中国戦のメンバーがベースか
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男子に先駆けて行われた17日のEAFF E-1サッカー選手権の日韓戦で、なでしこジャパンが韓国を1-0で下し、4大会ぶり3度目の優勝を飾った。森保一監督率いる日本代表も女子に続きたいところ。18日の最終決戦・韓国戦は引き分け以上で6年ぶり2度目のタイトル獲得となるが、できることなら宿敵を倒して、日本の意地とプライドを示すことができれば理想的だ。
大一番を控えた選手たちは17日夕方、試合会場となる釜山アジアード競技場で前日練習にのぞんだ。当初は隣のサブグラウンドが練習会場に割り当てられていたが、まだ同スタジアムでプレーしていない日本にとっては、ピッチコンディションや雰囲気などを確認しておくことは極めて重要だった。
しかも、サブグラウンドは周囲を遮るものが一切なく、報道陣はもちろん、韓国関係者へ情報が漏れる危険性も高かった。それを防げたのは朗報と言っていい。公開された冒頭15分を見る限りでは、現在帯同している22人全員が元気な様子でトレーニングに参加していて、万全の状態で本番を迎えられそうだ。
森保一監督は「コンディションの部分では、中国戦に出た選手の方が調整時間があったので、そこがベースかなと思っています」と初戦の11人を軸にスタメンを考えていくという。実際、香港戦先発組は前々日まで別メニュー調整をしていて、ほとんど実戦練習を消化できていない。となれば、GK中村航輔、DF畠中槙之輔、三浦弦太、佐々木翔、右サイド・橋岡大樹、左サイド・遠藤渓太、ボランチ・田中碧、井手口陽介、右シャドー・鈴木武蔵、左シャドー・森島司、1トップ・上田綺世という構成が無難ではあるだろう。香港戦でインパクトを残した小川航基や相馬勇紀らはジョーカーとしてベンチで待機することになりそうだ。
「コンスタントに点が取れるのはC・ロナウドくらい」
2年ぶりとなるライバル対決で果たして誰がゴールを奪うのか、無失点で乗り切れるのか、など注目点はいくつかあるが、やはり気になるのは、U-22世代のサバイバルの行方。とりわけFW陣は、香港戦での小川のハットトリック達成によって混とんとしてきた印象で、ここまでU-22世代の最前線を担い続けてきた上田も安穏としてはいられなくなってきた。
今年のA代表とU-22日本代表の活動で彼がゴールを奪ったのは、3月のAFC U-23選手権最終予選・U-22ミャンマー戦が最後。その後、6月のコパ・アメリカ(南米選手権)、9月の北中米遠征、11月のU-22コロンビア戦、そして今回と数多くのチャンスがありながら、ゴールを奪えずにここまで来てしまった。
「毎試合とか2試合に1回、1年中コンスタントに点を取れるのは、今の時代、クリスティアーノ・ロナウドくらいしかいない。僕にも取れない時間はあるんで、そういう時間にどれだけ引き出しを増やせるかが大事。この時間を無駄にせず、逆に楽しんでいけたら、去年のように点をたくさん取れていた時期より高くジャンプできるようになる。今がそのための助走になればいいと思ってます」と上田は最近の足踏み状態を前向きに捉え、壁を超えるべくひたむきに努力を続けている。
めまぐるしい環境の変化
この1年間を振り返ってみると、U-22とA代表に加えて全日本大学選抜でも国際舞台に参戦。夏には法政大学を退部して鹿島アントラーズ入りするという重大な決断もあり、落ち着いて自身を客観視する余裕もあまり持てなかったのだろう。周囲のレベルも大きく変わる中、本来の鋭い得点感覚が一時的に鈍った部分もあったのかもしれない。
とはいえ、東京五輪代表でエースFWに君臨しようと思うなら、こうした紆余曲折や環境の変化もひっくるめて絶対的な力を示さなければいけない。上田は2019年の代表ラストマッチとなる今回の日韓戦でここまでの経験値を出し切り、ゴールという結果を残す必要がある。
そのためにも、韓国守備陣を巧みにかいくぐる術を見出し、ピッチ上で表現することが肝要だ。今回、相手がどういうセンターバックの組み合わせで来るかは定かではないものの、中国戦と同じキム・ミンジェ(北京国安)とキム・ヨングォン(G大阪)のコンビになる確率が高い。この屈強で激しい2人を凌駕するのは簡単ではないが、そういう時こそ上田は持ち前のインテリジェンスを駆使して対応策を講じることが求められてくる。
虎視眈々とスキを突くことを考える
「おそらく前からプレッシャーも来ますし、クサビのところはすごく狙ってくると思う。それを『一発ひっくり返せるよ』という考えを見せることでクサビも受けやすくなる。競り合いに関しても、相手の方が全然高いし、フィジカル的にもメチャメチャ強いかもしれないけど、ヘディングで負けるつもりはない。相手の裏をかくのが自分の特徴なんで、そういう駆け引きも楽しんでいけたらいいと思います」と本人も虎視眈々とスキを突くことを考えていくつもりだ。現時点での実力を確かめるうえで、今回の相手となる韓国は最高の試金石になるだろう。
こうして上田が生粋のストライカータイプの小川とは異なる特徴を前面に押し出し、差別化を図ったうえで、最近の得点力不足という苦境から抜け出すことができれば、森保一監督からの信頼はより確かなものになる。日韓戦という特別な一戦で「上田綺世、ここにあり」という事実を目に見える結果と内容で示すこと。それが半年後に迫った東京五輪の舞台に立つための一番の近道だ。賢い彼にはその重要性がよく分かっているはずだ。
(取材・文:元川悦子【韓国】)
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