激震に揺れたシーズン
2年連続でJ1を舞台に戦った湘南ベルマーレ。激震に揺れたシーズンは、劇的な幕切れとなった。
曹貴裁監督体制8年目となった今シーズンは、3勝2敗と好スタートを切った。浦和レッズから期限付き移籍で2度目の加入となった武冨孝介は5月までに5得点を挙げ、高卒ルーキーの鈴木冬一もウイングバックで躍動。昨季の主力に加えて新戦力も台頭し、順位は中位をキープしていた。
しかし、8月12日に曹監督によるパワーハラスメント行為疑惑が報道される。Jリーグの調査段階でクラブは指揮官の活動自粛を表明。高橋健二コーチがその間に監督代行を務めたが、前例のない事態にチームは混乱。10月10日に浮嶋敏U-18監督兼アカデミーダイレクターが後任に就いたが、10試合も白星から見放された。
それでも新指揮官の下にチームは再び団結した。セレッソ大阪戦で手ごたえをつかんだチームは、FC東京、サンフレッチェ広島、松本山雅と続いたラスト3試合で勝ち点5を挙げて自動降格を回避。徳島ヴォルティスとのJ1参入プレーオフをドローで切り抜け、2年連続でJ1残留を決めた。
逆境からのリバウンドメンタリティは称賛に値するものの、欲を言えばラスト3試合はすべて勝てる試合だった。FC東京戦はアディショナルタイムに同点弾を許し、松本戦でも89分まではリードする展開だった。最後の最後で失点を防ぐ粘り強さと集中力は課題となった。
一方で、劇的なゴールも多かった。杉岡大暉の得点が認められなかった5月17日の浦和戦では、後半終了間際に山根視来の劇的なゴールで逆転勝利。ラストプレーで坂圭祐がヘディング弾を決めた8月3日の鹿島戦も今季のハイライトと呼べるだろう。
杉岡は日本代表としてコパ・アメリカ(南米選手権)で3試合すべてに先発。齊藤未月はU-20ワールドカップで日本代表をキャプテンとしてけん引し、鈴木冬一も東京五輪世代に選ばれている。大卒2年目の坂と松田天馬は攻守の軸に成長するなど、若手のブレイクスルーが印象的なシーズンとなった。
様々な意味で苦しいシーズンとなった今季を経て、湘南ベルマーレは初めて3年連続でJ1を戦うことになった。終盤戦の粘り強さは果たして、新たなフェーズへと進む布石となるのだろうか。