降格の危機を救ったドウグラス
「言い訳はできませんが、病気や怪我といった状況、また新加入選手が馴染むのにもう少し時間が必要だった」
開幕から2勝2分け7敗と苦しみ、0-4で敗れた川崎フロンターレ戦後にヤン・ヨンソン監督の退任が発表された。その2日後に残した指揮官のコメントに、不調の原因が凝縮されている。
ヨンソン体制2年目の今季は「トップ5」を目標に掲げた。中盤のキーパーソンである白崎凌兵と最終ラインの要だったフレイレがチームを去ったが、最終ラインには川崎フロンターレからエウシーニョ、中盤にはヘナト・アウグストをチームに加えた。
しかし、目標は早々にとん挫した。最終的には前年の8位より下の12位で、長く降格圏に沈み、シーズンを通して低空飛行を続けた。
キャンプから取り組んだ3バックはうまくいかず、新加入のヴァンデルソンもフィットせず。7月末に獲得した吉本一謙は左膝内側半月板損傷で5試合の出場に留まった。昨季のベースだった4-4-2に戻しても狂った歯車は戻らず、リーグワーストの69失点を喫した。
不足の事態にも苦しんだ。ドウグラスは不整脈が見つかり、1月にブラジルへ一時帰国。3月末に復帰したが、初ゴールはそこから1ヶ月半以上を要した。相棒の北川航也は6得点と気を吐いたが、7月末にラピド・ウィーン(オーストリア)に移籍してしまった。
ゴールマウスは開幕から六反勇治が守っていたが、5月からは西部洋平にチャンスが回った。六反は6月に負傷で離脱し、8月にはオーバートレーニング症候群を発症。そこでサガン鳥栖で出番を失っていた大久保択生が完全移籍で加入し、西部に代わって11試合に出場した。固定出来なかったGKは、ディフェンス崩壊の一因と言えるだろう。
降格の危機から救ったのはドウグラスだった。5月 18日の大分トリニータ戦で今季初得点をマークすると、そこから7試合連続ゴールを記録。最終節では勝ち点で並ぶ鳥栖を相手に値千金の決勝点を挙げ、清水の残留を決めた。昨夏に加入し、15試合で11得点してチームをけん引したブラジル人ストライカーは今季、リーグ3位タイの14得点を挙げた。ドウグラスなくして残留は不可能だった。
苦しみ抜いたシーズンとなったが、2020年もJ1で戦う権利は確保した。優勝した横浜F・マリノスのヘッドコーチを務めたピーター・クラモフスキー氏が来季は指揮を執る。ヨンソン時代とは異なるサッカーになることも予想されるだけに、注目したいところだ。