韓国にスコア以上の完敗
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序盤からの圧倒的なハイプレスと球際の強さに出足を封じられた日本代表。矢継ぎ早にカウンターを仕掛けられ、自陣の低い位置に下げさせられ、何とかクリアしてもまた2~3本目のつなぎで奪われる……。そんな悪循環が試合開始から続いた18日のEAFF E-1サッカー選手権2019・日韓戦。日本が失点を食らうのは自明の理だった。
案の定、前半27分のファン・インボムの決勝点が致命傷になった。この場面も右サイドであっさりとボールを失い、キム・ジンスのタテへの突破を井手口陽介と畠中槙之輔が2人がかりで何とか止めたものの、中央でフリーになっていたファン・インボムが巧みな突破から左足を一閃。田中碧も体を寄せに行ったが間に合わなかった。
「自分たちがボールを運ぶ段階でのミスから始まって、人数は足りてるけどフリーの選手が何人か生まれていた。決して崩されてるわけじゃないのに、自分たちのミスからピンチを作ってしまっている。そういう場面は失点シーンだけじゃなくて沢山あった」と背番号17をつける若きボランチは反省しきりだったが、まさにこの流れのまま日本は前半を終えることになった。
後半から森保一監督は相馬勇紀や大島僚太、仲川輝人を次々と投入して巻き返しを図ったが、両国の強度と個人能力の差は埋めがたかった。結果的には0-1の敗戦だが、内容的にはスコア以上の差を感じさせた。日本の方が中国、香港との過去2戦をいい形で勝利し、試合間隔も1日長いというアドバンテージがあったのに、それを生かすどころかパウロ・ベント監督の用意周到な日本対策に完全に屈する形になってしまったのだ。
相手は「日本を絶対に倒す」という気迫に満ち溢れていた。この一戦に負けたら解任もあり得た指揮官も必死さが違っていた。だからこそ、序盤の15分間で一気に畳みかけ、日本に威圧感を与えて、3バックの弱点であるサイドのスペースを徹底的に狙い撃ちにした。
その策が奏功し、CKだけでも日本の3倍は奪って、その中からキム・ミンジェがクロスバーと右ポストに当てた2本の決定機を作った。これらのビッグチャンスが入っていたら、試合は1-4の惨敗を喫した2年前のようにもっと大差をつけられていた可能性も否定できないだろう。
指揮官の選手起用にも疑問
闘争心を前面に押し出した宿敵に日本はどこまで真剣に勝ちに行っていたのか……。それは疑問が残る点だ。そもそも今回のE-1サッカー選手権に挑んだのは、畠中や佐々木翔らA代表国内組と東京五輪を目指すU-22世代の混合チームだった。前者は惨敗した11月のベネズエラ戦の追試、後者は来年に向けたサバイバルという意味合いがあったのだが、それぞれの見据えるところには微妙なズレがある。そういった目的意識の相違は大一番でマイナスに作用しがちだ。
本気で韓国に勝ってタイトルを取ろうと思うなら、相手のようにA代表国内組のベストメンバーで編成するべきだったのではないか。天皇杯で勝ち進んでいるヴィッセル神戸や鹿島アントラーズから一部主力招集を回避したり、J1参入プレーオフ参戦可能性のあったクラブからの選手抜擢を遠慮するなど、森保監督の選考にはさまざまな忖度が働いたが、やはり日韓戦は最強チームで戦わなければ勝てない。その事実を再認識する機会になったのは確かだ。
あるいは、自国開催の五輪本番が迫っているのを踏まえて、U-22世代だけで真剣勝負に打って出る方がましだった。若い世代にしても、普段戦い慣れたチームの方がアグレッシブなチャレンジができたはず。五輪強化にも直結しただろう。そこは悔やまれる点というしかない。
そのうえで、森保監督の日韓戦メンバー起用も気になった。今回は最初から「中国戦メンバーがベース」と決め打ちし、香港戦から10人を入れ替えたが、この試合でハットトリックを達成した小川航基や切れ味鋭いドリブル突破で局面を再三打開した相馬らを抜擢するというプランも考えるべきだった。
「コンディション」や「短時間である程度、連係面で計算できる組み合わせ」といった要素を重視したのも分かるが、結果を出した選手を使わなければチームに新たな勢いは生まれない。実際、相馬は韓国戦途中から遠藤渓太と交代出場し、左サイドでチームをグイグイと引っ張った。そういう活力ある人材を積極的にトライしてこそ、わざわざ重要な日韓戦をテスト的な位置づけにした意味がある。
「韓国が圧力を持って激しさや厳しさで押し込んでくるということは予想できた。そこを上回っていかなければいけなかったのに、監督として選手たちに準備してもらう段階で足りないところがあった。自分自身、反省しなければいけないと思っています」と指揮官は試合後の会見で申し訳なさそうにコメントしたが、彼が肝心なところで勝負弱さとチームマネージメント力の不足を感じさせたのは、今回が初めてではない。
今年1月のAFCアジアカップ2019決勝・カタール戦、コパ・アメリカ2019第3戦・エクアドル戦なども相手を凌駕できるような戦術を与え、チームを勝たせる方向へと導くことができなかった。このままだと来年の東京五輪や2022年カタールワールドカップアジア最終予選に向けて不安は募る。
2019年ラストマッチを非常に後味の悪い形で終えることになった森保ジャパン。この屈辱的完敗を先につなげなければ意味がない。指揮官自身も選手たちも韓国の強度と激しさから何を学び、今後に生かしていくのか。まずはそれを真剣に考えていくことが肝心だ。
(取材・文:元川悦子【韓国】)
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