過密日程で起きたアクシデント
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リバプールは11月下旬から週2試合ペースの過密日程が続いている。負傷者が増えてきているのが不安材料で、DFデヤン・ロブレン、DFジョエル・マティプ、MFファビーニョは遠征メンバーから外れている。
クラブ史上初の世界一のタイトル獲得へ、リバプールはリーグ戦から大幅なメンバー変更を敢行した。
GK:アリソン
DF:ジェームズ・ミルナー、ジョー・ゴメス、ジョーダン・ヘンダーソン、アンドリュー・ロバートソン
MF:アレックス・オックスレイド=チェンバレン、アダム・ララーナ、ナビ・ケイタ
FW:ジェルダン・シャキリ、ディボック・オリギ、モハメド・サラー
フィルジル・ファン・ダイクは病気のためベンチからも外れた。病気は休ませるための嘘かもしれないが、本職センターバックはゴメスのみになり、キャプテンマークを巻くヘンダーソンがセンターバック、右サイドバックにはミルナーが入った。
北中米カリブ海王者のモンテレイ(メキシコ)は、準々決勝でアル・サッド(カタール)と対戦。豪快なロングシュートで先制すると、前半終了間際に追加点を奪って前半を折り返す。66分に1点を返されたが、ショートカウンターから3点目を奪うと、その後の反撃を1点に抑えた。シャビ監督率いる開催国王者を撃破し、準決勝進出を決めた。
急造チームのリバプール
リバプールがボールを持つ展開で試合が進んだ。モンテレイは5バックで自陣に人数を揃えたが、これが裏目に出てしまう。ハーフスペースで受けたサラーから、DFラインの裏に抜けたケイタへスルーパス。これをケイタが決めて、リバプールが12分に先制に成功した。
先制されたモンテレイは5バックから4バックにシフト。すると直後の14分、FKの流れから放ったシュートがGKアリソンを強襲。こぼれ球にモリが反応してゴールに流し込んだ。
リバプールのDFラインはぎこちなく、相手の前線にボールが入るとアタッキングサードへの侵入を簡単に許した。モンテレイは急造DFラインの裏を突いてパボンにチャンスが生まれるシーンもあったが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。
一方で、モンテレイのDFラインはかなり低い位置に設定されていた。2列目のケイタや右サイドバックのミルナーが抜け出す場面はあったが、得点シーン以外はなかなかフィニッシュに至らなかった。リバプールは前半の63%のボール保持率を記録したが、モンテレイの5本を下回る3本しかシュートを放つことはできなかった。
出場5分で決めたフィルミーノ
後半、リバプールは前線を右からシャキリ、サラー、オリギという並びに変えた。さらに68分にシャキリを下げてサディオ・マネ、74分にミルナーを下げてトレント・アレクサンダー=アーノルドを投入。さらに85分にオリギを下げてロベルト・フィルミーノを入れて看板の3トップを揃えた。
時間の経過とともにモンテレイの足は止まり始める。中盤の守備は機能しなくなり、リバプールが攻め込む時間はさらに長くなる。しかし、なかなかゴールを割ることができずにいると、モンテレイは最前線のモリに望みを託してカウンターを仕掛ける。ゴメスがモリを倒してイエローカードが提示されるなど、急造の最終ラインは対処に手を焼いた。
時計の針が90分を回った直後、ついにスコアが動いた。右サイドでサラーが相手2人に寄せられながらボールをキープ。これをアレクサンダー=アーノルドが受けてゴール前に柔らかいボールを入れる。走り込んだフィルミーノがワンタッチでゴールに流し込んで再びリードを奪った。
リバプールは最終ラインのアクシデントと前線の温存により、多くの選手が本職とは異なるポジションを務めた。全体的にバランスを欠き、ディフェンス陣は幾度となくピンチを招き、16本のシュートを浴びた。それでもGKアリソンは安定したセービングで最少失点に抑えた。
決勝弾を生んだ匠の技
ユルゲン・クロップはフィルミーノとマネを温存したが、結局彼らのクオリティに頼らざるを得なくなった。しかし、彼らには5分もあれば十分だった。85分にフィルミーノがピッチに入って3トップが勢揃いし、右サイドバックにはアレクサンダー=アーノルドも入った。
決勝点のシーン、起点はゴメスの縦パスだった。くさびのパスはこの試合で何度もサラーに通っていた。先制点もサラーのポストから生まれたが、この場面では反転して裏に抜けた。対峙したDFに加えてサイドハーフの選手もヘルプに出たことで、アレクサンダー=アーノルドが空いた。
冷静に味方の位置を見極めることができたアレクサンダー=アーノルドは、DFの背後からニアに動き出すフィルミーノを見逃さなかった。相手のわずかな隙間を縫う正確無比なパスで得点をアシスト。高い技術と判断力が詰まったゴールだった。
何はともあれ、リバプールは決勝進出を決めた。接戦をものにする勝負強さは、プレミアリーグ16勝1分、半分が1点差勝利というデータが表している。この試合で見せたメンタリティは、クラブ世界一を争う決勝を戦う資格を得るに十分なものだったと言えるだろう。
(文:加藤健一)
【了】