破し、決勝トーナメント1回戦でベルギーと対戦する。試合結果についてはご存知の通りだ。日本は原口元気と乾貴士のシュートで2‐0とリード。だが同点に追いつかれ、最後は試合終了間際のカウンターから決勝点を奪われ、2‐3で涙をのんだ。
ある意味、この試合は日本代表の可能性と課題が如実に現れる形になった。優勝候補の一角であるベルギーを追い詰めながら、試合の流れをコントロールし、リードを守り切ることができなかったからである。
川島絡みで特にクローズアップされたのは後半24分、ベルギーが1点目を奪い返したシーンだった。
そもそもベルギーのヤン・フェルトンゲンはシュートではなく、味方につなぐことを狙っていた。川島自身、折り返しのボールに対応できるようなポジション取りをしていたことは、映像からも容易にうかがえる。フェルトンゲンから出たのは、ある意味、GKにとって一番不幸なボールであり、失点は不可抗力に近い。
しかし川島は、この場面に関しても必要以上に釈明しようとはしなかった。
──ベルギー戦で1点を返された場面も、様々な形で取り上げられました。正直、日本における論評の基準は、グループリーグのコロンビア戦以上に疑問が残るものだったという印象を受けますが、ご自身も釈然としないものを感じられたのではないでしょうか?
「正直な話をすれば、僕はピッチ上で実際にどんなことが起きていたのかを、全員にわかってもらおうと思っていない。むしろいろんな議論があってしかるべきだし、それはそれでまったく構わないんです。
ただ僕が好ましくないと思ったのは、サッカーをやっていた人までが、正しい情報を伝えなかったことで。僕のプレーに限らず、他の選手のパフォーマンスに関しても、プロとしての経験があればわかるはずのことを、きちんと報じていただけなかったというのはすごく感じましたね」
──事実、ベルギー戦ではロメル・ルカクの強烈なヘディングシュートを防いだ場面もあります。前半終了間際、ファインセーブを連発した場面も圧巻でした。
「僕は普段、試合そのものの結果と、自分自身のパフォーマンスを分けて考えているんです。この試合に関しては、日本代表という大きな責任を背負って戦っている以上、そういう部分では、判断し切れない部分のほうが多かったと思います。
自分のプレーに関しても、結果には結びつかなかった。決勝トーナメントに入り、片方のチームしか勝ち残れないという状況の中で決定的なプレーができたかと言えば、できていなかったのではないかと思います。
それに日本代表は、試合の結果でしか判断されないのも事実。自分のパフォーマンスとは別に、チームとして3点を奪われて敗れたことに関しては、この場で釈明するつもりはないんです。日本代表のユニフォームを着るというのは、それだけ重みのあることだと思っていますから」
(取材・文:田邊雅之)
【了】