MFとDFでプレーできる強み
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唯一の大学生選手だった。EAFF E-1サッカー選手権の香港戦でA代表デビューした。五輪代表候補という意味合いでの招集ではあるが、公式戦のA代表デビューには変わりない。
「デビュー戦としては上手く出来たと思います。前日練習で3バックの中央に入ったので、もしかしてここかなとは思っていました。とくにポジションについては言われていません」
田中駿汰はMFとDFのどちらでもプレーできる。香港戦でも3バックのセンターでスタートして、67分からは大島僚太とボランチを組んだ。A代表デビューを飾ったとはいえ、田中は五輪代表に選ばれるかどうかもまだわからない。ただ、複数のポジションができるのは五輪代表候補としての強みである。
ワールドカップの代表メンバーは23人だが、五輪は18人だ。各ポジションにバックアップを1人ずつ置くこともできない。それだけにポリバレントな選手は必ず必要になる。
「(森保一)監督もポリバレントな特徴をわかってくれているので、自分としてはそれを見せなければいけないと思っていました」
183センチの長身で空中戦に強い。足下の技術がしっかりしていて周囲の状況も見えている。もともとエレガントなプレーをするMFだったが、大阪体育大学ではDFとしての力強さも身につけた。ガンバ大阪のジュニアユースでは堂安律や初瀬亮たちとプレーしたが、ユースには上がれず履正社高校を経て大学へ進んだ。
チームメイトがプロとして活躍しだしたとき、田中は関西大学リーグでプレーしていた。2020年からは北海道コンサドーレ札幌への加入が決まっている。J1の上位クラブへの加入とU-22代表(コロンビアとの親善試合に出場)、そしてE-1の日本代表と、回り道をしたがここで遅れを取り戻した感がある。
大島僚太とのボールを介した会話
香港戦ではボランチにポジションを上げてから、大島僚太と初めて組んだとは思えないパスのやりとりもあった。
「僕は近い距離でやりたかったので、やりやすかった」
大島がいくぶん気を遣ってくれたとはいえ、田中は大島とパス交換をしながら次、その次の展開を読んでいる。必ずしもそれがわかりやすく表れていたわけではないが、田中と大島のパス交換には常に次の展開を踏まえたタメがあり、2人の間でボールを介しての会話が成立していた。試合途中、実際に大島が田中に話しかけている。
「1人がサイドで作っているときは、遠いほうが1つ前に出る。ボランチ2人が段差を作ることで互いにパスを受けやすくなる。そういう確認でした」
ボランチとセンターバック、本人はどちらがいいのかを聞くと、
「自分としてはボランチという思いはありますが、どちらでもいいです」
五輪代表候補のボランチとしてはE-1でもプレーした田中碧がいる。齊藤未月、松岡大起、高宇洋など、すでにJリーグで実績を築いているライバルもいる。ボランチとセンターバックのポリバレントとしては、板倉滉と中山雄太が直接の競争相手になりそうだ。
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(取材・文:西部謙司)
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